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それは理屈じゃなく

選抜大会は年が明けてすぐに行われた。

今年の優勝者は共に学生や騎士ではなく、傭兵と魔術師学校の教師から出たようで、番狂わせと言う事で非常に盛り上がったらしい。


しかし傭兵ねぇ。

最近は魔物が多くなっていて警戒レベルが上がっているため騎士は殆ど出なかったという話だし、仕方のないことなのかも。

ちなみにサルートは騎士見習いだった18歳(~23歳)の頃にこの役職に就いた事がある。前回に関しては既に副官になっていたため、出なかったらしいけどな。


来年になれば俺も卒業だが、騎竜士クラスは基本そのまま近衛と騎竜士師団に分かれてそのまま見習いへ入る事が決まっているクラスだ。

俺は剣士としての腕は正直頭打ちの気がしているが、まあ身分的にも恐らく近衛配置になるだろう。常に傍にいるわけでもないし、外出する時に王の騎竜の護衛が基本になるのでさほど忙しい身分でもないだろうし、勉強する時間は取れるな。

後王様が近くなるのである程度は勇者の情報も入ってくるだろう、と思っている。


うん、昔考えていたよりかは状況マシな感じ?

ノエル様々と言ったところか。


実家が何か言ってくるかなあと思っていたが、特に便りもなく日々が過ぎていく。

そういえば近衛配置になるって事は、父親と顔を合わすことも増えるのだろうか。

父は父で、魔術師団の高位者のはずだし王様とも近しいはずだからな。


魔術師は騎士と違って第1、第2といった組み分けはないけれど術師団として大きい組織として配属になる。基本は騎士団のフォローで個々の騎士団配属になったり(所属が2重になるような感じ。派遣みたいなものか)、治療を中心とした団へ定期的に配属になったりと明確にずっと同じ団にいるわけじゃないから現在父が何をしているかはよくわからない。

騎竜士団は別で、あそこは基本魔術ではなく剣・槍の使用者が中心だけどな。まあ、魔力中心世界だと魔術師オンリーとかそういった師団は逆に使いづらいとされてるのかもしれない。


それはともかく。


俺はようやく最高学年。つまり、就職の決まる学年へ進級した。

俺が17歳。

そして弟が15歳で最高学年を迎えた。


…おわかりだろうか。

そう、俺と弟は実は同学年だったのだ…すっかり疎遠になっていたので忘れていたが……。

そして身分的なアレで言えば、そう、うん。

新人研修、どう考えても弟と一緒ですよね? コレ。

魔術師団の方に配属ならいいけれど、近衛は騎士・騎竜士・魔術師混合部隊なわけだから…えー…まあ、予測通りの気がする。



…マジ?





『あにうえー』

『ゆりすしゃまー』


弟の事を思い返そうとすると、俺は必ず弟の5歳の誕生日を思い出す。

つい先日魔力の目覚めを見た弟は、魔力制御が出来るようになったからという理由で俺を追いまわした。

正直魔力が目覚めない状態でいる二人を一緒にしておくのは危ない、という理由であまり触れあう事ができなかった俺と弟だが、弟は俺の事を両親によく聞いていたのかここぞとばかりに構えと寄って来たのだ。


この日は誕生日と言う事で、俺よりは一つ下、弟よりは一つ年上の少女も一緒にいて。

誕生日パーティーが始まるのは夜と言う事で、午後の日差しのある中、弟と少女と3人で中庭を駆け回っていた。


『あにうえが鬼だよー』

『にげてー』


きゃー、と叫びながら散っていく二人。

中庭には特に危ないものはなく、追いかけて捕まえて、満足させたら着替えさせて…と。

特に急ぐ何かがあるわけでもないので、俺は子供相手に全力で走るのも馬鹿らしく中々追いつかなかった。

やれやれと思いながら距離を取り過ぎていた。


そうして、気を抜いていたから油断した。


『きゃっ!!!』

『るる!』


気づけば二人は手の届かない距離にいた。

躓く少女、振り返る弟。

一瞬の間でそれが起こり、次の瞬間には少女は泣きだした。

噴水の近くでこけたため石に躓きでもしたのだろうその膝の傷は深く、赤い色を見て俺は慌てて近寄っていった。


けれど。


『だいじょうぶだよ、ぼくがなおしてあげる』


浮かび上がる、白い魔方陣。

吸い込まれていく癒しの光。

幻想的な光景に、俺は足を止める。


『ひっく…』

『もう、いたくないよ、だいじょうぶだよ』


少女の頭をなでる弟の手。

弟を見る、少女の笑顔。


『ありがとう』


近寄る事が出来ない距離に、俺は立ちつくし。

彼らが近寄ってくるまで俺は動く事が出来なかった。



『あにうえ?』

『ゆりすしゃま?』



―――あの時。

俺は初めて、指輪をはずしたいと願ったのだ。

ちなみに魔力上位世界なので、魔術師学校が1月入学で準備期間あり、騎士学校が3月入学になっているようです(ただし授業は4月から)

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