男同士の密談
若干アレな表現有…? 訂正済。
「で、来たのがサルート兄様とは…」
「よお、久しぶりだなユリス」
第1師団まで使って騎竜の卵保護とかどんだけっすか。
ねぇどんだけっすか王様。
多分あの子俺の契約竜だよ!! だって俺勇者PTに入れるの前提だったもんあの神様!!
声を大にして言いたいところだが、これが違ってたら恥ずかしいので言えない。
「卵の契約者が決まってるってなんだそれ、と思ったんだがまさかユリスとは思わなかったな。神の寵愛すごいな」
「卵の段階では決まらないものなんです?」
どうせ出られないなら積もる話でも、とばかりに。
二人でみる(!)と言う話しのところを俺とサルートの1:1にしてもらい、交代制で十分だという話で相方を説き伏せた。
そんな無茶通していいんだろうか。
「卵を触るのも難しいくらいだって聞いたなー。その点お前は卵触り放題だった、って話だったから警戒されてんだよ」
「はあ」
「騎竜は契約者を一度見たら、そいつ以外は契約しないことでも有名だからな。俺としちゃ手遅れな気がするがなあ」
「?」
首を傾げるとまあこっちの話、と打ち切られる。
手遅れってどういうことだろうか。
そりゃあ母竜に言われて既に名前まで決めてよんでたけどね! なんか卵見てるとふわふわの黒い…なんていうかまっくろくろすけ的な何かがいつも頭に思い浮かぶんだよな
なので黒、からノエルと呼んでいた。
いつ出てくるか楽しみにしてたのに正直酷過ぎる…。
「ま、竜の話は置いておいて。学校の方はどうよ?」
「どうって手紙に書いた通りで変わりないですよ?」
実家には手紙を送らない俺だが、サルートには定期的に書いて送っている俺である。
ちなみに長期休暇も家には全く帰らない俺だがサルートに呼ばれてカイルロット家の別荘地ならいきました。
ほぼプライベートビーチ状態でサルートとしか会わなかったけどな。そして主にやってたのが剣の修行という夏だった。
割と有意義ではあったが。
「ホントかよー。お前いつも肝心な事かかねーし」
「肝心な事?」
「ファティマ・ソーガイズ」
「!?」
学校外でも普通に流れる話なのかそれは…。
確かにファティマの事はいつも一緒に学習している友人です、ぐらいしか書いた覚えはないが。
げんなりしながらサルートを見ると、案外真面目な顔をしていたので俺も姿勢を正す。
「ぶっちゃけ外の噂とか相当すげーよ? あのソーガイズのお嬢様剣士が、出来そこないの魔術師に振られてイジメてるっていうのとか、逆に魔術師の方がイジメてるとか、振られた腹いせに酷い事してるとか」
「っはあ!?!?!」
「お、イイ反応」
何それ知らん。
って言うかマテコラ。
「俺とファティマとの間のどこに色恋沙汰が……」
「え、否定する処そこなんだ?」
「当たり前です。相手、14ですよ。どこにも色っぽい話ないです」
「え、しかもそこ!? っていうか成人間近じゃん!?」
何を驚かれたのかわからないが、サルートの口がぽかーんと開いたまま戻らない。
えー、と不満げに言うサルートに俺はさらに繋ぐ言葉を考える。
この世界はちなみに成人15である。学校の卒業年齢と同時に女子は成人を迎える。
ただし男子は18が成人。理由は恐らく自活能力の問題(見習い期間は基本3年のため)だと思われる。
「ファティマは単純に昔の自分と俺を重ねてるだけなんですよ」
「ほむ?」
「俺はそれが耐えれなかっただけなので、兄様が期待してるようなものはないですよ」
「んー…? 俺にはそれ、自分を見てほしいって聞こえるけどなあ」
それってやっぱ色恋沙汰じゃね?
と、ニヤつくサルートに肩をすくめる。
残念ながら違う。少なくとも俺は違う。
「自己顕示欲はあるかもしれないですけどね。ぶっちゃけ俺」
「ん?」
「ファティマの裸見ても何ともなりません」
「ぶほぁ!?!」
全否定をかますと、サルートが真っ赤になって椅子から転げ落ちた。
器用なオチ方するなと見ていると、その状態からベッドに座った俺に膝でつめよってくる。
「お、おま…何言ってんだよ!!」
「だって色恋沙汰にしたいみたいなんで否定しようかと」
「だ、だからってなんでそっちに繋げんだよ! 他の奴に聞かれたらどうすんだよ相手がかわいそうだろ!?」
「え、そういうもんです?」
恋愛対象じゃないと言いたいだけだったのだが、相手の侮辱に繋がるかどうかは考えていなかった。
反省。
でも結構真っ赤な割には興味深々ですね。
「ってか、そんなに魅かれない感じなのか? ソーガイズのお嬢様」
「いえ、美人ですよ。昔からクラス中から妬まれるレベルの美少女でしたし、今は十分美女ですね」
こっちの人ってホント成長速いよね。
俺も16の割に既に身長前世より超えてるし、前より10センチ近くは伸びそうなんだよな。
父親も背が高かったし、サルートも。平均身長自体が女性も含めこの世界は高いのかもしれない。
「それで反応しないのか?」
「趣味じゃないんで」
「おま…ばっさり言ったね…」
「事実なんで…」
というか…俺の中ではこの世界、まだ現実感伴っていないのかもしれないな、とぼんやり思う。
12年家にいて、外を知り始めた4年という月日。
まだ、こちらの人とかかわり始めて4年なのだ、俺は。慣れることに手いっぱいで周りを実は全く見てなかったのかもしれない。
正直ファティマと色恋沙汰として噂されているかもしれない、ということには思考が向いていなかったことに気づく。
それに…。
「まさかとは思うけどお前…男…」
「男にも興味ないですよ」
「あ、そう? ならいいんだけど、お前の趣味ってどういうのなのよ」
左手の薬指にはめた指輪を見つめる。
これは、俺とアイツの証で。
この16年間、何度となく見つめた証で。
「んー…身長は低くてー…」
「小さいのが好みなのか」
「声は高くてーハッキリ喋る方でー…」
「ふむふむ」
「いつも笑顔で、悩んでる俺なんか馬鹿みたいに思うくらい、前向きで」
「…?」
「なんでも出来る癖にお人好しで、…ええとそれからー」
『ゆきちゃん、大好き』
ふいに声が蘇って赤面しかける。
そういえばアイツ、めちゃくちゃストレートに告白してくるんだった。
割と耳タコだったけど、もう16年聞いてないんだなあ…。
「なあそれ、普通に好きな人が他にいますって聞こえるんだけど?」
「え? いないですよ?」
「嘘こけ。顔、真っ赤だぞ」
「はは…でも、存在しないんです」
――――――この世界には。
「おいユリス」
「なんです?」
29年間という人生のうちで、半分以上を一緒に暮らしていた俺の好きな人。
目を閉じれば声も、顔も、その笑顔も…すぐに思い出せるのに、ここに彼女はいない。
「…なんで…そんな顔…」
「?」
あまり気にしていなかったけど…。
俺の中の時間は、あの時、29歳で死んだ時に止まったままなのかもしれないな。
「いや…なんでもねえ…」
「はあ」
俺は自分がどんな顔をしていたのかわからないが。
サルートは痛ましそうにこちらをみると、話題を変えてきた。
「まあ、とりあえず。卵から生まれたら親の契約騎士ごといったん王城まで付いてきてもらうことになるとは思うが、心配すんな。早く終われば2,3日で軟禁もとける予定だしさ」
「はい」
「ま、のんびり休暇と思って俺に付き合えよな」
そもそも29+16才のユリスに14歳は犯罪だと思います
下品な表現部分はオブラートにしたつもりです。何かあれば一言くださいまし。
こいつ中身29歳の既婚者なので…うっかりすると結構表現がやばかったりします。書いた後で気付いて訂正しましたが、一か所ぶっちゃけもっと端的にR15表現で言い切ってました。気をつけます…。