37話
柚木の手紙を見つけてから数日が経った。
終業のチャイムが鳴ると、鳴は階段を降りて多くの生徒とは違う方向――旧校舎の方に向かった。
この汚い道ももう慣れてしまった。そして慣れた足で曲がり角を曲がっていく。
そして着いたのは、ある教室だった。今時珍しいドアノブで開閉するタイプのものだ。
それに手を掛けようとした
「鳴じゃない。いつも熱心ね」
一匹の狐が背後から現れた。狐は
「こんにちは狐露さん。そいういう狐露さんも来ているんですね」
その狐は少しバツが悪そうにそっぽを向いた。
今回を狐露に伝えると喜んでくれた。そして雫の方も狐露のことを怖がることなく普通に接するようになっていた。
藍貝にも伝えたが、彼は一つ安心したようにため息をついただけだった。それ以来彼の姿は見ていない。貉にも伝えようとしたが、いくら話そうとしても彼は聞こえないふりを貫いていた。
「さあお姫様がお待ちだよ。早く行ってやらないと」
狐露は狐のまま足を突っついてくる。それに押されて鳴は教室の中にはいった。
中はいつもどおり本棚でいっぱいだ。その中に赤く動く何かがあった。それが鳴達に気づいたようだ。それはとてとてと走ってきて、
「来てくれたんだね、鳴」
雫の頭にはあの時の髪飾りがつけてあった。