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第5話 ウリュウの記憶がなくなった!?

「君、君起きてくれないか?」



 ルナは、自らの体を揺すられる感覚と、太陽の眩しさに、徐々に意識を取り戻す。

 体が怠くて頭も重い、吸血鬼(ヴァンパイア)として生を受けてから、ワースト5に入ろうかという辛い目覚めだった。でもルナは、ルナが頭を預けるこの者に体温が有り、ルナを起こそうとしてくれているのが嬉しくて──



「ごめんね? 誰か知らないけと起きてくれないかな?」



 ──誰か知らない?──



 ルナは弾かれたように起き上がり、ウリュウの顔を見た。



「ウリュ……! ウ?」



 目の前に居たのは確かにウリュウだった。しかしルナは、目の前のウリュウにかなりの違和感を感じた。ルナが最初に違和感を感じたのは、ウリュウの体格だった。



 ──細くなった? ──



 元々肥っていたわけではなく、どちらかと言えば少し筋肉質だったその体が、一回り細くなったように感じられた。



「ようやく目を覚ましてくれたね。いきなりで悪いんだけど、教えて欲しいんだ」



 次にルナが違和感を感じたのは、その声だ。


 

 ──声がなんだか少し高い? ──



「ここはどこで、お嬢ちゃんは誰? それにウリュウって僕のこと?」




 ▽



 ルナはその後ウリュウと話し、ウリュウが記憶を失っていること、そして何故かウリュウと自分が若返ってしまっていることを知り、お花を摘みに行くと言ってその場を離れ、途方にくれていた。そう、ウリュウだけではなく、何故か自分までもが若返ってしまっていたのである。



 ルナはウリュウから離れたことで、今度は自らの体の変化を改めて観察してみることにした。



 現在のルナは、何故か20の生誕祭の時と同じ服を着ており、体のサイズもその時と同じぐらいにまで縮んでいた。人間で言うなら13歳といったところか?



 身長に関して言えば、元が162㎝だったところから3~4㎝縮んだぐらいだったが、ルナが常々重くて邪魔だと思っていた胸には、現在ほとんど起伏のない平地が広がっている。

 ……なくなってみると意外と寂しく感じられ、今まで邪魔だなどと思っていてごめんなさいと思うルナであった。



 最後に魔力量だが、昨夜が満月だったこともあってか、魔力は寝ている間にそれなりに回復したらしく、現在のルナの魔力量は、通常時の6割近くある。昨夜は満月だったので今宵は十六夜(いざよい)。今まで通りであれば明日の今頃には魔力も回復していることだろう。しかし、とルナは気がかりなことが一つあった。それは実は、現在の魔力量が20歳の時の魔力量に近いということだ。体が20歳の時と同程度まで縮んでいるのなら、魔力容量も20歳当時まで減っている可能性も──



 ──ガサガサ──



「リムか?」

《はい。ルナ様》



 木陰から姿を現したのは、ルナの推察通り眷属であるフェンリルのリムだった。

 リムはルナの1m手前でお座りの姿勢をとり、1度頭を下げてから思念波でルナに話しかけた。



《ルナ様、恐れながら申し上げたき議が御座います》

「……どういう内容じゃ?」

《ルナ様がギフトを使われた時のことで御座います》

「なに!? すぐに教えるのじゃ!」



 リムはルナが王国を追放されてからウリュウと会うまで、常にルナと共にいた家族のような存在だった。しかしウリュウとデートをする時だけは、リムにも席を外すように言ってあったので、当然昨夜のことも事後のことしか知らないはずだと思っていたのだ。



 ちなみにリムに席を外させたのはを、デートを家族のような存在であるリムに見られるのは恥ずかしかったからである。

 呼ぼうと思えば影を作るだけで召喚出来るし、ウリュウと別れた後はいつも相談に乗ってくれ、まるで見ていたかのような的確なアドバイスまでくれる。ルナにとっては己の命と並ぶほどに大切な存在だ。



《はい。いつものようにすぐ近くで聞き耳を立てて居たのですが──》

「待て!」

《はい。いかがなされました?》



 リムが可愛らしく目を真ん丸にして首を傾げる。



「『いつものように』とはどういう意味じゃ?」

《言葉通りの意味ですが?》

「と言うとなにか? お前は今まで妾とウリュウのやり取りを、いつも聞き耳立てて聞いておったというのか?」



 リムは首の角度を正面に直し、1度頷いてから応えた。



《もちろんです。ルナ様のお言いつけ通り、ルナ様のデートの邪魔をする物がないように、周辺の魔物をこちらに繋がる山道に追い立て、人間が近付けないようにもしておりました》



 ルナは心の中で「違う! そういう意味じゃなかったのじゃ!」と叫びながら、リムにあの時言った言葉を思い出す。



『リム、幼き頃より常に共にいてくれたお主にこの様なことを頼むのは心苦しいのじゃが、ウリュウと会うときは、妾とウリュウを2人っきりにさせてはくれぬか? でも決してリムのことを邪魔だなどと思っておるわけではないのじゃ。わかってくれるな?』



 ……ん? 勘違いするような言い方なんてしてない気がするのじゃが……リムも快く了承してくれておった。

 リムは妾との約束を破るような奴ではないはずじゃ。……どういうことじゃ?



「リムは妾とウリュウを2人っきりにしてくれておったんじゃよな?」

《はい》

「ならなぜお主が近くで聞いておったのじゃ?」

《なにか問題でも?》

「2人っきりなのになぜリムが居たんじゃ?」



 リムはまた可愛らしく首をコテンっと倒し、平然と応え、あまつさえ最後の方は、まるで『褒めて褒めて』と、言わんばかりに尻尾を振りながら応えていた。



《私、人ではなく狼ですよ? それに私は邪魔じゃないのですから、一緒に居ても良かったんですよね? 私、お言いつけ通り邪魔者の排除も頑張りました!》



 ルナは思った。ひゃ、百数十年連れ添ってきたが、リムがこんな天然娘だったなんて知らなかったのじゃぁっ!



「も、もう良い。続きを教えてくれぬか?」

《はい。いつものように近くで聞き耳を立てていたところ、ウリュウどのが間抜けにも滑って転んで大怪我をし、その後ルナ様はギフトを取得されました》

「う、うむ。まぁ、その通りじゃな」



 そうだけど、確かにそうなんだけど、……出来ればもう少しオブラートに包んで欲しかったのじゃ……。



《その時ルナ様が強く願っていたのは、口で仰っていたこととは異なります》

「なんじゃと!? なら妾はなにを願ったというのじゃ!?」

《あの者を助けること、そして妻としてでなく、別の形でも良いから、あの者とずっと一緒に居られることです》

お読み頂きありがとうございます。


次回

【妾とウリュウが親子じゃと!?】をお楽しみに!

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