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7話

 その日は部屋に帰ると、そのまま藍貝と帰った。

 そして翌日、鳴は放課後になると、またあの座敷童がいる教室へと足を運んだ。他のメンバーとの顔合わせ、とのことらしい。

 一人で行けるかどうかは微妙なところだった。しかし昨日、あの女子生徒に教えられた順路を思い出しながら慎重に歩を進めた。途中少し道を間違えながらも、なんとかあの教室にたどり着いた。

 そのまま扉を開ける。やはりそこには昨日と変わらない光景だった。

 古い机や椅子。そして無駄に数の多い戸棚と本。しかし、いつもと違うところがいくつかあった。

 中には三人がいる。一人は座敷童、雫。もう一人は藍貝、そして、

「あら、久しぶり」

 なんと昨日、部屋まで教えてくれた、あの女子生徒がいた。やはりその身長は高く、藍貝ですら彼女の鼻のあたりまでしかない。さらに彼女の近くにいる雫と比べると、二倍以上の差がある。いや、今それはどっちでもいい。

「一般生徒には教えないんじゃなかったのですか?」

 鳴は藍貝に抗議した。確かに彼女にはお世話になった。この部屋の場所もしっているようだった。かといって、入れてもいいのか。

「ああ、違うよ。彼女も僕たちの仲間だよ」

 藍貝はしかし、こともなげに答えた。

「妖狐の()(つゆ)さんだよ」

「え……、妖狐って」

「うん、彼女も人間じゃないよ。まあ、悪さはしないから安心していいよ。本当は狐の姿だけど今は変化しているから人っぽく見えるけどね」

 彼女は愛想よく微笑んでいる。いつの間にかその両手に雫を抱きかかえていた。雫は特に嫌がるどころか、むしろ楽しそうに。

(まあ、こんなことは認めたほうが楽だよね)

 昨日藍貝も言っていた。とりあえず認める。そっちのほうがよくわかる。

 鳴は一度深呼吸をした。大丈夫。落ち着いた。

 そして再び狐露に向き直った。

「狐露さん、これからお願いします」

 狐露に軽くお辞儀をした。狐露はそれを意外そうに見た。

 藍貝はその光景を見ると、ふと何かに気が付いたように

「実はあと一人いるけど……狐露さん、貉は?」

 狐露は雫をあやしながら少し考えるようにしていたが、すぐに

「あの子なら今日も引きこもっているわよ。何か新しい実験始めたみたいだし」

 それを聞いた鳴はため息をついた。その人はこんなことがよくあるのだろうか。

「まあ、そのうち顔を出しておくように言っておいてくれませんか?」

 狐露は軽く手を挙げて了解の意を示した。それを見た藍貝は、

「じゃあ、鳴君雫のことお願いね。あ、鍵も渡しておくから出ていくときにはかけて行ってね」

 鳴に鍵を渡すと部屋を出て行ってしまった。

 三人になった。すると狐露が鳴に近づいてきた。どうしたのだろう、と思っていると。

「うーん?」

 なんと、鳴の顔をじっと見つめた。やはり気恥ずかしなり、思わず鳴は顔をそらした。

「何ですか……」

 しかし、狐露は応えない。代わりに納得したように一つ頷くと雫を下におろした。

「じゃあ、私も行くわね」

 狐露も軽く二人にウインクをすると、部屋を出て行ってしまった。

(何だったんだろう)

 まあ、たぶん悪いことではないだろう。鳴はそれきり考えないことにした。それよりも、

「ねえ、ナル。ひま」

 同じく部屋に残った雫の世話が始まった。


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