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兆し

勇者召喚はなぜ行われるか。

それは…魔王が現れ、対立する故に。

だが召喚をするきっかけは…神子以外は知らないと言う。


そして召喚を神子が行う前に。

『兆し』は、現れるのだ。






その知らせは、俺の卒業間近に俺のもとにたどり着いた。

【魔の森の活発化】…。

魔王―――神様に言わせれば【敵対者】の―――現れる、前兆の一つ。


俺の年齢は、まだ17歳。

卒業してすぐ18になるが、まだ…神様と約束していた時期には数年ある気がする。

何故、この時に、この知らせがあるのだろうか。


魔の森の活発化を受けて、騎竜師団は今他の師団の助力を受けつつ、各地を精力的に回っているのだと言う。

俺は近衛所属になるのだが、あくまで見習いの身のため地方への派遣に関しても回されるかもしれない。

そのための、学生への告知なのだろう、教師に告げられたその現実に周りの同級生は一気に騒々しくなっていた。


近年の魔獣は増加の一途だったが、まだ騎士団で処理できる範囲だった。

今回の問題は、人の国だけでなく他の国にもかかわる重大な問題だ。

魔の森を超えれば、魔王がいるとされる黒い靄のある大陸があるのだから。


ちなみに魔王との対決は、いつも同じ場所とは限らない。

互いにぶつかり合うため、魔の森の中で決戦があったのも一度や二度ではないらしい。

魔の森からこの国までにもいくつか国や都市があり、魔の森に接しているのはあくまで一部分。

隣接している他の国は魔の森から侵略され、潰されたこともある…らしい。


魔の森に接していると言う意味ではこの国が一番大きい。王政だし、国内に有数の魔術師を持つ大国だ。

ここ最近は勇者が勝っていてすぐ押し返すため国自体が揺らいだ事はないらしいが…。

そういえばあの神様、今回は相手が本気になっちゃって…とか言ってたよな。

今までは本気じゃなかったからこっちが勝っていた、って事なんだろうか。


…相変わらずわからない事だらけ、だな。


神具を日の光にかざすと、昔の指輪だったころとは違ってキラリと光を吸い込んでいく。

神具が神具と言われる由縁…光を吸収して、夜に光る仕様なのはどうなんだろうな。意味あるのか。

転生前、必要だと思われる事を何も聞けなかった事が不甲斐なくて仕方ない。

神子とやらにあえば、神様が俺に伝えたかったこともわかるのだろうか。


「きゅー?」

「…あー、でも、なんか嫌な予感しかしないな」


ノエルを契約するのに苦労したことを思い出す。

あれは結局、なんだったんだろうな?

黒騎竜が勇者の縁があるというなら、俺がその縁者である可能性…わかるだろうに…。

何故俺は遠ざけられたのだろう?


「後、コレも気になるんだよなあ…」

『手紙?』


卒業間際に届いた、実家からの手紙。

王都に勤めるにあたり、さすがに実家に帰るべきか否かで俺は非常に迷っていた。

同じ近衛見習いのトリスは実家から通うだろうし、勤めるのが決まっている以上行動を制限されるとは考えづらい。

だから実家に戻っても…良いのだが…。


親からの手紙の内容は二つ。

一つは実家へ帰ってきてもいいし、寮に入ってもいい、という内容。

寮? と思ったけれど、見習いはいろいろ下積みもある故に基本忙しい。

加えて騎竜士と言う事で見習いの3年間はやはり地方派遣も入るため、王城内の独身寮に入る人間も多いと言うのだ。

そこであれば住居は許可、ということらしい。

今更実家に帰るのもアレなので俺はそのまま寮に入ろうかと思っている。サルートもなんだかんだ言って、寮使用してるらしいしな。彼の場合は忙しすぎて家に帰るのも面倒だ、とかそんな理由っぽいが。


そして二つ目。

これが、よくわからない。

内容は一つ。『決して神殿に立ち入らない事』

もし神殿に呼び出された際は、父を呼べ、と。

そんな内容だった。


何故に父呼び出し。

詳しい事はまったく書かれていないし、恐らくないと思うが…もし呼ばれたら、というif的内容。

ちなみに騎士学校へ出る前には、そういった注意は受けていない。

あの時も多忙な父から送られてきたのは手紙で、内容は無難なものだった。

使用する剣と、ひとそろいの家具は既に用意されていて身一つで行ったが、その後もおそらく母からだろう服等は届いており、特に不都合を感じる事はなく。むしろ日用に使用する分の金が無駄に溜まって困ったぐらいだった(そしてその金の大半は書物で消えた)。

ちなみに家具はそのまま寮に流用する気満々である。

入り切らない本は実家に送っておこう、読み終わってるし。


「神殿関係は召喚陣見たかったんだが…無理、そうだな」


だが父の手紙はどちらかと言うと命令ではなくて…。

懇願、に近い内容だった。

だから嫌な予感しかしなくて、俺は神殿関係はなるべく関わらない方がいいと結論づける。


「…よし、起きるか」


今日も忙しくなりそうだ。

ベッドから起き上がり、腰に剣をさす。


卒業まで後一週間。

卒業してすぐ、王都へ戻る。



魔の森の活発化。

父の不可思議な手紙。

そして王都での生活――――。



何かが確実に動き出そうとしていた。




ようやく学生終了。

次は閑話です。サルート視点。

その次から近衛時代に入ります。

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