部屋のキオク4
それから、しばらくは一人だった。
またあの時と同じく暗い場所でずっと一人。
暖かくなったときに、まれに生徒が訪れた。誰も見たことない顔だ。しかしその彼ら、彼女らもだんだんと来なくなり、最後には一人に戻っていた。
どうしても一人には慣れない。
正直、誰かといる時間より一人の時間の方が圧倒的に多い。それでも慣れない。
ずっとここに居るのに寂しい。誰か来て――叫びたい。でも誰にも届かない。結局こうして待つしかないのだ。
こんなところにいる場じゃないのに。カノジョのお願いをかなえなきゃいけないのに。手伝ってくれないなら、自分ひとりでやるのに。誰にも頼らない。迷惑はかけない。でも暗闇では何もできず、ずっと。ずっと、ずっと……。
カノジョが居なくなってどれぐらい経ったのだろう。カノジョは私のことを覚えているだろうか。わからない。わかりたくない。
ずっと続くかと思えた自問自答の日々に、ある時一筋の光が射した。
「君が……?」
開け放たれた扉からまぶしい陽光が部屋に差し込んでくる。それは薄暗く、陰気な部屋全体を生気で満たした。一瞬まぶしさに目がくらんだ。でも、それは暖かい。とても暖かい。冷たい部屋の中とは大違いの暖かさ。そしてその中から誰かが現れた。
「雫だね。よろしく」
彼は手を差し伸べると、にっこりとほほ笑んだ。