9話
「ナル、何かない?」
少女は一人残った鳴に話しかける。一方の彼は戸惑っていた。
こんな子供の扱いは苦手だ。せめて、何か好きなこととか、藍貝さんの経験ぐらいは聞いておくべきだった。
雫は鳴の言葉を待っている。それが鳴の決断を急がさせていた。
考えろ。どうすればいい。考えろ。この部屋を見回した。何かあるか……あるのは棚の上に整列した小難しそうな本だけだ。
頭を必死に動かしていた鳴は、ふとあることに気が付いた。
「そういえば、君は毬か何か持っていないのかい? よく絵とかで毬を持っているのを見かけるけど」
「捨てた」
「捨てた!?」
「うん。飽きたし重いから」
確かに、あれを持ち運ぶのは不便だと思うが……。だからと言って、そんな簡単に捨てていいものなのだろうか。思案する鳴の元へ、さらなる一言が浴びせられる。
「何か面白いもの探してきて」
雫はその代わりと言わんばかりに主張した。鳴が断ろうとした瞬間、雫がじっとこっちらを見てきた。ただひたすらに何かを訴えるように。
どうも、こんな風にじっと見つめられているのは苦手だ。無視をしても、どうせ僕が折れるだけだろう。結果がわかっているなら、粘るだけ無駄だ。
鳴はしぶしぶ外に探しに行った。