アウトロー!
俺は天下のアウトロー。
キワモノ、アウトサイダー、アウトロー。
全てがアウトローでないと気の済まない男。
踏み出す足は踏み外し
落ちてもないバナナの皮で転ぶ男。
そんな俺は子供の頃からアウトロー。
小遣いはもらった日に全額使うのが俺のスタイル。
主な使い道は赤い羽根募金。
俺はいつでもアウトロー。
少年野球を始めた俺はアウトローに強かった。
どんな投手が相手だろうと構わない。
アウトローに球が来た瞬間俺のバットは火を吹いた。
しかしインコースが全く打てないことがバレたアウトロー。
レギュラーをアウトされてベンチで涙をアウトロー。
空手もやってたアウトロー。
得意技はローキック。
試しに電柱を蹴ったら簡単に折れたぞアウトローの足が。
中学生になってもアウトロー。
入学時の自己紹介。
これはアウトローとして俺の立場を確立するチャンス。
アウトローにこだわる俺は常にノーパンであることをカミングアウト。
しかし証拠を見せろとアウトローなヤジを飛ばすクラスメイト。
そんな挑発に乗るわけ、全力で乗るのがアウトロー。
その場で下半身をアウトロー。
飛びかう悲鳴と罵声。
そして先生のローキック。
俺の意識はアウトロー。
そしてあだ名はチンコになった。
アウトローの俺にはふさわしい。
高校生でもアウトロー。
アウトローにこだわりすぎた俺はクラスに馴染めずアウトロー。
俺の定位置は教室のアウトロー(ベランダ)。
アウトローの俺は寂しくなんかない。
昼休みもアウトロー。
教室内に居場所がないと見るや学校で飼っているウサギ小屋へとアウトロー。
ウサギとともに昼食取りつつアウトロー。
しかしウサギから餌を取っていると疑われたアウトローは
生徒会室に呼び出される。
もちろんウサギの餌など取っていない。
必死に説明アウトロー。
生徒会長は信じてくれたが他の役員は納得していない様子。
「ではなぜウサギ小屋に入っていたのか」
厳しく追及される。
これはやるしかない。
あれをやるぞアウトロー。
一発かますぞアウトロー。
「ウサギさんとお友達になりたかったからだピョン!」(裏声)
滑った。
それはもうアウトローに鋭く逃げていくスライダーのように滑る滑りよる。
それから俺のあだ名はウサチンコになった。
アウトローの俺にふさわしい。
あだ名なんか気にしないピョン。
社会人になってもアウトロー。
女の趣味もアウトロー。
この前付き合っていた女は一人称が「我」で
誰も居ないところで闇の眷属と会話し、
普段からメイド服を着こなす四十路アウトローだった。
三日で振られた。
俺の仕事もアウトロー。
アウトローの俺にぴったりな仕事。
それは掃除屋。
この仕事を始めて汚いものもたくさん見て来た。
ゴキブリの死骸、ネズミの糞。
それでも仕事は完璧にこなすアウトロー。
社長から表彰されたアウトロー。
そんなアウトローな俺は少し調子に乗っていた。
ある日、歩道のアウトロー(車道)を歩いていたアウトロー。
何故なら影みたいでアウトローの俺にふさわしかったから。
そんな俺は4tトラックにはねられ場外へとアウトロー。
死ぬかと思ったアウトロー。
でもそんなことではくたばらない。
何故なら俺はアウトロー。
飛んだ先は銭湯。
ガラスを突き破り起き上がった場所は女湯。
アウトローを突き通す俺へのご褒美か。
しかし女もアウトロー。
俺の股間を蹴り上げる。
アウトローに曲がる俺のゴールデンボールを綺麗に流し打ち!
俺は再び場外へ。
飛んだ先は白い砂浜。
に頭からぶっ刺さるアウトロー。
砂から頭を抜いて赤く染まる綺麗な夕日と海を見ていると、
何故か涙がアウトロー。
もう疲れた。
なぜ生きているだけでこんな目にあうのか。
いっそ人生をアウトローしてしまおうか。
「助けて!」
沖の方を見ると子供が溺れかけている。
ここの海は流れが速い。
少しでも遊泳区間からアウトローすると命をアウトローしかねない。
どうするかって?
助けるに決まってるだろアウトロー!
俺がなぜアウトローの生き方をして来たか知っているか?
人の道を踏み外すためじゃない。
自分の意思を突き通すためだアウトロー!
俺はシャキンと立ち上がり
スポンスポンと服を脱ぎ、
迷わず飛び込む荒海へ!
待ってろ子供!待ってろよ!
足がつかないアウトロー。
気づいた俺は泳げない!
ジタバタもがいてアウトロー。
沈んで溺れて海の下。
このまま無駄死に、してたまるか!
右手が掴んだ一縷ののぞみ。
それはイノシシアウトロー。
海を渡りしアウトロー。
目を見た瞬間アウトロー。
俺と同じくはみ出し者。
島を追われたイノシシは
大海超えて新天地。
目指す途中に俺と会う。
乗れ、とイノシシアウトロー!
必死に掴むその背中!
子供のところへど真ん中!
しかし子供は力尽き、
海の底へとアウトロー。
追って潜るはアウトロー!
海底へと消えていく子供の手を
俺は決して逃さない!
伸ばした右手は子供を掴む!
この手を絶対離さねえ!
俺は天下のアウトロー!
貫く意思こそアウトロー!
***
子供を抱きかかえた俺は力を振り絞って浮き上がり
必死にイノシシの背中を掴んだ。
イノシシによって無事砂浜まで運ばれたあと、
意識を失っていた子供には駆けつけていた救急隊員によって救命措置を行われ、奇跡的に意識を取り戻した。
野次馬たちから拍手が巻き起こる中、俺は再び海に入ろうとするイノシシを見つけた。
「行くのか」
駆け寄った俺の問いかけにイノシシは振り返る。
しかしすぐに海へと向き直る姿は決意に満ちていた。
「俺も連れて行ってくれ」
その言葉にイノシシは再び振り返る。
「俺も知りたいんだ。この先に何があるのか。何ができるのか」
俺の言葉にイノシシは伏した。
「……、乗っていいのか?」
「早く乗れ」
はみ出し者は答える。
「……ありがとう、共に行こう。共に生きようアウトロー」
俺が背に乗るとイノシシは立ち上がる。
そしてゆっくり海へと歩みを進めた。
これから何があるのか、どんな事が待ち受けているのかは誰にもわからない。
それでも俺はアウトロー。
貫く生き様アウトロー。
そうして1人と1匹は、
夕日の先へとアウトロー!
終わり
最後までお読みいただきありがとうございました!