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36話

 柚木の手紙には様々なことが書かれていた。

 もう彼女が卒業してしまったこと、もう決して雫と会うことができないということ。

 鳴が全て読み終えると雫はゆっくりと箱の中から残った髪飾りをだした。綺麗な牡丹の装飾がついた小さな髪飾りだ。劣化していた紙とは違い、こちらはほぼそのときそのままの物に思えた。

「カノジョとは、もう会えないんだね……」

 水滴が髪飾りの上に落ちた。一つ落ちるとそれに続いてどんどんと連鎖して落ちていってどんどん髪飾りを濡らした。

「せっかくお願いを叶えたのに。まだサヨナラも言ってなかったのに……」

 雫はどんどん涙をこぼし続けた。無理もない。あれだけ探し続けた『お願い』がただ真実を告げるだけだったのだから。

 だが鳴もあの手紙を読み、あることを決意していた。

「さっきの手紙でカノジョはなんて書いていた?」

 鳴は古教室の窓を開けた。心地よい風が入ってくる。それがこの部屋に溜まった塵や埃をぶわっと舞い上げた。

 雫は手紙を広げた。そしてまだ涙が浮かぶ目で文面を追った。

「悲しいことがあっても楽しく…‥」

 と、そのとき一際強い風が吹いた。窓から古教室に侵入すると、それは髪飾りの上の水滴を吹き飛ばしてしまった。

「そう、だからいつまでも泣いてはカノジョが悲しむよ」

 柚木の手紙に書かれた言葉――来る人来る人と楽しく生きて。私はそんな雫が一番好きだよ――それを実現させる。雫を一人にしない、楽しいようにしてあげる、それが鳴のやるべききことだと思った。

「僕はこれからもくるよ」

 そのためにやるべきことがこれだ。とにかく雫を一人にしないこと。それを守っていこうと思った。

 雫は唖然としていたが、やがて涙を拭いて鳴に向き直った。

「うん、これからもよろしくね鳴!」


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