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第11話 4人目の家族

更新が遅くなりすいませんでした。

「というわけで、この子がウリュウの姪のリムなのじゃ!」


 ――ガチャ――


「初めまして、ルナお義姉ちゃんから紹介して頂いたリムです。これからよろしくお願いします」


 ウリュウは右手で頭を押さえ、左手の掌を前に突き出しながら二人に返事を返す。


「……ちょっと待って、理解が追い付かない」


 ルナが突然『すぐ戻る。ちょっと行ってくるのじゃ!』と言って家を飛び出し姿を消したルナが、ようやく帰ってきたかと思うと、ルナと同い年くらいの女の子を、ウリュウの姪だと言って連れてきたのだ。

 身長は150㎝程で、銀髪ショートに黄色い瞳をした無表情な女の子。


「妾はウリュウの兄嫁の連れ子で、リムはウリュウの兄の娘なのじゃ」


「俺の兄の娘?」


「そうなのじゃ!」「はい」


「そうなの!? 全然知ら――むぎゅっ!?」


 ルナはシルキーを素早く陰で捕え、口を塞いでウリュウの死角となる自身の背に隠す。ルナにとっては幸運なことに、ウリュウは混乱していたため、そのことに気付くことはなかった。


「なんで今いきなり? というか、なぜ今までこの子の話が出てこなかったんだ?」


「そこにはちょっと複雑な事情があったのじゃ……」


 ルナとリムが考え、ウリュウに話した設定はこんな感じだ。


 リムのお爺さんは、帝国でそこそこの規模の商会の会長だったのだが、王国での利権欲しさにリムの母親にあたる自身の美しい娘を王国貴族に嫁がせることを思い立ち、王国にてとある貴族と見合いをさせることにした。しかし帝国から王国への移動中、リムの母親達はモンスターの一団に襲われてしまう。

 護衛のうちの何人かは倒され、このままではやられてしまう。そんな時にたまたま通りすがった冒険者達に救われ、リムの母親は九死に一生を得ることとなる。そしてその冒険者達の中にいたのがウリュウの兄だった。


 見合いは中止となり、リムの母親は自らの命を救ってくれたウリュウの兄に一目ぼれし、自ら乞うてウリュウの兄と、たった一度だけ関係を持った末、リムを妊娠する。しかし商会の会長だったリムのお爺さんが、リムの母を政略結婚に使うため、ウリュウのお兄さんを含めたみんなに隠し、リムは表向き、お爺さんの屋敷で働くメイドの娘として育てられることとなった。


 リムのお母さんが政略結婚で帝国貴族に嫁ぐまで、リムは屋敷でそれなりのあつかいを受けていたのだが、その時を境に態度が一変する。リムは屋敷の執事から、獣化魔法という魔法を習得していたため、屋敷を出て冒険者となることをお爺さんに告げてから家を出た。手切れ金なのか口止め料なのかはわからなかったが、それなりのお金を渡されて。


 家を出てからのリムは、自身の父親を探して王国へと向かいルナと会い、自身に血の繋がらない姉がいたことと、父の死を知ることとなる。


 ルナは一緒に暮らそうと提案したが、帝国にいた頃、母親が嫁いでからはお爺さん達に虐められていたことや、口止め料らしきものを貰っていたこともあり、なかなか踏ん切りがつかず、ルナ達の村の近くにあったいわくつきの屋敷を格安で購入し、様子を見ることにした。


 そうこうしている間に時は経ち、ウリュウは記憶を失い、リムが購入した屋敷はモンスターの襲撃を受けて倒壊。

 路頭に迷いウリュウの家を見に来たところをルナに見つかり、路頭に迷っていることがばれて今に至る。


「リムはとっても強い冒険者で、お金もたくさん持ってるからお金の心配はいらないのじゃ! お願いだからここに置いてやって欲しいのじゃ」


「お願いします」


 ルナとリムは揃って頭を下げた。

 ルナの背後で黒い紐のようなもので頭の下半分を覆われているシルキーのことが気になったが、そのシルキーも目が合った瞬間一緒になって頭を下げてきた。


 ウリュウはこの時どうするべきかと考えたが、娘の前で路頭に迷っている姪を追い出すなんて出来るはずがない。本当はもう少し考える時間が欲しかったが、考えたところでどうにかなる問題でも恐らくない。

 それどころか、時間を掛ければ掛けるほど、3人(?)は不安になる。そしてその不安は、質は違えどウリュウも抱いていたものと同じであると思われた。


「いや、お金はこの際どうでも……はよくないけど置いておくとして、最後に確認しておきたいんだけど、もう俺の知らない兄弟とか兄の隠し子とかっていないよね?」


「少なくとも妾達は知らないのじゃ」


「知らない」


「むぐぐぅ」


「じゃあこれからよろし――」


 バチン


「「「あっ!」」」「えっ?」


 ウリュウがリムの頭を撫で、『じゃあこれからよろしくな』と言って、なんて呼べばいいかなどを尋ねようとしたところ、頭を撫でる前にその手をリムに払われた。

 ライカンスロープは誇り高い種族であり、自身が認めた主以外は家族であろうと頭を触らせることはない。


「うう、ウリュウ! すまないのじゃ! リムに悪気はなかったのじゃ! リムはお爺さんに頭を押さえつけられたりしたことがあって、頭を触られるのが苦手なのじゃ!」


「……すいませんでした」


「あっ、うん。良いよ。こっちこそすまない。そうとは知らなかったんだ。これからよろしくね? 呼び方はリムちゃん。で良いかな?」


「お好きなように」


「リム、出来ればもう少し愛想よくしてほしいのじゃ」


「……ごめんなさい」


 リムはルナに申し訳なさそうに謝った。そしてこの時初めてリムの表情の変化を目にしたウリュウは、まずはリムに心を開いてもらえるよう、これから頑張らないといけないな。と思うのであった。


リムはウリュウの実の姪として家族に加わりましたが、まだ心は許してくれていない様子。ウリュウはリムの心を開けるのでしょうか?


次回、ウリュウ達一行はリムが住んでいたという屋敷を見に行きます。そこで明かされるルナの魔法。そしてようやく明らかになるウリュウの実力とは?


次回【ウリュウの実力】をお楽しみください。

次回更新は2/10になります。

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