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部屋のキオク5

 彼はいつも来てくれた。

 暖かい時だけじゃなく、暑くなっても、そして涼しくなっても毎日扉を開けてくれた。差し込む光が私に希望をくれた。忘れかけていた物――毎日暗闇で、孤独に恐怖していた時には決して手に入らない物。それを彼は少しずつ与えていった。

 もらった私にも、さっそく大きな変化があった。

 一人でいても、それに震えることはなくなった。もう一人じゃないって自信が持てたから。必ず来てくれると、確信できたから。

 涼しさが終わる頃、雫は

 そして、何度も彼が来るにつれて、だんだんとあることを考えるようになった。

(手伝ってくれるかな?)

 カノジョのお願いを。言ってみたらどんなことを言われるだろうか。

 きっと手伝ってくれる。今までの人とは違う。胸を張って言える。こんなに来てくれているのだもの。あんな優しい声をかけてくれるのだもの。言おう。言ってみよう。

 決意の日は、とても寒かった。きっと彼も服を何枚も来て来るだろう――かつてカノジョがそうしたように。

 立っているだけでは凍えそうなので、部屋の隅にうずくまって暖かくしていた。

 遅い。いつになったら来るんだろう。寒い。早くあの光に当たりたい。待った。ずっと待った。辛くはなかった。待つことには慣れている。どれだけかかってもいいよ。だから来て。

 結局、その日、部屋に光が差すことはなかった。

 どうせ何か用事があったんだ。きっと忙しかったんだ。明日には必ず来る。まだ希望を持っていた。来る。必ず来る。

 次の日も待った。来ない。その次の日も待った。来ない。また次の日も、そのまた次の日も待った。でも来ない。

 彼はそれ以来、姿を見せなくなった。


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