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28話
「この人がカノジョ……?」
鳴は雫の言葉を繰り返した。しかし雫はあの字に見入って鳴に気が付く様子はない。
待っていると雫はやっと気がついたように、
「鳴、これを書いたのがカノジョだよ!」
雫は心底嬉しそうだ。小さな両手で大きめの本を大事そうに抱えている。やはりカノジョ――ユキに繋がることを見つけられたのが嬉しいのだろう。それは鳴も同じだった。
だが、鳴にはひとつ引っかかるところがあった。
「ここじゃないってどういうことだろう?」
名前とともに書かれていた言葉――ここじゃない。つまり図書室では何もヒントを得られないということだろうか。ではどこか別の場所があるのだろうか。
雫に聞いてみたが首を横に振るだけで何も知らないようだった。
(また始めからか……)
せっかく見つけたのに。結局はあまり有効なことはわからなかった。しかし少しはわかった。進歩できただけでも十分だ。
「まあ見つけられたから一旦はいいんじゃない」
狐露は雫を指した。見ると雫は嬉しそうに本を抱いていた。