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発覚

注意:脇役の恋愛がお嫌いな方には適さない内容になっています。

話の展開上必要ですので苦情は受け付けませんー。

遠征からは昼過ぎに帰ってこれたので、俺は身支度を済ませてそのままクララを訪ねることにした。

女子寮に訪ねるとなると、それなりの覚悟がいる。

何か問題があったら…と言われるかと思いきや、寮長にクララを呼んでもらうように頼むと、彼女の返答は…。


「……部屋に来てほしいそうです」

「えっ!」


寮内なのに男は行って大丈夫なの?

そう疑問に思ったが、あっさり通されてしまい俺は首を傾げた。

傾げたがまあ、気になっていたのでそのまま素通りする。


寮内では誰にも会わず、彼女の部屋までたどり着いた。


「…久しぶりだね、ユリス」


ドアに鍵はかかっておらず、そのまま入ると。

薄暗い部屋に彼女は、ぼんやりとベッドに座ったままそこにいた。


強烈な違和感。

彼女が彼女でないようなその表情に、俺は足を止める。


『きゅい?』

「ノエルも、久しぶりね」

『きゅい!』


ノエルが嬉しそうにクララのもとに飛んでいく。

抱きついて行くかと思ったが、ノエルはそのまま彼女の膝上に乗ると、そのままお腹のあたりに顔を寄せている。


『きゅー♪』

「…そう、わかるんだ」

「!?」


よく見ると、少し…膨らんで、いる?

"それ"に気付いた俺は、馬鹿みたいに吃驚した顔でいたのだろう、ぽかんと口を開けたまま固まっているとクララがぷっと吹き出した。


「やだ、なんて顔してるの、ユリス!」

「え。だって…」


そりゃそこまで仲が良かったわけじゃないんだけど。

彼女が誰かと付き合っているかなんて、聞いた事がなかったから。

恋愛するのが苦手だと言っていた彼女が恋人の噂を聞く前に一足とびにその状況になっているという現実に、俺は瞬きする事しかできない。


「……わかっちゃったよね?」

「え、ああ。まあ」


お腹をいとおしそうに撫でるその仕草。

俺はそれを、見た事があるのだ。


―――――――――――早く、生まれてこないかなあ?

―――――――――――ゆきちゃんに、似てるといいね?


ふ、と思いだしたその過去の映像がクララに重なり。

少なくとも彼女は、その相手を想っているのだろう、と言う事までは見当がついた。

問題は……。


「……クララ、未婚だったよな?」

「うん」

「なんで…」


言い淀むと、クララはふわりと笑う。

それがあまりに儚げで、消えてしまいそうで、俺が一歩近づくと。

それを制するように彼女は、口を開く。


「……結婚はね、申し込まれてたんだよ」

「そ、そか」

「遠征が終わったら皆に言おうって、そう、二人で決めてて」


(――――遠征?)


その言葉に、ハッとする。

まさか。


「……帰って来ないなんて、思ってなかったから」

「クララ…!」

「どうしよう、どうしよう、って思ってたら、この子がいるのに、気づいたの」


遠征。

多数の死者を出した、あの遠征には。

未婚の騎士も大勢いた。


「……これからどうするんだ?」

「……実家には戻りたくない」

「どうして?」

「ユリスには話してなかった、よね。座って、話すから」


真剣なその表情に。

俺は一つ、頷いた。





「…私の家はね、魔力って言う魅力まものに取りつかれてるの」


クララは、ノエルを抱きしめながら静かに話し始める。


「ユリスは、地方貴族がどうやって中央に取りいるか知ってる?」

「…いや」

「少しでも魔力の大きい子供を産んで、中央の貴族に嫁がせるんだよ」

「……」


言われた内容には心当たりがあった。

地方貴族の娘でも、魔力が強ければいくらでも嫁ぎ先がある、と。

美貌より魔力が優先されるこの国では、結構そういった話があるのは知っていた。

知るようになった理由は、思い出したくもないが。


「…私はね、そんな魔力重視の家の、長女として生まれたの」

「……」

「そして最初から、いらない子として扱われたわ」

「!!」


語られる内容は、酷いものだった。

貴族の娘でありながら、扱いは侍女以下。

アルフと遊ぶ事が出来たのも、彼女は貴族として扱われていなかったから。

それでも周りの体裁を気にして、ある程度の自由はあったと言う。


「騎士学校へ入れた理由はね」

「……」

「少しでも魔力の高い男を捕まえるか、身分の高い男を捕まえるかしろって言われてたからなの」

「…」


恋愛が苦手だと言っていたクララを思い出す。

彼女にとって恋愛は、親の道具でしかない事を知っていたからなのか。


「…ユリス、ここに入れたの不思議だと思わなかった?」

「え。ああ、寮なのに出入り甘いなって」

「逆だよ。私の両親から、ユリスは通されるように言われてるんだよ。ユリスは魔力はないけど、血筋的に魔力が高くなる可能性があるし、身分も高いでしょう?」

「……」


まさかそんな理由と思わず、目を見開くと。

ごめんね、とクララが謝ってきた。


「どうしていいかわからなかった時にユリスが来たって聞いて…思わず通してもらっちゃった」

「いや、それは構わない。クララの事がずっと気になってたから、むしろ話せてよかったよ。通された理由は吃驚したが」

「……仲良くなったのは身分が理由か、っていやがられるかと思ってたから、ずっと言えなかったの」


辛そうに語るクララに俺は首を振る。

このくらい、今更だ。

大体、俺は彼女に秋波をかけられたことなど一度もない。

彼女の意思と実家の意思は違う、それくらいはわかる。


「気にするな」

「ありがと。…それでね、なんで実家に帰りたくないか、って理由の方なんだけど…」


彼女は遠い目になった。


「お腹、触ってみればわかるかも。はい、手」

「え…」


いくら妊婦とはいえ、妙齢の女性のお腹触るんですか…。

戸惑ったが、クララは真剣だ。

そっと手を伸ばし触れてみると、瞬間にびり、と何か電流みたいなものが流れた。


「…う、わ」

「感じる?」

「……すごい魔力だな」


遠い記憶。

トリスが生まれる前に一度だけ、触れた事があった。

あの時と全く一緒じゃないか、これ?


「……こんな魔力のある子、あの家に連れて帰りたく、ないよ」

「そういうことか…」

「うん。絶対離されて、あの家にいいように使われてしまう。だから、嫌なの」


語る彼女は真剣で、一点の曇りもない。

既に子供を守る母である彼女の姿に俺は一瞬見とれて…。

次の瞬間、何かハマる音を感じた。


「…っていうか、待って…」

「え? 何?」


魔力の高い子供。

遠征で死んだり行方不明になっている人物の中で…クララと接触がありそうで…。

魔力の高い人物???


「……この子の父親って……兄、様?」


クララの頬がバラ色に染まる。

…え、うっわ。

マジで!!?!?!


「わ、わかっちゃうんだ…」

「え、だって、こんな魔力の高い子供が生まれる可能性ある人間って…該当が兄様しかいないよ…」

「突然変異かもしれないじゃない!」


いや、その顔でバレバレですから。

というか、兄様が遠征前に言い淀んでたのってコレ!?

ちょ、なんで、いつの間に!?


「あ、あうう…恥ずかしいからユリスには言わないでって言ったのに…」

「いや言われてませんから。思い当たる事があっただけで!」

「そ、そう?」


つか…これ、俺一人の手じゃ負えないだろ内容的に…。

後知ってそうな人は…と考えて、一人だけ思い当たった。


「とりあえずこれからどうするか、だけど」

「う、うん」

「とりあえず叔父上に相談しよう」

「え、え、サルートのお父さんに?」


どうして? と首を傾げる彼女に、俺は何言ってるんだと思う。


「……叔父上にとっては初孫だよ? 知らせないわけにいかないし、あの人ならなんとかしてくれると思う」

「え、でも…そんなのめいわ…」

「迷惑じゃないから!!! 俺にとっても大事な兄貴分の子供なんだからね」


遠慮しようとする彼女を、俺は遮る。

って言うかどう考えても結婚する前に手を出した兄様が悪いだろ!!!

いやまあ、この世界避妊とか考えてないから出来婚多いんだけどね……。

よくよく考えたら兄様32だし普通に適齢期すぎてるくらいなんだよね……。


「とりあえず、厚着をして行きましょう」

「え、どこへ?」

「叔父上は基本的に家に帰る人なので、直接行って問題ない。何度か俺も泊ってるし、俺に任せて」

「そ、そうなんだ…」


及び腰になるクララの手を引いて、俺は一目散にカイルロット家までノエルに乗せて運ぶ事にした。



と言う事でサルート&クララカップルでした。

学生編から結構伏線に出てきてましたが気付かれた方はいらっしゃいましたでしょうか?

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