第2話 ベルテ村
先週、信じられないくらい堅い煎餅をもらって食べたのですが、全然割れず、それをくれた方に「前歯が欠けるからやめておけ」と言われたので、奥歯なら大丈夫だろうと本気で噛んだら奥歯が割れました。
堅煎餅は美味しかったですが、食べるときは無理せずハンマーで砕いて唾液で柔らかくして食べましょう。
めちゃくちゃ痛かったです!
今回たくさん登場キャラがいますが、覚える必要のあるキャラクターは特にいません。あえて言うならドドリゲスさんくらいでしょうか? しかし彼も以降はギルド長としか明記していなかったと思うので、名前まで覚えなくても大丈夫です!
朝食を取り終えた後、二人はウリュウの要望がきっかけで、ベルテ村を歩いて回ることにした。
ウリュウの要望というのはもちろん、ただただ散歩がしたいというだけのものではない。
ウリュウは現在記憶を失っており、同じ村に住む人達のことが全くわからず、ご近所さんの名前どころか顔すらわからない。そのため、村を回ってルナに村のみんなのことを紹介して欲しい。というものだったからだ。
ルナもベルテ村にはウリュウと昨日初めて来たばかりなので、ベルテ村のことなど正直ほとんどわからない。主要な施設の配置や村長と冒険者ギルドの場所くらいはリムから聞いて知っていたが、その程度だ。
昨日の村人達の様子から察するに、村の住人達は自分達のことを知っているらしい。しかしルナは、村の住人一人一人の名前など当然知らない。そこでルナがとった行動は。
コンコンコン
「ごめんくださいなのじょ」
「はいはい、今行くからちょっと待っとくれ」
ガチャ
「おや、こんにちはルナちゃんにウリュウさん。ウチに来るなんて珍しいね? どうしたんだい?」
ちなみに現在の時刻はお昼である。回る時間をお昼にしたのは、お昼ご飯を食べるため、訪ねた相手がいる確率がルナが高い。というのが表向きの理由であり、実際はルナが軽度の群集恐怖症だからである。
百年以上前、帝都で吸血鬼を呪う人で溢れていたあの時とは違うのだ。とは理解はしつつも、その後ずっとなるべく人前から逃げ続けてきたルナにとって、人の動きが激しい午前中に回ることは、なんとしても避けたかったのである。
「こんにちはなのじゃ! 実は昨日パパが頭を打って記憶をなくしちゃったのじゃ、それで少しでもみんなのことを思い出せるように、みんなの家を回っているところなのじゃ。パパはみんなのことも……私のこともまだ忘れてて……。出来れば面と向かってパパに自己紹介と、パパとのエピソードがあったらパパに話してほしいのじゃ」
「あの話は本当だったのかい。ルナちゃんも大変だねぇ。ウリュウさんが記憶をなくしたらしいって話は、息子のイソップから聞いてたけど、てっきり嘘だとばかり思ってたよ。あぁ、自己紹介とエピソードだったね。ウリュウさん。私の名前はダリアよ。初めて会ったのはウリュウさんがこの村に越してきてすぐのことで、うちのバカ息子のイソップが、ウリュウさんのことを詐欺師が来たなんてくだらない嘘を――」
このような具合に、相手から自己紹介をしてもらいながらベルテ村の家々を回っていくことで、ルナが村の皆のことを知らないということを誰にも悟らせることなく、ウリュウとともに村のみんなのことを覚えてまわった。
全ての家を回った結果、留守などで会えなかったのは、ダリアさんの息子のイソップ。チームドーラと言う名の冒険者グループとムスカ発掘隊という名の冒険者パーティー。あとは冒険者ギルドにいると思われるギルド長のドドリゲスさんと受付嬢のローラだけだ。
チームドーラは昨日会った5人組冒険者パーティー(Dランク)のことである。
このパーティーは、ドーラさんの息子5人で結成されたパーティーで、チームリーダーはシャルムさんというらしい。
そしてこのことを教えてくれたのは、このパーティー皆の母親ドーラさんだ。
ウリュウはドーラさんから、昨日会ったチームドーラのメンバーのうち、ルナに色目を使っていた可能性のある2人の男の名が、ローリーとターナーである事を聞き出して、心の警戒リストに登録したが、残りのメンバーの名前は忘れてしまった。
ムスカ発掘隊は、遺跡の調査・発掘を目的とした銅ランク冒険者グループで、ムスカというお金持ちが、バズーカ・ジーター・バルス・ボムという4人を雇い、遥か昔は空を飛んでいたと言われる古代の飛行遺跡を調査発掘しているグループらしい。
ムスカという男の酔った時の口癖は、「人がゴミのようだ」であるらしい。
この二つのグループは、それぞれ仕事でベルテ村の外に出ていたらしく、今回会うことは出来なかったが、日暮れ頃には村に戻って酒場でどんちゃん騒ぎをしているらしいので、日暮れ以降なら会おうと思えばいつでも会えるそうだ。
もちろん、娘大好きお父さんになり始めたウリュウは、娘をこんな人達、しかも酔った状態のこんな危険そうな男達に会わせる気なんてサラサラなかった。そのため、酒場へ行くときには一人で行こう。と、密かにだが、硬く心に誓うのだった。
そんなこんなで、現在ウリュウとルナは、この村で一番大きな建物。ベルテ村冒険者ギルドの扉をくぐり、中へと入った。
――カランカラン
ドアが開くと同時、ギルドに来客を伝えるための鈴がなり、受付のカウンターで突っ伏しながらパンを食べていたローラが面倒くさそうな顔で二人の方を振り向き。
「ウリュウさんじゃないですかぁ!? こんな時間に来るなんてどうしたんですか? 私に会いたくて我慢できなくなっちゃったんですか?」
と、口に咥えていたパンを、自らの陰になっているところにペイッ! とし、笑顔で奇妙な動きを見せながらウリュウに話しかけた。
「こんにちはローラさん。我慢できなかったとかじゃないけど、ローラさんに会いに来たのが目的のほとんどだね」
「えっ!?」
ウリュウの先の発言に、ローラの顔がみるみる赤くなるのを確認したルナは、自らの機嫌を悪くしながらも、なるべくいつも通りの口調でローラの勘違いを否定するべく訪問理由を答えた。
「そなたも知っての通り、ウリュウの記憶がなくなってしまったゆえ、この村のすべての家を訪ねて回り、残っているのがこの冒険者ギルドじゃったというだけじゃ」
「えっ? あ、そうなの。なんだ、私に会いたくて来てくれたわけじゃないのね」
「この村のみんなに会うのが目的だったけど、ローラさんにはそれとはまた別に聞きたいこともあったから、なるべく早くあいたいなとは思っていたよ?」
「本当ですか!? なんですか? 何でも聞いてくださいよ? 好きな人には自分で気付いてほしいタイプなので言えませんが、スリーサイズから好きな男性のタイプまで、ウリュウさんになら答えちゃいますよ?」
体をくねらせながらウリュウにそのような応えを返すローラを見て、ルナは察した。この女、妾のウリュウに気があるのだ。と、そしてバカそうだがそれなりに可愛くはあるので、この女にはある程度の警戒が必要だ。と。
そんなルナの警戒をしり目に、特に何の警戒もした様子のないウリュウが、ローラに笑顔で今朝の朝食について尋ねる。
「今朝起きたら朝食が用意されてたんだけど、ローラさんになにか心当たりないかな? って思って」
「あぁ、昨日ウリュウさん、ドーラおばさんのところにパンを買いに行かなかったでしょ? きっと朝困るだろうなぁ。って思ったから持って行ったの。手伝えることは手伝うって言ったでしょ? こんなベルテ村みたいな貧乏ギルドの安月給じゃ、これからも。ってわけにはいかないけど、お金のかからないところでならいくらでも協力するからいつでも言ってね? ウリュウさん」
ルナは声には出さず、心の中でこう叫びながらローラを睨んだ。
――この女、しれっとリムの手柄を横取りしたのじゃあ!!!!
「ありがとうロ――」
「貧乏ギルドで悪かったな」
という声が、ギルドの二階から聞こえてきた。
「うげっ!? ギルド長!? 今の聞いちゃいました?」
ギルド長と呼ばれた人は、見た目60代前後で、灰色で統一された魔法使いのような杖とローブ、それに帽子を被った身長150CMくらいの男性だ。
彼は階段を下りながら平坦な口調で、
「聞こえたから悪かったなと言っておるのじゃ」
と、ローラに応え、
「ならギルド長ももうお年ですし、さっさと忘れてくださいね?」
と、さらにローラも笑顔で応えた。
「わしは記憶力は人一倍良いんじゃ! 誰が忘れてやるか!」
「先週送られてきた王都のパパからの差し入れ。私ギルド長に『1箱だけなら食べていいですよ』って言ったのに、3箱全部食べちゃいましたよね? あれって1箱いくらするんだったかなぁ?」
「……最近物忘れが激しくてのぅ。もう年かもしれんな」
「年ならしょうがないですよねぇ」
「そ、そうじゃなぁ。優しいローラちゃんにはいつも感謝しておるからな?」
「はい。ちゃぁんと知ってるから大丈夫ですよ?」
ウリュウとルナはこの時、ベルテ村冒険者ギルド内でのカーストを理解した。
とまぁそんなやり取りをする内、ギルド長と呼ばれたおじいさんはみんなの前まで来ると、ウリュウにこう問いかけた。
「ときにウリュウ。君が記憶をなくしたというのは本当か?」
「あ、はい本当です」
「わしのことはわかるか?」
「いえ、すいません。わかりません」
ウリュウがそう答えると、ギルド長は肩を落とし、悲しそうな表情を一瞬浮かべた後、真剣な表情を作ってウリュウに再度話しかける。
「そうか……。ならばまずは自己紹介から始めよう。わしの名はドドリゲス。ベルテ村冒険者ギルドのギルド長じゃ」
「ありがとうございます。ご存知かもしれませんが、ウリュウです。よろしくお願いします」
「いいや、友人としてならともかく、ギルド長としてお主と付き合うことはもうないじゃろう」
「どういうことですか?」
「ウリュウ、君はもう冒険者を辞めなさい」
冒険者ギルドのギルド長に、冒険者を辞めろと言われたウリュウ。なぜギルド長はウリュウに冒険者を辞めろと言ったのか? そしてウリュウは実際冒険者を辞めるのか?
次回【ウリュウの欠点】(仮)をお楽しみ下さい。
粗原は出来ているので、更新は直しが完了次第となります。
以降下記、私の単なる個人的な日記のような物となります。興味のある方は少ないとは思いますが、いらっしゃいましたらどうぞお読み下さい。
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昨日(12/16)、奥歯を抜いてきました。
奥歯の周囲が炎症を起こしていたらしく「これだと麻酔が効きにくいうえ、奥歯はしっかりくっついているから、このまま抜くとかなり痛いよ」と言われました。
しかし、
「今日抜かず、マニュアル通りいくなら、今日は奥歯の周囲に溜まってパンパンに腫れている所を切って血を抜き、抗生物質飲んでもらって炎症を抑えて、抜くのは来週以降になります」と言われました。
歯医者さんも年末年始はギッシリ予約が詰まっています。
抜くのは、予定通りにいっても病院が年末年始の連休に入る直前、遅ければ来年になると言うではないですか!
年末に抜けば、抜いた後傷んでも病院はお休みです。
年始まで待てば、その分痛みは長引きます。
私は思いました。
そんな状態でいつ抜くの? 今でしょ!
麻酔が本当に全く効かず、2度ほど麻酔を足したのですが、効いている感じはありません。
先生が「今日はやっぱりやめておいた方がいいんじゃないのか?」と言い出したので、すかさず私はこう応えました。
「あっ、先生。麻酔効いてきました」
少し呆れたような先生が、初めてペンチを取り出し、私の歯を掴んでグリグリします。
「痛いでしょう?」
もの凄い痛みを感じ、手足の先が勝手に伸びましたが、中途半端がきっと1番キツい。
私はこう応えます。
「ぜんぜん?」
「本当に?」
その後何度も繰り返し聞かれた「痛かったら言って下さいね」という先生の問い掛けを完全無視。
歯はペンチを取り出してから1分くらいですぐに抜けました。あとに残るのは激痛のみ。
「麻酔は2時間くらいで切れるので、その前に痛み止めをしっかり飲んで下さいね」
と言われたが、そもそも麻酔なんて効いてない! 骨折したときより数段痛い! 私はすぐにボルタレン(痛み止め)を飲みました。
麻酔が切れると言われた2時間後ぐらいにはむしろ痛みがある程度引いていました。
やはり麻酔は効いていなかったらしいです。
四時間後にはほとんど気にならないくらいまで痛みがなくなり、私は今回投稿した分の直しを始めました。そんな時、奴は突然私の部屋の扉を無断で開き、現れたのです。
「忘年会行こうぜっ!」
「いきなりなにっ!? せめて呼び鈴押せよ!?」
「まぁえぇやん? 俺らの仲やん? 忘年会行こうぜ!」
「いや、俺今日ちょっと歯抜いてさぁ──」
「いやもう予約しとるし、他の奴も待っとんねやからさっさと行くで?」
「はぁっ?」
「まぁえぇやん? とりあえず来いって」
無理矢理連れ出された先は、【赤から】という名の鍋屋さん。
「ちょっと待て! これは酷いやろ!?」
「前から予約しとったんやからしゃあないやん?」
「いや、予約する前に俺も連れて行くんやったら俺にも聞こうぜ!?」
「いや本当はあと◯◯が来る予定やったんけど、あいつ来れやんくなったからお前代理やねん」
「元々呼ぶつもりすらなかったんかよ!?」
「まぁえぇやん? お前辛いの苦手やったよな?」
「めっちゃ苦手。赤からなら鍋の辛さはいつも2か3で食べる。むしろ1でも良いわ」
「そっか」
注文時
「鍋の辛さはどうされますか?」
「8で」
「畏まりました」
「いやっ、おい! ちょっ!? おま──」
店員が私の方を向き、それで良いかと確認しようとしたとき、奴はいきなり立ち上がり
「今年1年ももうすぐ終わり。楽しいこと、辛いこと、色々あったやろうけど、残り半月頑張りましょうっ! 乾杯っ!」
「いや、まだ誰も飲み物来てねぇよ!?」×6
「あっ、ごめんなおねぇちゃん。こいつらもう待ちきれへんみたいやから、オーダーさっきので誰にも文句なんて言わさへんから、ドリンクだけでも急いで持ってきてくれへん?」
「あっ、わかりました」
「あっ、あと後でLINE教えて!」
「あっ、はい」
「マジで!? ありがとっ!」
「あっ!」
という感じで、楽しくも辛い友人同士での忘年会をしてきました。
しかもあいつ、ちゃっかり店員のお姉さんのLINEゲットしてました。ノリの良いイケメンは得だなぁ。
赤から鍋の8からが私の抜いた奥歯へ与えたダメージ? 威力は抜群でした!