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経過途中

元々の才能か、はたまた勇者であるからなのか。

ダイチの成長っぷりは"凄まじい”の一言に尽きた。


一般に、いくら下地があったとしても剣の道はそれほど甘いものではない。

まず、倫理観が邪魔して魔物を斬るのにも一苦労である事が多い…それは常識だ。

俺も騎士学校に入って一番ネックになったのが、慣れるまでの時間だったし。


ダイチはそれを覆すように、修行にのめり込んでいた。

最初こそファティマの容赦なさに撃沈していたが、そのうち率先して動くようになり。

1か月でファティマの基礎レベルを超え。

3か月でハッキリ言ってついて行けなくなった。俺が。


…運動神経がいいってレベルじゃないぞ!


今ではファティマとの打ち愛が始まると、もう誰も手がつけられない速さにまでなっている。

ちなみに前勇者が時々遊びに来てるのは御愛嬌だろうか。

楽しそうに殺り合う(としか言えない)彼らに若干の羨ましさは感じるものの、当然俺が手を出せるはずもなく。

俺は早々に彼らの間に入るのを諦め、今はトリスのみゆき指導にちょこちょこ口を出す程度にしている。


正直俺いらない子すぎない?

と思ったのが、そうでもなかったのが魔法の指導だった。


まず第一に、トリスは教科書通りの教え方が出来る。

これは首席でもある彼としては当然のことだ。

ただ、これには問題がある。

みゆきには必要のない技能まで教える事になるため、教科書通りでは効率が悪すぎるのだ。


具体的に言うと、指揮等の能力は基本は必要ない。軍隊引きいるんじゃないんだから。

神殿への忠誠も必要ない、なんでそんなもの義務過程に入れた。

支援オンリーといえども、攻撃魔法0では身も守れないため、攻撃魔法も若干は覚えなくてはならず、その選定も必要になった。


この辺りの匙加減、ここらが俺の出番だった。


「実践がないってこんなにも響くんだな…」

「す、すみません…」


俺は騎竜師団の斥候として、ぶっちゃけ思いっきり前線をうろついていた方だ。

当然その後の魔物討伐での魔術師師団の攻撃や、指揮なんかも見ている。

地図が頭に入っているのでどのように追い詰めていたか、なども見ていればわかる。


対してトリスは指揮官に近い処にいたとはいえ、ほぼ後方待機。

酷い時には魔法一発すら打たずに撤退すらしたことがあるらしい。

つまり、絶対的な経験不足なのだ。

そしてそのままあのサルートの失踪したあの出来事に巻き込まれたのだから、結果は推して知るべし。

なんでこいつ何もできないと思いこんでるの、と思っていたが背景を知ればわかりやすいくらい自明の理だったのだ。


それでもその後頑張って出来る事はやったらしいのだが、そこはそれ。

研究者として、また魔力の強い者として常に後方にいる事を強要されたがために実戦経験は結局殆ど積めず。

勇者PTに選出される事で神殿その他の指導を受けれるようにもなったけど、父の言いつけによりこれも警戒しながらの師事になり結局中途半端。


みゆきに教えながら、実は一番スキルアップしたのはトリスなんじゃなかろうか…。

と思うくらいには、二人共に俺が教える羽目になったのは言うまでもない。

まぁおかげで切磋琢磨、みゆきもかなり魔法を使えるようになったのは僥倖と言えよう。


そうして半年たったある日。

俺たちは一通の手紙を受け取る。

差出人はユラ・カイラード。



父からの、召集の手紙だった。






「魔物退治の合同実践、ですか」

「ああ。勇者が現れた事で士気はあがっているものの、神殿にいないって事で騒ぎになったらしくてな。そこで父上宛に協力要請が飛んで来た、らしい」


手紙の内容は、魔の森ではなく、周辺の魔物討伐に対しての支援要請。

さすがに魔の森の魔物討伐となると難しいと判断されたのか場所は国境付近ではなく、ここからそう遠くない場所だった。

恐らく、魔物の量の間引きの手伝いだろう。

魔の森の活発化が始まってからというものの、魔物は増加の一途をたどっていた故に、国内全体での間引きはすでに慣例行事化しているからな。


「総指揮は第二師団団長 タクラ・ソーガイズ」

「!」

「この辺りは第二師団の指揮下だったか…?」


第一師団と違い、第二師団の方が遠方に出る事は確かに多い。

ただこの辺りは本当に辺境なので王都から来るとなると相当の距離があるし、地方にいる領主軍等もいるはずなので、ちょっと意外とは言える。


「………」

「…どうしたファティマ」

「いや…まさかな…」


言わずもがな、タクラはファティマの兄だ。

確か15歳近く離れているはずなので、結構いい年のお兄ちゃんである筈だが…。

ああちなみに二人っきりで話した事は、ない。

ファティマ本人と話したのすら久しぶりだったぐらいだしな。

基本第二師団と一緒になる時は第一師団との大規模な合同作戦の事が多く、殆ど接点はなかったのだ。


「何か気になる事でも?」

「いや…」


ファティマの歯切れが何故か悪いので首を傾げると、彼女は溜息をつく。

明らかに何か隠している。

だが、様子からいって気が重い、ぐらいのレベルに見えるが…。


「兄上は過保護でな…」

「過保護…?」

「ああ。…様子見に来たんじゃないか、と思ったんだが」


……?

魔物討伐は言わずもがな、国家事業である。

国家事業使って、妹の様子見、だと?

それ過保護で済むレベルなのか?


「その可能性、あるのか?」

「兄上ならやりかねん」


マジですか。

なんだろう、嫌な予感しかしない。


「まあ、お役目第一で動いてくれるとは思うのだが…その…」

「?」


ちらり、とこちらを見る目にまた俺は首を傾げる。

んー…と?

俺が何か?


「いや、なんでもない。兄上との連絡は、私がやろう。勇者たちの世話はユリス、頼む」

「ああ。それは任せとけ」


露骨にそらされた言葉に、俺は続ける言葉がなくて。

何か予感を抱えながらも、ファティマの言葉に頷くしかできなかった。

さー、フラグが立ったぞー(棒)


注意:感想で指摘がありましたが、打ち愛は個人的にそのままにしたままの誤字です。そのままお読みください(ぺこり)

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