表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力の使えない魔術師  作者: 高梨ひかる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/89

作戦会議

「ユリス! どうした!?」


いつもより早すぎる帰還に察したのだろう、サルートが俺の着陸に合わせて近くへ駆け込んできていた。

剣は結局燃やし、ある程度索敵だけして視認せずにもどってきた。

あの黒い靄は、どう考えても危険だ。

しかも、あれが何かわからなかったから怖かった。


「ちょっと、変なものに会ったので一時帰還しました」

「変なの?」

「はい」


形状、斬った後の変化。

どれをとっても俺の記憶にないものだ。

黒い靄がかかっていた剣は、なるべくなら靄だけ焼けないかなーとブレスを弱めにしてもらって焼いてみたのだが、もろくなっていたのか速攻で全壊してしまい、手元にはない。

つまり証拠がない状態ではあるが、俺は身の安全を取った。


…あれは絶対ヤバイ。


第一師団と一緒だったのは重畳だった。

これが他の師団だったりすると、俺の意見自体が通らなかった可能性がある。

第二師団の団長は、なんというか微妙なんだよな俺を見る目が…。ええと…あれですか、あれですよね、うん、第一師団相手で良かったよ…。

俺は無実ですお兄様。


「黒い弾丸っぽい魔物と、黒い靄?」

「ええ。ただ俺にそう見えた、だけなので。実際上の形は違うかもしれません」


事が事なので、叔父上のテントに入り込み、サルートと会話する。

叔父上はいつも通り落ちついているが、若干表情が厳しい気がする。

叔父上は戯言だとか妄想だとか言うタイプではないので安心して報告できるが…これ、外の魔術師に言ったら面倒な事になりそうだよなあ…?


「すごく嫌な気配だったのか?」

「ええ。魔力はさほど感じなかったんですけど…なんていうか、残った剣が完全に呪われたような状態に見えました。さすがにあれが動いたら怖いので、剣に馴染んでしまった時点で焼いてしまいました…」

「うーん…ユリスはなんか昔から、変な見え方してるっぽかったしなあ…」


サルートが首を傾げつつ、思案している。

俺は持っていた地図と紙に、遭遇した物体と距離を書きつつ、剣がどんな形状になったかも記して行く。


「…なんか気持ち悪いなこれ」

「ええ」

「ユリス、前にもこういう靄ってみたことなかったのか?」

「前…ですか?」


思い出すのは遠い記憶。

生まれ変わる前、神様に見せられたあの大陸の様子。


「…魔王のいる大陸って、こう言うのに包まれてません?」

「は? 聞いたことないが」

「えっ!!」


マジか、俺は誰にでもそう見えるのかと思ってた。

魔王のいる大陸はそもそも勇者PTしかたどり着けないので有名で、詳細書かれてる本も殆どなかったんだよなあ。

かろうじて英雄譚で出てくる程度。

魔の森は広すぎて、実際の大陸はまだ見えようもないし…いや、もっと高く飛べば見えるかなあ…。


「…」

「…」


ち、沈黙が痛い…。

何か…何か手を…。

あ、勇者の日記の本に確か靄がどうのか書かれてた! 思い出した!

勇者には黒い靄が見えるとかだっけ!? って俺勇者じゃねぇ。

でもそれくらいしか思い出せるものが……!


「え、っとあの…。300年ぐらい前の勇者の日記で、魔大陸に攻め込んで魔王を打ち払った、っていうの…ありました、よね? あの日記の記載に、魔王の大陸は黒い靄に包まれていて何も見えず、勇者の資格を持つもの以外は誰も攻め込む事が出来なかった…って記述が、確か、あったかと」


しどろもどろになりつつも、意味が通じるようにまとめる。

冷や汗が出たが、無難な回答を出来た、と思う。

いや、まあ。

サルートなら生まれる前に見ましたとか言っても多分信じてくれるような気はするけど、さ。


「そっか、ユリスは俗説とかには疎いんだな…」

「へ?」

「俺も魔の森と大陸の境界線にはいったことないが、有名だぞ? 大陸へ通じる境界線には、人のはいれない結界があって、はいる前に入口へ引き戻される、っていうの。靄とかは聞いた事がない」

「へえ…」


迷宮の森みたいな感じかな?

結界があると入れなくて、いつの間にか入口に戻っちゃう、という。

そもそも魔の森に入る事自体が危険とされてるから、そういった魔の森の事象についての本までは読んでなかったなあ。魔の森から出てくる魔獣詳細大辞典は記憶したんだけど。


「それはともかく、だ」

「はい?」

「何故それが出てきたか、とかはわからないんだよな?」

「わからないですね。強いて言えば唐突に現れた、と言う感じでした。それまでは索敵しながら動いていたので、もし何かに引っかかっていればその時点で気付いたと思います。気付かなかった、と言う事はノエルの索敵にひっかからないのかもしれません」

「んー…竜の索敵と魔法の索敵は違うからな…。ユリスの話で言えば、そこまで速度が速くないみたいだし早めに察知できれば近づかれる前に撃ち落とすなり焼くなり出来ると思うんだが…」


とんとん、と書かれた剣の上をサルートの指が叩く。

俺が対処できる程度の速度なので、当然一介の騎士なら斬る事は可能に思う。

問題は切った時に靄が剣に移るのであれば、着弾前に火で燃やすのが有効だ、ということだろう。


「大体ユリスが切れると言って他の人間が切れるかはわからんし」

「へ!?」

「ああ、その問題があったな。魔法の類の可能性がある」


叔父上の台詞に思い当たり、俺は目を丸くする。

そうか、魔法を切ってる可能性があるのか。


「魔法陣っぽいものはなかったのですけど」

「使い魔ならば召喚時しか恐らく魔法陣は出ないだろう。後見える法則も確か不明だった気がするが?」

「ええとまあ…おっしゃる通り、です…」


そう。

そもそも実習の際などで魔法陣が見れるようになったため、俺は誰かが魔法を使う時には必ず見るようにしている。

その結果、わかった事はかなり多く。

一つは魔法陣がいつ消えるか不明、ってことだ。


例えば風の加護。

これはかかってから消滅までに3時間程かかる。当然かけ直せば持続する。

で、陣が出るのはいつかと言うとかけた時のみで、効果消滅の時には出てこないのである。

勿論出っぱなしでもない。


それに対して攻撃は着弾した後も威力が消えるまではずっと陣が宙に浮いている。

やった事はないが設置型の火炎弾などなら、効果途中でもぶった切って消滅させる事は可能だと思われる。

…法則性は多分本人の魔力が使用された時…だと思うのだが、使い魔は魔力の塊とも言われるので召喚している間はずっと陣が出ていないとおかしい。

が、珍しい使い魔使いを稀に見る事があっても、特に陣っぽいものは存在しなかったのだ。

謎の法則である。


「しかしここで撤退はあり得んし、気をつけながら進むしかないんだよなあ…。お前が見た魔物が街中に出てくると非常に困るから、森の入口とはいえそこまでは進んで退治すべきだ」

「森に入るんですか?」

「入口付近のは大体掃除したからな。ある程度の位置までならば、後ろを確保しつつ動ける」

「そうですね」


大規模討伐のため、かなりの疲弊はすでにある。

この上森の中にかなり進むと言うならば反対するが、平和を保つためにもある程度は進軍しなければいけない事も従事者には話されていたのでここまでは予想範囲だ。

問題は見た事のない魔物がいると言う事。


「せめて魔法の索敵に引っ掛かればノエルが焼けると思うんですが…」

「数の総数も不明だが、小さいみたいだし瞬く間に街の中に入られたらまずい。…そうだな、ユリスはちょっと嫌かもしれんが、索敵が得意な魔術師が確かいたはずなんでそいつに頼んでみるか…」

「…」


何故俺がイヤ、で名指しされるのか。

嫌な予感しかせずに見返すと、サルートは非常に苦笑している。

…あー…うん―…?


「ちなみに俺もめっちゃ嫌われている」

「ぶ。ある意味非常に勇者ですね」

「口が悪いし腹は立つが、索敵って面ではすげー優秀。ただし攻撃力は期待するな」

「……」


…索敵特化とは珍しいなあ…。

しかしまあ、情報は力なり。

それを重視するサルートは正しいと思うし、苦笑してるって事はサルート自身はきっと嫌いじゃないんだろうな、そいつの事。


「後そうだな、そいつが索敵するのに、恐らくノエルが後ろに乗せてくれんだろうから他の奴に頼むしかないなあ…」

「ああ…じゃあクララでお願いできますか」

「…なんでクララだ?」


心なしかサルートが値踏みするようにこちらを見ている。

いやだなあ、まだ疑ってんのかな俺とクララの仲を。

誤解は解けたと思ってたんだが、2年近くの間で俺の周りにいるのはクララとアリスばかりでアリスとは恋愛のれの字も見えない事から気にされてるっぽいんだよな。


「竜同士が連携してくれないと逃げれないんで…」

「ああ。そういうことか。まあ竜を操れるという意味ではあいつも優秀だしな…」


何故か思案しているサルートに俺が首を傾げる。

まだ何かあるだろうか。


「…二人増えるならもう一人増えるのも同じだな。ノエ、俺も乗せてくれ」

『きゅー?』

「え、兄様もですか」


そりゃまあ、ノエルはサルートを乗せてくれるが…何故?

ついて行きたがる理由がわからなくて傾げていた首を逆に倒すと、サルートがゴチ、と俺の頭に拳を入れた。

…い、痛い。


「お前な…本来なら毎回ついて行きたい危険レベルなんだぞ? 今回は他人あしでまといがいる以上、俺がある程度フォローしについて行くしかないだろ!」

「ふ、ふぁい…」

「全く。お前はいつも危機感が足りない!!! なぁノエル」

『きゅー!!』


全面同意するノエルにショックを受ける。

え、俺危機感とかいつも持ってます…よ???

ってかなんでさっきからサルートはノエル懐柔してんの? 外堀埋め!?


「と言う事で、後の処理はお願いします団長ちちうえ

「…ん、ああ。面倒なのは任せておけ。行って来い」

「はい」


いやそこは息子止める処じゃ!?

叔父上があっさり許可を出してしまったため、次の偵察はサルートが指揮を執る事に決定し、出発は明日になった…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ