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第7話 冒険者登録【後編】

あけましておめでとうございます!

またまた今話のタイトル変更しました!

 冒険者への依頼料の内訳と、冒険者がランクによって受けることが可能な依頼の範囲、冒険者組合に登録した後の禁足事項などについてなどの解説を、ウリュウはギルド長から、ルナはローラから受けることになった。


 二人をわざわざ分けて説明するのは、冒険者登録を行う際は、必ず1対1で説明し、疑問などがあれば説明中でも気兼ねなく質問できるようにという、冒険者・組合側、双方の意見を取り入れた上で数十年前から実施されているルールだそうだ。


 ルナは一応現役冒険者でもあるリムや、冒険者について教えてくれたとある少女から、冒険者と言うものについて大まかなことは聞いて知った気でいた。しかしリムや自分は、冒険者として精力的に活動する気など微塵もなかったので、ルナもリムを通して100年前後冒険者組合を利用してきたが、モンスターの死体を持って行けばお金をくれるところ。程度の認識しか持っていなかった。


 思えばリムが冒険者になった経緯というのも、たまたま冒険者という都合の良いものがあったから利用してきたにすぎなかったのだ。

 ルナ達が吸血鬼(ヴァンパイア)王国を出てすぐのころ、ルナが人間恐怖症を発症してしまったため、二人は人里から少し離れた森の中などで暮らすようになっていた。……当時あった帝国の名物、砂糖菓子に飢えながら……。


 当然人里から離れれば、人以外の者達が住処としているということは多々あるものだ。――そのうえ大した甘味はない……。

 ルナ達は自分達が食べる分以外を積極的に採ろうとしたことはほとんどなかった(甘い物は除く)が、だからと言ってそこに元々住んでいた者達が襲ってこないというわけではなかった。むしろかなりの確率で襲ってきたのだが、ほとんどは倒しても食べようとすら思えないようなものばかりであり、ルナ達からすれば不毛な作業でしかなかった。しかしある時、助けを呼ぶ子供の声を聞きつけ、二人が大型のドラゴンから女の子を助けてあげた時、その少女から冒険者というものになれば、モンスターの素材を冒険者ギルドというところが買い取ってくれることを教えてもらい、人間恐怖症のルナに代わってリムが冒険者として登録し、甘味類などのための資金を稼ぐようになった。というだけだった。


 そんなこんなで、冒険者にはランクがあり、そのランクが低ければ受けられない依頼がたくさんあることや、リムがやっていたのは単なる素材のばら売りであり、一般的な冒険者がやるような依頼仕事ではなかった。ということにも、ルナはこの時初めて気づいたのだった。


「こんな感じで、この村の冒険者ギルドでの口頭説明は終わりだけど、なにか質問はある? あと一応細かい説明やルールが書かれたのがこっちの紙ね。問題なければこちらの用紙に、名前と出身国に生年月日と役職名(クラス)を書いたら登録完了よ」


 ルナとウリュウはローラが取り出したその紙を一目見て読むのをやめた。というか、字が汚すぎて解読ができそうになかったので諦めた。しかし登録用紙は割と綺麗な文字で書かれているのに、使いまわしされているであろう説明やルールが書かれた紙がこんな字なのは明らかに怪しい。


「――ひどい字なのじゃ……。『この村の』ということは、別の村ではルールが違うのじゃ?」


「う~ん。国内だと、王都とかに行けば冒険者や受付の人の数が増えるから、ルールが多少増えるけど、それ以外はほとんど同じね。ただ別の国とかになると、依頼料のマージンとかも違うはずよ? あとはそうねぇ、帝国以外で生まれた人が帝国で冒険者登録しようとすると、自腹で学校に入学することが義務付けられているわ。帝国は国民に教育の義務を課しているから、年齢問わず、帝国で住む以上最低でも学校に3年間通うことになるわ。

 共和国だと緊急依頼が発令された場合、その依頼の指定ランク以上の冒険者は、余程の事情がない限り全員強制参加になるとかかな? あっ、この国の場合ちょっと高いけどキャンセル料を払えば誰でもキャンセルできるから安心してね?」


「……? それは冒険者は国ごとに登録され、管理されるということなのじゃ? 例えば、この国で登録したら別の国では依頼が受けられなくなるとか、そういったデメリットがあったりもするのじゃ?」


「よく気付いたわねルナちゃん! 登録した国以外での依頼は、依頼料が半額になるわ。自国で育った冒険者が他国に流出しないようにするためね」


「他国に行って一から登録をし直した場合はどうなるのじゃ?」


「D・Eランクの人は問題なく再登録が出来るようになっているけど、一度Cランク以上に上がった人は、他国で登録し直そうとしても、Cランク以上に上がれないようになっているわ。Cランクから冒険者証が変わるんだけど、その時冒険者は魔力の波長を冒険者組合に登録されることになるの。魔力の波長は人それぞれ違うから、一度登録された人はその履歴から、いつ・どこの冒険者ギルドで・なんという名前で登録されていたのかとかがわかるようになっているの」


「……それは登録前に言うべきことじゃと思うのじゃが?」


「ごめんね? でもそれを私たちからはあえて言わず、さっきの紙を見せるのがこの国の冒険者ギルドのマニュアルなのよ」


「……? どういうことなのじゃ?」


「この国の隣にある共和国に、妖精の花園(フェアリーガーデン)っていうダンジョンがあるんだけど、共和国の冒険者はCランク以上になればそこでの依頼が受けられるようになるのよ。しかもそこがCランクぐらいの実力の冒険者にとっては凄く稼ぎやすいおいしい場所なの。だから王国の冒険者組合は、あえてこのことについてこちらからはなにも言わないように。って指導されてるの。気付いた時には冒険者も王国の冒険者ギルドに愛着がわいてたり、一からやり直すのは面倒くさいって、だいたいの人は思ってるしね。なにより共和国は、帝国との小競り合いの時に冒険者も緊急依頼として徴兵されることがあって、評判はあまりよくないから、まぁ良いかってなりやすいしね」


「……詐欺なのじゃ」


「私もそう思うけど、『言った言わないは証拠がなければ不毛な水掛け論。紙に書いてあるのに読まない奴がバカなだけ』が、この国の前冒険者ギルド組合長の方針だったから。まぁその人は去年クビになって最近ではかなりまともになってきたから安心していいわよ? これ以外の詐欺っぽいことは私は知らないし」


「──騙されそうになった後に言われても、ぜんぜん説得力がないのじゃ……」


「なら登録するのやめる? 私たちはそれでも全然良いんだけど?」


「……なら確認だけさせてもらうのじゃ」


 ルナはウリュウ達にバレないように、一瞬だけローラにこっそりと催眠術をかけ、ローラが嘘を言っていないか確かめることにした。これは事実確認をするためと同時に、昨夜なぜかウリュウにルナの催眠術が効かなかったため、催眠術が使えなくなったのか? それとも考え難いが、たまたまウリュウに催眠術が効かなかっただけなのか? それを確認したかったからだ。


「では、ちゃんと妾の目を見て答えて欲しいのじゃ。『お主は嘘をついていないのじゃな?』」


 ローラの顔から一瞬表情が消え、その瞳からも光が消えた。催眠術にかかった人の表情だ。


「――言ってない。全部本当」


「そうか、なら登録させてもらうのじゃ」


「ん? あれ?」


「ではこの登録用紙をもらうのじゃ」


 ルナは催眠術が解け、若干呆けているローラから、先ほど取り出したまま手に持ち続けていた冒険者登録用の紙を取り、そちらへの記載を開始した。


 まず名前についてだが、名前に名字がつくのは、人間社会では貴族やそれなりの規模の商人の証であるため『ルナ』とだけ記載する。

 次に出生地だが、ルナはウリュウの姪ということになっているので、この国『レべリア王国』と記載する。最後に生年月日だが、実際の誕生日である1月1日と記載し、誕生年は自分の見た目年齢から13歳になるように、934年生まれと記載した。


役職名(クラス)というのはなにを書けば良いのじゃ?」


「そこは自分の戦闘スタイルを書けば大丈夫よ。ルナちゃんは魔法使いよね? 自分が特化している系統魔法なんかを書いてくれたら良いわ」


「わかったのじゃ」


 ルナが書いた役職名は、ローラは知らなかったが、冒険者ギルドで初めて登録される役職名(クラス)となるのであった。


「影魔法使い? 初めて聞く魔法ね? 闇魔法じゃなくて影?」


「それでお願いするのじゃ!」



  ▽



 ギルド長からウリュウへの冒険者についての説明が終わり、長々とした雑談が終わったころ、ルナの冒険者登録が完了し、ナンバーと名前が魔法で焼き印された鉄のプレートを渡された。


「このプレートがお主がCランクになるまでの冒険者登録証になる。依頼でどこかに向かう、又はそこから帰ってくる際、通行税が発生するような場所を通る際に、依頼書とこの登録証を見せれば王国内であれば大体はタダで通れる。無くすと再発行するまで依頼が受けられなくなり、再発行には銀貨十枚かかるので気を付けなさい」


「わかったのじゃ」


「では、君の今後の活躍を期待する。……実力は天才的だとわしも認めるが、驕りは自分を殺すことになる。決して無理や無茶はせんでくれ」


「わかったのじゃ。ではウリュウ。そろそろ帰るとするのじゃ!」


「あぁ、ではまた来ます。これからよろしくお願いします」


 ギルドを出ると、ウリュウは微妙な表情を浮かべながらルナの頭を撫でながら祝福の言葉を述べる。


「ルナ。冒険者登録おめでとう」


「ありがとうなのじゃウリュウ」


「なにかお祝いをしてあげないといけないね?」


「反対してたのに祝ってくれるのじゃ?」


「あっ、うん。えぇっと……反対はしたけどもう認めたことだし、お祝いになにかプ……」


 ウリュウはプレゼントと言いかけて、自分の稼ぎが少ないせいで、家計は火の車であるということを思い出し、思わず言葉に詰まる。


《ルナ様。シルキーを誘拐してきました》


 そんな時、ルナの頭の中にリムの思念波が届いた。


《……本当に連れてこれたのじゃな。シルキーには何と言って連れてきたのじゃ?》


《消えたくなかったら来なさい。と》


《窮迫なのじゃ!?》


《いえ、私がシルキーに生き残るというと選択肢を与えてあげたのです》


《意味がわからないのじゃ!?》


《とりあえずシルキーには、家の中に放り込み、『消えたくなければそこにいろ』と言ってあります》


 リムの返事を聞いてルナは思った。


 ――まずい。このままでは、帰ったらなぜかシルキーが自分の家に拉致監禁されていました。というカオスな状況にウリュウとともに突っ込んでしまうことになる。と。

 そしてこのとき、ウリュウはウリュウでとある懸念を抱えていた。

 その懸念とは、この村に住むというロリコンと、酔うと『人がゴミのようだ』等と言い始める奇人のことだ。

 その噂の人物達は、本当にロリコンであったり、そんな奇行に走るような危ない奴らなのか? それとも自分が聞いた話は、誇張されたものだったのか? そのことをなるべく早く確認すると共に、必要ならそいつらにくぎを刺しておきたいと強く感じていた。

 今でなくても良いのでは? とも思ったが、この問題を先送りするのは、なぜかとても危険な気がしてならなかったのだ。


「じゃ、じゃあ妾がお祝いの料理を作って待っているから、ウリュウはお祝い用の果実酒を買ってきて欲しいのじゃ!」


「えっ、でも酒は16からだから、ルナはまだ飲めないだろ?」


 ルナは先ほど自分が13歳と書いたことを後悔しつつ、即座に切り返す。


「なら妾には果実ジュースを、ウリュウには果実酒を買ってきて欲しいのじゃ! それで今日はお祝いなのじゃ! お金についても今はそれくらいなら全然心配いらないのじゃ。それと、妾が頑張って料理を作るから、ウリュウは日が暮れてから帰ってきて欲しいのじゃ!」


 むしろルナ達は洞窟などに住んでいたため、ほとんどお金を使うことはなく、そのくせ一回一回の稼ぎも多かったため、実はウリュウの数か月分の給料くらいは所持していた。

 そしてこの提案を聞いたウリュウは、これからはルナに不自由させないように頑張ろうとこの日何度目になるかわからない決意を改に、お使いという名目での人間観察に出ることを心に決める。


「――あっ! わかった! じゃあその辺うろうろしてから、酒場で果実ジュースと果実酒を買って帰るよ」


 ルナはルナでウリュウが帰ってくるまでの間に、シルキーをなんとかせねば! と、急いでウリュウの――いや、自分たちの家に向かうのだった。


「では頼むのじゃ! 料理の準備が完全に出来たころに帰ってきて欲しいから、日が暮れるまでは待つのじゃぞ?」


「わかった。じゃあまた後で!」


 こうして二人は別れて帰ることになったのだった。

書いているうちにどんどん長くなり、シルキーの下まで辿り着けなくなってしまった……。


次回

ルナは最悪の事態を避けるべく、リムにより拉致監禁されてしまっているらしいシルキーの下へと急ぎ、ウリュウはルナの今後のために、危険人物かもしれない者達の見極めに向かいます。



次回、今度こそ【シルキー】をお楽しみ下さい。

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