1話
ああ。
「……鳴……」
みんな早いなぁ。
「……丸山……」
僕はまだ慣れていないのに。
「……丸山……くん……」
やっと少し
「……丸山鳴君?」
「あ、はい!」
鳴は我に返って返事をした。そうだ、今はホームルーム中だ。こんなことを考えている場合じゃない。
「すいません、先生」
鳴は担任の女教師は何ともないというように、
「いいのよ。丸山君。あとで私の所へ来るように」
そういうと、彼女はホームルームの終わりを告げた。全員の規則正しく立ち上がる音。そして、同じく規則正しい座る音。
一身乱れぬ規則正しい音。はたして僕はその中に入っているのだろうか。
高校に入学して数日――授業ももう始まった。だが、まだ鳴はこの高校という雰囲気に慣れていなかった。
いや、高校だけじゃない。中学、たぶん小学校もそうだ。こんな新しい環境に慣れるのは至難の技だ。少なくとも一週間、もしかしたらもっとかかるかもしれない。
まだ、時間がかかる。
終わりのあいさつが終わると、鳴はそのまま担任の元へと行った。
「はい、これ」
彼の担任は、鳴に一つの封筒を渡した。そこには大きな字で「生徒会」と書いていた。
「生徒会の人が何か用事があるみたいよ。
「で、これって何ですか?」
「さあ? 私も中は見ちゃいけないって聞いたから」
まあ、生徒会なんだし大丈夫でしょ、と言うとそのまま教室を出て行ってしまった。
鳴は無責任な……とため息をつきながらも、自分の机に戻ると、封筒を開けた。すると、一枚の紙が出てきた。
『本日の放課後、古教室に来るように』
それに隅っこの方に生徒会という文字と、その簡単な古教室やらへの地図が描いていた。
「古教室……?」
聞いたことが無い。入学した手なのだから、当たり前といえば当たり前だが一体どこにあるんだろう。古教室っていうんだから古い教室だろう。
その時、チャイムが鳴った。休み時間も、もう終わりだ。
鳴は慌てて手紙を懐にしまうと、次の授業の準備をした。