20話
少女は全てをゆっくりと話した。
雫がカノジョと呼ぶ人のこと、その人はずっと雫の元へは来ていないこと、雫はその人から『お願い』を託されていること。そして、さの『お願い』はまだ、叶えられていないこと……。
途中何度か言うことをためらう様な素振りをしていたが、何とか全部を言い切った。
すべてを聞き終えた時、鳴は目の間の少女がそれまでとは全くの別物に見えた。
(こんなに)
こんなにつらい思いをしていたんだ。
誰にも相談できず、手伝ってもらえずに一人ですべてを抱えていたのだ。はたして小さな体は、そのすべてを受け止めきれたのだろうか。
それまで、不思議な少女が、今は様々な困難を乗り切ったしっかりとした
「……ということなの」
「雫、大変だったんだね……」
恐らく自分が理解したのはごく一部だろう。鳴が感じている数倍、いや数十倍のつらい思いをしてきたに違いない。
今なら、狐露が言った言葉のすべてがわかる気がする。ずっと一人だったんだ。孤独を怖がるのも分かる気がする。
しかし、彼女はただ首を振っただけだった。大丈夫だと言わんばかりに。
「それでナルに手伝ってほしいの。
ここに来て、少女がわずかに震えていることに気がついた。教室は少し肌寒い。しかし、それが原因ではないことはわかっていた。
鳴に断られて、また一人になるのを怖がっているのだろう。
狐露と約束した。雫を一人にしないことを。
そして、彼の言葉は決まっていた。
「いいよ。二人で絶対に探そう」
全てが明らかになった今、鳴は雫に憐みにも似た感情を抱いていた。こんなにつらかったんだ。少しぐらい、幸せな目に合ってもばちは当たらないだろう。それにもし、僕にできることがあるなら手伝ってあげたい。
雫はにっこりと笑った。それはこれまでに見たことないような明るい笑顔だった。