18話
鳴のおかげでまた、帰ってこれた。
あの後、貉にこっぴどく怒られたけど、それだけだった。次の日からはいつも通りの、あの本がいっぱいの教室での生活に戻った。今はナルが来て、机で勉強している。
今日は、珍しく本をめくっていなかった。それどころではない。ある決意に揺れていた。ここ最近、何度も問い続けた問題を、再び自分に課す。
(この青年を本当に信じてもいいのだろうか)
ここで決めてしまいたい。これ以上長引かせると結局、何も出来ずじまいになりそうだ。
言ってしまえば、また一人になってしまうかもしれない。面倒だと思われてもう、ナルが来なくなってしまうかもしれない。
今度一人になってしまえばおしまいだ。あの時、自分では何もできないことは自覚した。一人でやろうという考えが甘かったのだ。
私だけではカノジョの願いをかなえることはできない。
ナルの背後に回って、その背中を見た。細身の彼は、決して頼りになるというものでもない。それでも、安心してくれる何かを与えてくれる。
彼に関しては一つのことがよく出てくる。
二階の教室で一人、どうにもできずに途方に暮れていた。これから何をすべきか、どうなるのかも見当もつかなかった。そんなときに差し伸べられた手、そして優しい言葉。
「帰ろう」
数日経った今も覚えている。鮮明に思い出すこともできる。
あの時助けてくれた。カノジョのお願いも同じように助けてくれるのでは?
二つの間で振り子のように揺れる。右にふらふら、左にふらふら、意味もなく繰り返す――そして数十回目の往復の時、やっとその片方の場所で振り子を止めた。
「ねえ、ナルちょっと聞いてほしいことがあるの」