しにました
よくある異世界転生モノです。まったりお楽しみください。
世の中には転生物の定番というのがあるけれど。
いきなり神様に無理難題吹っ掛けられるって事はどれくらいあるんだろうか?
「少なくとも僕は初めてかなあ…」
「そんな初めては欲しくなかった」
「だーよねー!」
ふわふわと白く光が漂う世界に俺はいた。
目の前には、まぁ人じゃないんだろうね、と思うくらいには整った顔の美少年。
無駄に顔がいいのが余計腹が立つ。
…じゃ、なくて。
「で、話を整理したいんだが?」
「うっわー、そういう人選んだとは言えすっごい理路整然としててやりづらいや!」
「話がまとまらないんで茶かすのやめてくれます?」
苦笑い、なのだろうか。
少年と言えるほどの幼さの顔に浮かぶのは、見た目年齢に見合わない自嘲に近い笑み。
まあ確かに、内容を聞いた俺としても冗談じゃないと思うレベルの話ではあったが。
ふわり、と浮く身体に重力がかかる。
俺はそのまま何もない処に胡坐をかくと、少年も俺の前に座る。
そうして俺と彼の間にはぽかりと穴が開いた。
「君に転生してもらいたいのは、この世界」
雲の上から眺めているみたいに、小さな大陸が穴の底に見える。
周りに囲まれた海は穏やかに青色に光っており、所々に見える街も湖も川も、ミニチュアの大陸を見ているかのように整っていた。
「君の世界では『魔法』と呼ばれるのだろうね。魔法のある世界。人々の生活には常に、魔法が根付いている、世界」
「ファンタジーの定番ですね」
キラキラと反射する光を目線で追うと、少し離れた処に黒い靄のかかった大陸が見えた。
…ナニカ余計定番を感じる。
「で、まあ。あれが『敵対者のいるところ』ね」
「魔王とかじゃないんですか」
「魔王というのは違うかなあ…僕と敵対してる奴なだけだし。あっちからすれば、僕が魔王だと思うよ?」
「そーっすか」
黒い靄が見えるのはただの演出なのか。
それとも向こうからはこっちが黒く靄がかかってるように見えるんかな?
まぁ滅茶苦茶どうでもいいけど。
「まあ話を戻すけど、僕と彼はここ何万年と対立しててね。僕ら自身が対立するとこの世界自体が壊れてしまうから、人間に代理をしてもらってたわけだけど…今回は何か、相手が本気になっちゃってねえ…」
「はあ…」
「何度先読みして対策を考えても、助けられないんだよね。僕の『代行者』たちを」
「はあ…」
代行者だの敵対者だの。
もっと適当な言葉使えないのかな、と思いながら彼を見ると。
彼は子供らしからぬ笑いを続けたまま、最初と同じ言葉を繰り返した。
「だから君に転生してほしいんだ。そして彼らを助けてほしい」
「…はあ」
「ただ、魔法使えない状態で20数年生きてもらうことになるけどね」
…冒頭に戻る。