部屋のキオク3
あの二人には、とても感謝している。
彼女みたいに毎日来てくれるし、私のしたいことはだいたい許してくれた。私も彼女の言葉も少し伝えて、手伝ってもらいもした。
でも、結局彼女の頼みを叶えることはできなかった。
そんなことをしている内に一年が経った。女子生徒の方が来なくなった。代わりにもう一人別の男子生徒が来るようになった。彼は、女子生徒がいたときと同じく、元々いた男子生徒と交代で来るようになった。
しかし、その彼からは何か違和感を感じた。何だとははっきり言えない。しかし、二人とは違う何かを感じる。
もちろん、彼も優しい。自分の気のせいだと思っていた。いや、思いたかった。
その違和感の正体が露わになったのは、さらに一年がたった時だった。
元々いた男子生徒が来なくなって、代わりに新しい女子生徒が来るようになった。
そしてあの日、その女子生徒と、変な感じの男子生徒――その二人が、一度に来た。何だろうと私が見ている前で二人は口を開いた。
「もう来ないから」
男子生徒が口を開いた。一瞬何を言ったのかわからず呆然としていると、続けて女子生徒も口を開いた。
「何か不気味だしね。呪いとかもありそうだし」
そんなのない。私は何もできない。そう、一人ではここでずっといるだけ。それだけなのに。
二人は私の背を向ける。
いやだ。行かないで。
その背中を追いかけたい。いや、追いかける。だが、私と彼らでは歩幅に大きな差がある。それでも必死に追いかける……。
しかし、二人が扉を出た時には、私はほとんど動けていなかった。
無力さを悔やむ間もなく、扉が閉じる。続く、ガチャンという無慈悲な音。いつも聞きなれている音。その音が聞こえると暫く誰も来ないし、私もどこにも行けない。
訪れる静寂。いつものことと言えばいつものことだ。でも、今回のは違う。あの時――彼女が最後に来た後からの静寂と同じだ。
またしばらく一人になるのだ。
そう自覚した途端、寂しさがどっとあふれてきた。
「いやだ……いやだ……」
誰ともなく一人つぶやく。しかし、それにこたえてくれる声はない。
膝の力が抜ける。そのまま床に崩れ落ちた。
目頭が熱くなる。何かが溢れ出す。
その日、部屋からは悲しげな声がしばらく続いた――