竜も当然いる世界です
竜かわいいよ竜。前回が長かった分今回は短いです。上手く区切れない作者のせいです。
そんなこんなで1カ月。
サルートに自分の能力が知られてからすぐ、俺は騎士養成学校に入れることになった。
何故か?
それは、魔術師養成学校からの要請がとうとう抑えきれなくなったからだ。
俺の身の上をおさらいしてみよう。
[神具持ち=神の寵愛持ち][魔術師家系][知能は神童レベル]
…うん、実は5年も前から(実際は入れるのは10歳からだけど)魔術師養成学校から入るように言われていたらしい。
だがしかし、俺は魔法の使えない身。
それを言えない俺の親父は必死にその事を隠し、まだ早い…まだ早い、と断り続けていた。
しかし。
弟はあっさりと入学。
その時点で誰もがおかしい事に気付き…そして王に、召喚されて白状させられた、とのことだった。
そこからは、まあ。サルートから俺の希望を伝えられていた現騎士団長の叔父上が父上を説得し、入校を許された…のだ。
正直上の人は大パニックだったらしい。そりゃそうだ。魔力値0の魔術師とか聞いたことないもんな。
俺が外に出ないのは病弱だから、とか。
魔力が強すぎて魔力病にかかっているからだ、とか。
実はなんだかえらい病弱薄幸設定(!)にされていて、それを親戚一同全員で黙認していたんだって言うから恐れ入る。
俺から見てそんなに悪い父母には見えないんだが…。
父と母は何を恐れて、俺を世間に出さないようにしていたんだろうな。
何度か聞こうかとも思った事があるのだが、城で顔を合わせるたび伏せる目や、悲しみとも怒りともつかない微妙な表情で俺を見るにつけ俺も聞く事がはばかられ。
ここ数年はぶっちゃけ弟の誕生日や、俺の誕生日や…イベントでしか顔合わせをしていなかったから、わからない(ちなみにパーティ的なものは元々大の苦手なので遠慮させていただいていた)
そんなわけで俺は生まれて12年。
初めて、外に出たのだった。
☆
(すっげぇー…ファンタジーだわ…)
断言しよう。
異世界だった。
惑う事なく、異世界だった。
まず移動手段。
俺は当然のことながら、城の中で乗馬はやっていた。騎士になるんだったら当然だが、移動手段として超ポピュラーな馬は、当然乗れる。
乗れるって言うか、俺は全般的にこの世界の動物に愛されてるらしいので、馬に乗ると大喜びされて暴走されるレベルだったり鞍なしでも乗れてしまうレベルだったりするのだがそれは置いておいて。
騎士養成学校は馬では3日ほどかかる、遠くの場所だった。
よって用意されたのは『竜車』
竜車ですよ皆さん竜車!!!
ドラゴン!!!
と言ってもプチ? と言いたくなるくらいの、馬よりちょっと大きいくらいのトカゲっぽい感じの竜ですが。その名も陸竜。色はまちまち(交合で色が混ざるみたいで一定の色をしてない)。
ちなみに海竜は船を動かすもちょい大きいクジラくらいの竜らしい。おおう異世界。
ちなみに空を飛ぶ奴らは普通に竜。で、騎士が乗るのは騎竜という種類らしい。陸竜に翼がくっついてる感じ。
知識としてしか知らなかった竜に乗れるとは…俺、生きてて良かった…!
見た瞬間に目がハートマークになった俺。
次の瞬間した事は、陸竜に突進だった。
「おい坊ッちゃん…! あぶねえ!」
慌てる御者が横目に見えたが、ぶっちゃけ止まれる気になれず。
一直線に距離を詰め、陸竜を見上げてみる。
つぶらな目! なんか目がすっげぇきらきらしてる!
…と。
次の瞬間、べろん、と舐められた。
「は…?」
「あー」
くすぐったくて身をよじるが、またべろんと舐められ。
きゅー、と陸竜が鳴く。
やべぇ声までかわいい。癒し。超癒し。ちなみに俺の前世でのペットはカメレオンです。
奥様の趣味だが。
「陸竜がこんな声を出すとは…」
「神の寵愛すげぇなー」
感心したような声と、サルートののんびりした声が重なる中。
俺は飽きずにしばらく舐められ続けていた。