29話
三人で図書室を出た。
図書館が違うとなれば他の場所になる。
その手にはやはりしっかりと本が握られていた。
(やっぱり大切なものなんだなぁ……)
とりあえず柚木の名前が書いていた本は借りてきた。持ってけば一応なにかわかるかもしれないし、何より雫が持っていたがったからだ。
と、雫が本を落としそうになった。慌てて鳴が拾おうとすると、その少し前に別の手が拾ってしまった。雫は自分で拾い上げるとまた危なっかしく本を持った。小さい彼女では少し重いのかもしれない。
「運ぼうか?」
しかし雫は、大丈夫の一点張りで本を離そうとしなかった。ため息をつくと、鳴は仕方なく雫に任せ、自分はまた落とさないように、雫に注意を払っていた。
そのまま校内を歩いていると藍貝にあった。
藍貝にも本の文字を見せた。藍貝はその字をじっと見ていたが、やがて本を雫に返した。
「うーん、さすがにわからないな」
「藍貝さんでも知りませんか」
「朝霧柚木……ちょっとこの人は僕でも聞いたことないなあ……」
藍貝は何かを思い出したように、
「そうだ、貉が呼んでたよ。前のことの続きがなんとかって言ってたけど……また一段落したら行ってね」
そして藍貝はそう言うとどこかに行ってしまった。
やはり誰もわからない。でもまた地道に探していくしかない。
「行っておいで鳴。私はこの子と一緒に帰っておくから」
狐露が雫の手を引いていった。鳴は貉のもとに向かった。
一度、二人の方を見た。気のせいかいつも以上に雫の元気があるように見えた。