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出会う二人、争う二人(6)

前回までのあらすじっぽいもの:『姫』二人の争い、勃発

「殺す……」


 この火の玉がきっかけで火事でも起きたらどうしようとヒヤヒヤしている俺とは対称的に、屋敷が燃えるよりも熱く怒っているのが分かる言葉を呟きながら、キリナちゃんは飛んできた火の玉を斜め前へと進みながら身を捻りつつ紙一重で避け、体勢を立て直し、さらに速度を上げ一気にハルちゃんとの距離を詰めにかかった。


 ってこのままだとまた壁が!


 盾の特殊能力を解除し手袋に戻し、視界の端に廻るリールの中てきとうに武器を選び出し、出てきた長杖を振るいぶつけその火の玉を消す。


「ふんっ……」


 しかし、そう慌てて対処した火の玉は、ただのフェイントだったのだろう。


「『我を守りたもう炎のシールド・ファイアタイプ』!」


 その間にヒナちゃんは、ガッと力を込めた手のひらを顔の前まで突き出す動作と共に、自らの周囲に高い炎の壁を生み出していた。


「ちっ」


 芝生が燃えたり焦げたりしないだろうかと迷惑がる俺の目の前で、キリナちゃんは身体に急ブレーキをかけて止まる。その炎の壁にそのまま突撃は出来ないと判断したのだろう。


 だがそれを、ハルちゃんは読んでいた。


 炎の壁の向こうから、さっきと同じ火の玉が三つ、横一列になって飛来する。

 おそらく、炎の壁の向こうにいるハルちゃんもこちらの様子が見えていないのだ。だからそんな、そのどれかの一発に当たれば良いという考えが見え透いた攻撃を放ってきた。


 そんな狙い澄ましていない攻撃、初撃のフェイントよりも避けるのは難しくない。

 キリナちゃんはその場で回転しながら横へと移動し・躱す。さらに躱し終えてもその回転を止めず、その勢いに乗った力を流れるような動きで膝に移し、しゃがむことで最後の「溜め」を行い、その力を爆発させるかのように高く、飛び上がった。


 まさか……俺ぐらいの高さはある炎の壁を飛び越える気か……!?


 なんて身体能力だ。これが『換核ヒメア』を守れる実力を測るために開かれた大会で優勝した女の子の実力、ということか。


 おそらく、『不然発破マホウ』を使わない素の戦闘では、俺は負けてしまうだろう。


 いや、それを言い出したらハルちゃんもスゴい。

 俺は『崩色唱ミューゼ』を使えはしないが、この国の『五法術ヴィンサー』の特性上、どういったものかは知っている。

 アレだけ連続で絶え間なく『崩色唱』が使えるとは……流石「次世代のエース」と称されていることはある。『不然発破』を扱い辛くさせる『換核』を埋めて尚、その腕前とは。


 これでもし『換核』を埋めてなかったなら……今頃本当にこの敷地内全てが焦土と化していたかもしれない。


「はぁっ!」

「ちょっ……!」


 茜空よりも赤くそこに届きそうな壁を飛び超え、その落下の勢いのまま蹴りを放つキリナちゃんの気迫を込めた声と、その姿を見て驚いたハルたんの声が二つ聞こえたのを最後に、その姿は向こうへと消えてしまった。


 時折、人差し指ほどの太さをした一条の火がこちらに向かって無数に飛んで来たり、なんか離れの方へと大きな火の粉のようなものがぶつかっていたり、空へと浮遊して逃れたハルちゃんが見えたり、そんな彼女を地面へと引きずり下ろすかのような首筋狙った跳び上段回し蹴りを放つキリナちゃんが見えたりしてきた。


 やはり、あの近距離から戦闘を開始するというのは『崩色唱』使いとしては不利すぎる。

 もちろん、接近された際の対処法や接近戦用の『崩色唱』もあるにはあるのだろう。

 が、それを無為にする程に、キリナちゃんが接近戦に強すぎる。


 壁をすり抜けるような攻撃を出来る限り杖をぶつけてかき消しながらそう冷静に思考していると、不意に、彼女達と俺との間にあった視界を塞ぐ炎の壁が消えた。

 同時、距離を取るためなのか、飛び込むようにしてヒナちゃんがこちらにに転がってきた。


 そんなハルちゃんを追い詰めるかのように、片膝をついた彼女の前でキリナはただ静かに立っていた。


 どうやら、勝負は決したようだ。

 特に大きな被害が出ることも無く終わって良かった。


「…………ん?」


 いや、そうでもない。

 何やらハルちゃんが、ニヤリと笑みを深めた。


 まるで、仕掛けた罠の上に獲物が掛かったのを確認したような――


「『暴発ブレイク』!」


 力ある言葉が、突如響いた。


 途端、キリナちゃんの身体が数箇所、爆発した。


「ぐぅっ!」

「まだまだ! 『我指定する上がる火柱のフレイム・タワー!!』」


 よろめきながらも、追撃として放たれた足元から噴き上がる火柱の『崩色唱』を避けるキリナちゃん。


 ハルちゃんとの距離が開いてしまった。

 しかし、開けすぎてはいない。

 相手へとすぐさま反撃できる距離で、不意打ちも避けられる距離。


 つまり……戦闘開始時の距離へと、戻っただけだ。


「驚いた? 驚いたでしょっ? ふっふ~ん、なんだったら、説明してあげても良いケド?」

「……なるほど」


 自慢気に小バカにしたハルちゃんを意に介することなく、ダメージを受けたにも関わらず相変わらずなまま、キリナちゃんはその爆発のアテに思い至る。


「あの時の火の矢か……」

「へ~……分かっちゃった?」

「あの矢が当たったところと同じところが爆発したもの。それぐらい分かるわ。ま、当たっても熱くなかったから怪しかったってのもあるけど」


 怪しかったから事前に防御策を用意していた。そういうことだろう。

 キリナちゃんの国の『不然発破』なら、そういう局地的な防御が出来てもおかしくはない。


「そう。なら、もうちょっと本気出そうかな」


 楽しそうに、先程の罠に嵌めた時とは違うニヤついた笑みを浮かべるハルちゃん。


「じゃあこっちも、本格的に『不然発破』を使っていこうかな」


 キリナちゃんの表情はやっぱり動かない。だがその雰囲気が踊るように喜んだのを、俺は見逃さなかった。


 しかし、まずいな。そろそろ本格的に、どちらかが怪我をしてしまいそうだ。

 楽しそうだから止めるのを止めておきたいところだが、そうもいかない。

 おそらくどちらかが怪我をすれば止めてくれるだろうが、それでは遅い。


 ならば、どうするか……。


「……………」


 視界に入ったのは、俺の小屋。


 現在俺の手元にあるのは、長杖に変化させた『五法術』。


「…………………………」


 ……仕方がない。

 偶然とはいえ、運が良かったと思うべきか。


 ガガガッ……! と杖で地面を叩き、耐久度を最後の一になるようにする。


 そして、最後の一つになったところで……。


「……ふっ」


 遠くにある小屋に向けて二人にバレぬよう、その杖を小さく振るった。


 長杖の特殊能力は、衝撃の保存。

 それまでのダメージを杖に蓄積していき、最後の一振りでその全てを開放する。

 今までこの杖は、ハルちゃんの『崩色唱』を受けてきた。

 それによりストックされたのは、遠距離狙撃の火の力。

 それを開放するということは……炎を放つ、ということである。


「ぎゃああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

「えっ?」「ん?」


 突然叫んだ俺の声に反応して、対峙していた二人がようやくこちらを見てくれる。


 それで状況を理解してくれた。

 俺が住む予定となっている小屋が燃えている、ということを。


「ちょっ、速く消してくれハルちゃん!」

「いや、消してくれって言われても……!」


 離れへと駆け寄りながら叫びお願いしても、何故か気まずそうな笑み。


「水を出したりとか出来るでしょっ!? 『崩色唱』ならっ!」

「あ~……ごめん。今の私じゃちょっと無理」

「なんですとっ!?」

「まぁ、どんまい」

「他人事みたいに妙な落ち着き見せてないでよコラァッ!」


 もちろん、この俺のテンパりは演技である。

 そうしてハプニングが起きたと演じることで、二人の気を削ごうという狙いだ。


 それだけ必死になる理由が必要だからこそ、倉庫ではなく俺が住むことになっている小屋を燃やしたのだ。

 もちろん、必死に消そうとする意志は見せ続ける。

 相手に少しでも疑われてはいけない。

 消えなくても良いが、消えて欲しいという気持ちは事実。その気持ちを強め、消えないと困る、と見せつけなければいけない。


「とりあえず、呆然としていても仕方が無い。フラット、ダメ元だけど井戸から水を汲んできてかけていこう」

「くそっ……! それしか無いか!」


 キリナちゃんの提案に乗っかり、屋敷の裏手を回り反対側の横手へ。

 そこにある井戸から水を汲み、バケツへと移し、持って行って離れへと水をかける。


 もちろん、この程度の水じゃ鎮火なんて出来るはずも無い。


 しかしそれに思い至りながらも必死になり、折れそうになる心を奮起させたようにして、また来た道を戻る。


「フラット!」


 と、俺と一緒に来てくれていたキリナちゃんが、水の入ったバケツを渡そうとしてくれ――


「あ」


 ると期待してたのに、何も無いところで彼女がこけた。


「…………………………………………」

「…………………………………………」


 急がなければいけない状況で、互いに時間が止まってしまった。


「す、すまない……すぐに汲んでくる」


 慌てて立ち上がって、こけた時手放したバケツをそのままにして井戸の方へと戻ってしまった。


「あぁ! バケツが無いっ!」


 遠くから聞こえる声。もし演技をしなければいけない状況でなければ、吹き出し大笑いしてしまったかもしれない。


「……って、俺も動かないと」


 そう。

 動かないと。


 本当、ハルちゃんの『崩色唱』は威力が高い。

 このままでは俺が住む小屋だけじゃなく、屋敷にまで飛び火してしまうかもしれない。


 キリナちゃんが忘れていったバケツを拾って、井戸へと移動する。


 二人の喧嘩を止めるために住むところを燃やしました、では話にならない。


 全く……こればっかりは計算外だ。


 『換核』宿した『不然発破』でこの威力なんて……しかも、それを間近で受けながら戦い続けた子もいるし……そりゃ、こちらの護衛も付けずにこの屋敷まで辿り着くはずだ。


 これが『姫』。

 本当に護衛が必要なのかどうか疑いたくなる二人だな、本当。

 日を跨いじゃったよ! 申し訳ない!!

 でも一応こちらとしては木曜日更新のつもりなんだ……。


 それと謝りついでにもう一つ謝罪。


 ちょっと金曜日から日曜日にかけての三日間、更新止めます。

 その間に書きたいSS書かせてもらって投下させてもらいます。

 本当自由にさせてもらって申し訳ないです。


 次の更新は月曜日。

 キリもよくなったからってことで、よろしくお願いします。

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