第1廻:巡廻NO.775
萩原里香
時の巡廻人随一の巡廻人。
これまでに、過去の過ちで現在、未来へと影響を及ぼしてしまったものを全て善と化し、現在、未来の問題を誰よりも多くに解決したといわれる者なり。
『巡廻NO.775、萩原里香。』
西暦27007年。時の巡廻人と言うものがいた。
「はい。」
『次は約、2万5千年前の日本、東京へと行け。出来るだけ早々《そうそう》に終わらせろ。でなければ地球は滅亡する。』
「畏まりました。霧生様。」
『今はお前だけがたよりだ。必ず戻ってくるのだぞ。』
「当然ですわ。でわ、失礼致します。」
パタンと扉を閉めると、先程、霧生と言う男と話していた、萩原里香はふぅ、と溜息を吐いた。
「さってと!行きますかな。」
言うと、里香は伸びをして、ある場所へと向った。
時間飛翔部屋
そう書かれた札のぶら下がる扉を、コンコンッと二回叩いた。
「どーぞー」
扉の向こうから、男の声がすると、「しっつれいしまーす!」と、元気に応え、ガチャリと扉を開いた。
「まーた、お前か。里香。」
「ちっす!紫苑。今度は2万5千年前ね!」
男の名は霧原紫苑。巡廻人を過去や未来に送ると言う作業人だ。
「本当お前ってよく仕事回されるよな〜」
「信頼されてるんだよ!あたし、ここじゃぁ、巡廻人随一の腕前だもん♪」
「だからって、あんま無理すんなよ?しくじるぜ。」
紫苑がそう言うと、里香は「だーいじょうぶ!」と満面の笑みで返した。
「過去に言い男がいたからって住み着くなよ?」
「あたしがそんなヘマするような人に見える?」
「だな、まずお前に寄ってくる男がいるわけねー」
「なんですってーー!!」
過去に行く時、二人はいつもこのような会話をしていた。
紫苑はいつもバカにしたような言い方をするが、実の所は心配しているのだ。
紫苑は今回行く場所を設定しながら里香と話していた。
「よっし、準備完了☆じゃ、仕事終わったらパーッと話そうな!」
「じゃぁ早めに終わらせなくちゃね!あ、勿論紫苑の奢りね!」
準備が終わり、里香は部屋の中心部へと歩み寄り、紫苑にそう言った。
「またかよーー」
不服そうに紫苑が言うと、
「あたしはまだ18で、未成年だもーん♪紫苑はもう23でしょ?」
「あー。はいはい、だからって頼み過ぎるなよ?」
「分かってますーだ、じゃ、バイバーイ」
「またな!」
「ぉう!」
最後に話し終えると、ピーーっと長く音が流れ、光が里香を包んだ。
里香は消える寸前に、小さく手を振った。
「気ィ付けてな。」
最後に紫苑がポツリと呟いた言葉が、妙に部屋に響いた。