同世代と初遭遇
門の中に入ると、すぐ近くにバス亭があった。
立ってる棒といい、書いてる内容と言い、バス亭だ。30分ごとに来るらしい。
…どんなバス来るんだ?
「一応竜車で乗り付けても怒られはしないとは思ったんだが、竜車の速さだと他の馬の迷惑になりかねんからなあ…」
「ああ…なるほど」
基本騎士養成学校って事は、皆馬で動くのであろう。
となると、竜車が馬の進行を妨げるのは十分考えられる。ぶっちゃけ竜>超えられない壁>馬だから、馬が驚いて使いものにならなくなるかもしれない。
それを考えて竜車は門で降りたようだった。
「俺が騎竜士だったらよかったんだけどなあ。ここまで結構遠いから、空飛んできた方が早いし楽だし一人ぐらいなら荷物載せてても余裕らしいし」
「騎竜士?」
「ん、ああ。竜に乗ってる騎士の事な。騎竜自体が希少だから、少数精鋭隊だけど」
「へぇ」
そんなのあるのか。
いや、あるよな。なにかの絵本で竜に乗ってる騎士の絵姿は見た気がする。
そもそも魔術師の家系である俺の家は騎士に関しても基本中の基本ぐらいの内容の本しか置いてなかったからなあ…。
「ああ、そうか」
「ふぇ?」
「お前騎竜士になればいいんじゃね? 騎竜士の一番難易度高いところは騎竜が懐くかどうかだし。気難しい陸竜にあれだけ懐かれるお前なら、騎竜士になるの有な気がする」
おー…。
それは考えてなかったな。勇者PTって普通に馬移動なんじゃないの?
竜が混ざるのって正直どうなんだ?
「というかサルート兄様、まだ騎士になれるかも決まってないのに今から入る部隊の話です?」
「目標がないと養成学校はつれーぞ。朝から晩まで規則に縛られるし、遊びに行くにしても近くに村がねーし、そもそも女も少ないし」
「……」
最後のはいらない気がする。
そりゃあ中身は29+12才なので女性に興味がないと言ったら嘘になるが、そもそもがっつく年齢は過ぎ去っている。
…。
って、一番好奇心強い時期じゃないのか12歳。駄目だ同世代と話してないからどこまでを基準にしていいのか全く分からない。
やばい。
「そもそもお…僕は、同級生と仲良くなれるかが心配ですよ…」
「あ? それは大丈夫じゃねーか?」
「?」
「お前礼義正しいし」
ずる、と滑りかけるのを我慢した。
俺はむしろ子供子供出来ないのでそっちの方が心配なのだ。
とはいえ楽観的を絵にかいたようなサルートにその微妙さをわからせようというのが土台無理な気もしてきた。
…剣の腕はいいし、頭も悪い気はしないのになあ…。
「お、きたきた馬車」
「おおー…おっきい」
バスじゃなくて大きい乗合馬車っぽいものが来たので会話を一度打ちきり。
俺は乗り合い馬車に乗る事に集中した。
…思えばコレ、前ふりだったのかも。
☆
そして馬車を降り。
目の前には、同じ歳くらいっぽい男女が、3人。
「遅いよ!!」
まず叫んだのは俺と同じくらいの男の子。
身長は俺より高いが、ツンツンした髪の短さの下にある顔は幼さを残していて、まさに少年、と言う感じだ。
いっちょまえに帯剣していて、俺をにらみつけている。
…What?
俺は誰とも待ち合わせしてないし、そもそも保護者が横にいるので手続きもこれからなのですが誰かと間違えてませんか。
「何ぐずぐずしてたの!? もうチーム分け始まってるんだから!」
甲高い声で喋るのは女の子。
俺より年下なのか、その背は頭半分ほど低く、声も高い。
ただその目だけは非常にきつく、意思の強い瞳だ。
こちらも帯剣しているし、ハッキリと俺を咎めていた。
(…って言うかそもそもチーム分けって何)
「…二人とも、彼が吃驚している。落ちつくがいい」
最後に喋ったのは見た目は一番最年少なのに言動が最年長な感じのする女の子。
いや、ちょっと女の子と言うにはこちらも瞳の強さが尋常じゃないな。
まだ交渉の余地はある気がするが、恐らく彼女が一番強い気がする。
叫ぶ男の子と女の子を冷静に捉え、喋る口調はきりりとしている。
…って言うかカオスだね、うん。
「あー…わっすれてた…」
「え?」
サルートが悪い、と頭をかきながら言うのに俺は振り返る。
ごめんと手を合わせる彼に嫌な予感しかしない。
「伯父上の説得に時間かかりすぎてさー、お前の入学1週間遅れてんだよね。彼らは多分お前の同室者だよ」
「はあ」
遅れてたのか。
道理で竜車とか使うはずだよね、初めての外出なら馬で村寄りながらゆっくりとかでいいはずだものね
今気付いた。っていうか最初に言えよそれ。
相変わらず肝心なことを言わないサルートである。もう諦めた方がいい。
「お前のせいで俺ら授業遅れてんだからな!?」
「大体時間を守るとか超基本よ!? あんたいないだけで全員減点されてんだから責任取りなさいよね!!」
そして大体事情もわかった。
うん。
正直ごめんなさい。
学校についてまず俺がした事。
…謝ることだった。