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12話
雫の所へは藍貝と交代で行くことになった。
その日は鳴の番だった。授業が終わるといつもの古教室に行った。
教室を出て一階に降りると、旧校舎の道へとそれた。埃が積もった迷路のような道も、もう迷わないで行けるようになった。しかし、慣れない物が一つ。
「やあ、雫来たよ」
鳴が扉を開けると、いつも通り雫が駆けてきた。少し離れて立ち止まると、鳴を見上げて待ちかねた、といった様子で棚の本を指さした。鳴も本を取った。科学の分厚い本だ。それを雫の前に置いてやると、それを開きだす。
その小さな手で開かれているのは、大きな本。この奇妙な光景だけは、どうも慣れない。
それに何をしているのかわからない。何をしているのか――聞いても雫は口を閉ざしたままだ。そうしている内に、一冊すべてをめくり終えた。
「次のとって」
この不安を知ってか知らずか――ただ少女は本を要求する。