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30話
時間が無い。
だめだ。これ以上進めてはいけない。
あの”悲劇”は決して繰り返されるわけにはいかないし、そうさせる気もない。
「雫と……あいつと何としても離さなければ……」
彼はどんどん近づいている。予定されてなかった真実に。消さった真実に。
これ以上は知ってはいけない。知るべきではない。人が人ならざる者の領域へは足を踏み入れるとどうなるか。……わかりきっている。もし、それをしてしまえば罰が下る。
止めなければ……
止めなければ……
何としても先手を打たねば。止めねば。これが、彼を救う唯一の方法――でなければまた同じ様に……。