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閑話 騎竜の願う事

子供なので文がブチブチ飛びます。


まぁるい屋根を見ながら、歌声に耳を傾ける

優しい声は、母さまの子守唄。

少し低い声は、主の呼びかけ。

そして高く響く声は、神様のお願い。


――――助けてあげて。


神様の声は遠くて良く聞こえないけれど。

主に対して呼びかけたいのだけはわかったから、私は何度もいいよと返す。

私が助けてあげる。


ずっと。ずっと。


屋根を撫でる手から、伝わってくる主の魔力。

それは多分、すごく少ないのだけど、気持ちよくてもっと欲しくて、もっともっとと足を延ばす。

狭いのを忘れて要求すると、身体が傾いてかんっ、と音をたてた。


『元気だなあ。もうすぐ生まれるかな?』


少し低い、私の主の声。

生まれたら、主に会えるのかな?

助けることが出来るのかな?


早く生まれたい。







主の声が聞こえない。

いっぱい私に声をかけてくれた、主の気配が近くになくなった。


どうして。

どうして。


屋根を破り、初めて見るのは主が良かったのに。

どこへ行ってしまったの?

どこへいなくなってしまったの?


母さまがもう出ておいでと歌う。

けれど主がいないのに、生まれてどうするんだろう?


(主、どこ)


大きくなって探しに行けばいいのかな?

この手で飛んで、この目で主を見つければいいのかな?

神様の助けては、探してって意味なのかな?


(これ、じゃま)


まぁるい屋根が疎ましくて、手を伸ばすとパリン、と割れた。






主を見つけたいのに、お外に出してもらえない。

近くに寄ってくるニンゲンは、変な陣を近づけてくるから嫌い。

いやいや。

何度もいやってしてるのに、いつの間にか囲まれて、大人しくさせられる。


私の主は一人なのに。

私の主は、あの声のぬしだけなのに。

どうして知らない人ばかり来るの?


「…ごめんね、ノエル」


母様の契約騎士が、私を撫でる。

ノエル。私の名前。

何度も何度も(あるじが呼んでくれた、私の名前。


名前を呼ばれるから、私は大人しくする。

主の処へ連れてってくれないかと、騎士を見つめるけれど彼女は溜息しかつかない。

主はどこなの?


「ユリスに会いたいよね…」


ゆりす。

それが主の名前なのかな?

母さまを見上げると、母さまはその通りと言いたいみたいで、私の体をゆっくり舐めてきた。


『きゅ?』

「ユリスもあいたいって言ってるよ…だからもうちょっとだけ、我慢してね」

『きゅ!』


私が主に会えないのは、主のせいじゃないみたい?

我慢、すれば会えるのかな?

大きく、なれば会えるのかな?


じゃあノエルは大きくなろう。

大きくなって、この手で飛ぼう。

そうしたら、きっと、会える。





女のニンゲンがやってきた。


あの陣は嫌い

だからそっぽをむいたけれど、頼む、と声がする。


頼んでも駄目。

私は主のところにいきたいの。

その陣を受け入れたら、主のところにいけないって、母さまがそういった。

契約とはそういうものだと、我慢出来なくなった私に母さまが教えてくれた。


あれは約束をするもの。

だから、もう約束をしている私は触っちゃいけないのだ。


ぷい、とする私にその女のニンゲンは嫌な気配を出した。

なに?

こわい、なに、こわい。


「…認めてもらいたいんだ」

『イヤ!!』


拒絶すると、彼女は剣を抜いた。

…キラリ、と光る剣に恐怖する。

どうして? どうして?

私は主のところに行きたいだけなのに、どうして邪魔されなきゃいけないの?


「ファティマ殿! 傷をつけては…!?」

「大丈夫だ。振り下ろしはしない。こうして示しているだけだ」


身構えると、彼女から伝わってくるのは強い気配。

剣から、その身体から、ゆっくりと伝わってくる彼女の『魔力』


「騎竜はその人の気で強さを測ると聞いた。もし、私の力を欲しいと思うなら…応えてほしい」


…ああ、このひと、つよい。

すごくつよい。

この人の騎竜になれば、きっと、もっと…つよく、なれる。


『きゅー――…!』

「…イヤか?」


でも嫌なの。

主を私はもう決めたの。

イヤ。

いやいやいや。

この力に、誘惑にあらがえない自分がいや!!


(ノエル…!)


主の声が聞こえた気がする。

主近くにいるの?

私の声に答えてくれるの?


「? 何か外が騒がしいな」

「何かあったんでしょうか?」


お願い、近くにいて!!


「…なっ、うわ!?」

「きゅー!」


ずっと囲まれていて出られなかった場所。

彼女が剣を抜いた事で出来た隙間に通れそうな気がして、私は身体を低くする。


(きっと…主は近くにいる!)


外側へ身体を向けた瞬間を狙っての体当たり。

思いっきり前に体を倒すと、彼女は慌てて飛びのいてくれた。


…いまだ!


「あ…っ!!」


すりぬけて走り出す。

手を振れば羽ばたく、加速する。

身体は、外に飛び出せる――――!



「きゅううううううううううううううううう!」

「うおあ!?」


出口にいつの間にかヒトがいた。

よけきれなくてぶつかって、歯が当たる。

痛い。


「ユリス!?」


噛んでしまったヒトの、魔力が流れ込む。

血は力。

血は魔力の源。

私が待っていた、このヒトは…。


あるじきたーーーーーーーー!)


待ってたの。

ちゃんと来てくれるのを、待ってたの…!



『我、血の盟約を用いて主と契約す…!』



母さまに聞いた約束。

叫ぶと、流れ込む魔力が増した。

夢中になって吸い込む。その矢先。


どか! ってすごい音がして、主を下にして、身体が落ちた。


「ぎゃ…ああああ!? ちょ、ユリス無事か!?」

「きゃーーーー!!!」


ぱた、と落ちる主の手が。

私の頭に当たる。


(あれ…????)



『きゅううううううううう(主――――――――――――)!?』



待ち焦がれた邂逅は。

主への攻撃で幕を閉じた。

どめすてぃっくばいおれんすな契約の裏側。

うっかりファティマに騎竜をとられる寸前だったらしいよ★

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