★決意表明!ですわ
ーヴィクトリアちゃんの脱悪役令嬢計画ー
私の明るい未来計画の為の第一歩。それは、性格改善ですわ。
ゲーム内でのヴィクトリアは、とても高慢でプライドが高く、人を常に見下していたような嫌な性格の令嬢でしたわ。(ヒロイン目線)
まだ五歳の私は、その愛らしさと素直さから、蝶よ花よと育てられ、天使と言っても過言ではないくらい美幼女ですのよ。ええ。どこで品曲がってしまったのかしら?
成長過程で、素直さを落っことしてしまったに違いないわね。
【素直が一番!心に謙虚を!】
紙にでかでかと書き綴り、淡い紫色のメルヘンチックな壁にべたりと張り付ける。
ヒロインのように、美しく清らかな心は持てそうにもない(寧ろ持つ気もない)けど、そこそこの謙虚さを抱いておけば、余計な争い事は避けられる筈だわ。
高慢ちきちきなプライドなんてあっても、ライフ削れど好感度は上がりませんもの。憎まれる可能性は、極力カット!脱悪役令嬢計画の基本ですわね。私って頭がいい。
ニンマリと笑う、その後ろから
「・・・・ヴィー?これは、一体何が書かれてあるんだい?」
と透き通るようなソプラノボイスが・・・・。
「不思議な記号だね。もしかして・・・・文字か何かかな?」
振り返ると、私と同じく、金髪碧眼の見目麗しい美少年が、不思議そうな顔で壁に貼られた私の抱負を見つめていた。
「・・・・ブルーテスお兄様。嫌ですわ。レディの部屋にノックも無しに立ち入るなんて」
ムスっと剥れながら文句を言うと、その綺麗な顔を優しく緩め
「ごめんごめん。でも、ヴィーも部屋の扉を開けっ放しにしてたじゃないか。それに僕は、何度か声をかけたんだよ?一心不乱に何かに取り掛かってたのは、ヴィーなんだけどな」
っと諭された。私と違い、お父様に似て、優しい目元のブルーテスお兄様。サラサラの金糸の髪に、光溢れる天使のわっか。そのキューティクルと直毛は、私の殺意の対象ですのよ!なんですの!同じ親から産まれたというのに!何故私は、つり目ドリルな悪役顔ですの!?
「これは、私の考えた文字ですわ」
天使なお顔で小首を傾げるお兄様に、つーんと済ましてご説明しましたわ。これ、日本語ですのよ?こちらの文字でこの抱負を貼り出すのは、流石に恥ずかしいですもの。まるで私に、素直さと謙虚さが欠けているかのような文面ですものね。普通は、意識して持つものではありませんもの・・・・。
・・・・意識して持たないと、欠けてますのよ!悪かったですわね!くっ!いっそ、そっち方面に素直になってやろうかしら!!悪役令嬢を突き抜けるのも面白可笑しくて愉しそうですわね!!
っといけないいけない!
運営の思惑に乗ってたまりますか!
「私、素敵な淑女になりたいのですわ。だけど、その抱負を誰かに知られるのは恥ずかしくて……自分だけがわかるように、秘密に掲げてみたのです」
熱くなる頬を誤魔化しながら、お兄様に微笑み誤魔化す。
「そっか。それは、素敵な抱負だね」
そう言って、優しく微笑み返してくれるブルーテスお兄様。
「でも、ヴィー。いいの?誰にも知られたくないのに、僕に知られちゃってるよ?」
クスクスとお兄様に笑われ、顔がカアッと熱くなるのを感じる。
「いっ・・・・いいのですわ!お兄様なら!お兄様は、私の味方ですもの!お兄様はきっと誰にも言ったりしませんわ!! 」
真っ赤になって焦る私の頭に、お兄様は優しく触れる。
「そうだね。ヴィー。僕は、ヴィーの味方だ。これは、二人だけの秘密だね。うんうん。ちゃんと内緒にしといてあげるよ」
クスクスと笑い、くしゃりと髪を撫で上げると可愛らしい音を立て、私のおでこにキスを落とす。
「素敵な淑女になれるといいね。ヴィー。僕の可愛いお姫様」
家族の親愛のキス。それが嬉しくてつい、お兄様の首にぎゅーっとしがみつく。
「ちょっと、ヴィー。そんなに強いと苦しいよ」
「ふふふ。私よりも3つも上ですのに、軟弱ですわね。お兄様」
「言ったな。ヴィー。こうしてやる! 」
生意気を言う妹を懲らしめるように、こしょこしょと脇を擽ってくるお兄様。身をよじり悲鳴の声をあげる私。
「おっお兄ひゃまっ!ごめっ・・・・ゆるひて!」
「だーめー。もっと心から反省しないと許してあげなーい」
その日、笑い過ぎたせいで、私の腹筋は数日筋肉痛を伴ったのは、苦い思い出なのですわ・・・・。