132no51no714。874
「恋の・・・・病・・ですの?」
私の問いに、ルーファさんが小さく頷きましたわ。
「普段と違う環境。知らなかった互いの一面。ちょっとしたトラブルや触れ合い。・・・・恋に落ちても仕方ないよネ。」
ため息混じりに呟くルーファさん。
「一生懸命な瞳。普段と違う大胆な行動力。ひたむきに取り組む姿。そういう姿を知ったら・・・・なんかいいナって思っちゃったんだよネ。」
「気付いたら、目で追っちゃうし・・・・考えてる。声が耳に入るだけでニヤけちゃうから、口元を押さえるのに必死だョ。情けない。」
ははっと困ったように話すルーファさん。うんうん。わかります。わかりますわ!その気持ち!私もハンスの声を聞くだけでニヤケますもの!ニヤケ顔をものすごーーーっく残念な顔で見られますけれど!!
「お気持ちわかりますわ。私も片想いですもの。」
「あれ?ヴィクっちも?片想い?」
ええ。7年間も片想い中ですのよ。求婚済みですわ。断られていますけど!!
「ヴィクっち。ハンスの事・・・・そんな長く想ってるんだ。」
「ええ。これからもずっと想い続けますわ。ってハンスが好きだってルーファさんに教えましたっけ?」
「いやぁ。ヴィクっちは、わかりやすいし。」
学園に入ってからは、ハンスが嫌がるから・・・・求愛は控えていたのですけれどバレバレですのね。してもしなくてもバレバレなら、求愛再開してもいいわよね?積もり積もった私の愛が、今にもはじけそうですわ!
はじめは、一目惚れでしたわ。でも、傍にいればいるほど。ハンスを知れば知るほど。好きが増えていきますの。茶色の柔らかなくせっ毛。困ると下がる眉尻。柔らかな声。琥珀色の瞳。お人好しな所。責任感の強い所。柔軟なようで頑固な所。鼻先をくすぐるハンスの香り。男らしくて行動力もあって、護衛もできて、甘いマスクなくせに身体は引き締まってて・・・・・・
「ヴィクっち?何ニヤケてんの?」
「へ?」
「顔が、ヤバいョ?令嬢のする顔じゃないョ。」
笑われましたわ!ヤバいってなんですの!?ヤバいと言われる顔ってどんな顔!ああこんな顔!
ここ数日、顔を貶されてばかりですわ!!私、客観的に自分は美人な部類かと思っていましたけれど・・・・自惚れでしたのね。そういえば、可愛くなる努力をしてませんわ!太りやすいから、体型改善しかやってない!腹筋、スクワット、マラソン、ダンス、護身術に体術・・・・体ばかりすくすく育って・・・・私・・・・努力する方向性を間違えた?あら?
「ーってなんでヴィクっちにこんな事言ってるんだろネ。」
心の中で自問自答する私に、困ったように笑うルーファさん。いつものお調子者の雰囲気がない。「誰かに聞いて欲しかったのかも」なんて吐き出してますわ。・・・・聞いたからには、私も応援して差し上げたいわね。
「あら、私、恋のエキスパートですのよ?恋愛マスターですわ!片想い歴7年ですもの!!」
アプローチの仕方だってわかってますのよ?ふふふ。私程頼りになる恋愛相談者は居ませんわ!
「7年間も想い続けて実ってない・・・・うん。ヴィクっちが恋愛マスター名乗るのは違うかナ?」
・・・・たっ・・・・確かに実ってませんけれど!求婚もナシの礫ですけれど!歯牙にすらかけられてませんけどもぉおお!!くっ、目から汗が!!泣きませわ!これしきの事で!私の戦いは、これからですのよ!
「って、ルーファさんの想い人ってどなたですの?まさかハン・・・・」
「あのネ。ヴィクっち?オレはちゃんと女の子が好きだョ。」
「まぁ。レオニダスとは違いますのね。」
「え?レオニーそっち?ううん?まぁ、恋愛は自由とは言うけれど。」
ヴィクっちの頭の中は、ハンスの事でいっぱいなんだね。っと苦笑されてしまいましたわ。その通りですけれど、何か問題がありまして?
「なんで恋なんてするんだろうネ。邪魔でしかないョ。こんな感情。交わらないなら、無駄じゃない?悩んで何も手につかなくなって、自分の黒い感情に気付いて・・・・ほんとサイアク。」
「そうですわね。実らないのは、とっても辛くて悲しいですわ。」
相手にされない。土俵にすら立たせてもらえない。努力しても努力しても報われない。その時間さえ、無駄だったかもしれないと思うのは、悲しくて辛いですわ。
「でも、仕方ないじゃないですの。」
「ん?」
「恋しちゃったのだから。どうしようもありませんわ。だって、恋に効く薬なんてないのでしょう?なら、諦めて楽しんでみたらどうですの?愉しむ事に関しては、ルーファさんはエキスパートでしょう?」
なんだって楽しそうにするルーファさんなら、その恋だってきっと愉しめますわよ。
「辛く悲しい事も、恋のスパイスですわ。何もない平坦な人生よりよっぽど素敵でなくて?実だけが恋じゃなくってよ?」
想った相手と通じ合えるなんて・・・・夢見れる程、私もこどもではありませんわ。
「まぁ、私は絶対実らせてみせますけど。」
ハンスゲットの為なら、どんな努力も惜しみませんわ!ええ、今日から早速 【可愛い】を研究しなくては!
「ーっともうそろそろいかないと。」
「ああ。引き止めちゃったみたいでごめんネ。」
「いいえ。お話しできて楽しかったですわ。」
こんな風に恋バナするなんて、あまりないですもの。うふふ。なんか青春じゃありません?放課後の教室。差し込む夕日。甘酸っぱい恋の話。きゃーなんだかキュンキュンしますわー!恋愛小説っぽくなくって!!オホホ!
えっ?違う?ドリル装備な令嬢は、お笑い小説がお似合い?ー宜しくってよ。そう思った方・・・・今すぐそこに並びなさい。このドリルの破壊力を身を持って体感させて差し上げてよ?ウフフフフ。
「あーヴィクっち。今日話した事は、内緒ネ。」
脳内で見えない敵と戦う私に、ルーファさんが言いますわ。
「特に、ハンスとルビちんには言わないで。」
唇に人差し指をあて、「ネ。」っと念押しを・・・・
「ええ。わかりましたわ。秘密ですわね。」
「聞いてくれてありがとう。なんか少し楽になったョ。」
ルーファさんと私の二人だけの秘密。
「ええ。いつでもお聞きしますわよ。だって私は、恋愛のエキスパートですもの。」
胸を張って答える私に、「それは違うかナー。」という言葉が返ってきましたわ。ちょっと。ルーファさんまで私を残念な子を見るよう目で・・・・その糸目でもそんな顔できますのね!私、それは知りたくありませんでしたわ!




