33話
「ここが書庫……」
翌日、鳴は雫を連れて書庫に来ていた。
旧校舎の方に書庫がある。ここは元々図書室として使われていたらしいが、今の方にできたので、ここは現在書庫として使われていた。
鳴も来るのは始めてだった。
「ここになにかあるの?」
鳴は雫に向かって強く頷いた。
藍貝の言ったことを信じようと思った。鳴の思いをきちんとわかってくれていたようだったから。もう騙すようなことはしないだろう、という思いがあった。それにもし何もなかったとしても、他にヒントはないのだ。ここを探すしかない。
書庫に入った瞬間古本の発する独特の匂いがつん、と臭ってきた。図書室より数は少ないがはるかに古いものがありそうだ。
どこから探っていこうか、そう思いながら書庫を見て回っていた。
と、書棚を見ていると一冊の本に違和感を感じてそこで足を止めた。
一冊だけ本棚から飛び出しているものがある。鳴はそれを引き抜くと中を開き始めた。
「これ、この本よくカノジョが読んでくれた本だよ!」
「じゃあ何かあるね!」
鳴は雫に見せながら一ページ一ページ、ゆっくりとページを捲っていた。本も中盤に差し掛かった頃、中から一冊の便箋が出てきた。元は可愛らしい便箋だったのだろうが、今は色あせてしまっており、
ただただ小さなイラストしか見ることができない。
雫と顔を合わせると、鳴は便箋を拾って中を開けた。中には小さな手紙が入っていた。
おめでとう。これを見つけられると信じていたわ。
近くて高いもの、それが最後のヒントよ
朝霧柚木
手紙にはこう書かれていた。
「近くて高いもの……?」
雫が頭をひねっている間にも鳴にはある確信が生まれていた。
「雫、わかったよ」
自分でも不思議なぐらいすぐにわかった。カノジョが示した場所が。
これはあの場所だ。そして、そこにきっと――
「この手紙の意味。きっとここにカノジョが君に渡したかったものがある」