見るとしたら……
真夏の水風呂で、気まずい距離感に焦れる男女ふたりのお話です。どうぞお楽しみください。
『ねえねえ、一条君は何処をみたいの?』
さっきから目を逸らすような動きを見せている一条 保であったが、もう我慢の限界のような顔もしていた。顔は、いやそれだけではなく身体じゅうを真っ赤にしていたし、眼球の動きは、完全に挙動不審者のそれであった。
『ねえ。さっきから何で黙っているの?こういうの、嫌いなの?』
バスルーム、湯船の中に2人は見合うようにしゃがみ込んでいるのだった。
真夏の炎天下の中で涼む為に水風呂に浸かっていたのである。
『あの、紗彩ちゃん。』
『ん、なあに?』
『ぼく……』
保は思わず、俯いた。妙に鼻水が出ると実感しながら。何でもなんでも言葉を絞り出そうとしているのが見え見えだった。
『お……』
『お?照れてるの?なちそれ?』
『あの…、僕は…』
『もういいや。おしまいね。時間切れ。もうお風呂から上がらなきゃ。寒いわ。それに……』
『そ、それに?』
保は焦っと。口が回らない。頭も回らない。
『そろそろお母さんが帰ってくる』
決定的に時間切れ。保は少し、紗彩が好きでなくなった。と同時にさらに好きになった。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
真夏の暑さ対策で水風呂に入ったはいいものの、距離の近さに思わずドギマギしてしまう保と、どこか余裕のある(?)紗彩のやり取りを描いてみました。
タイムリミット寸前の絶妙な甘酸っぱさを楽しんでいただけたなら幸いです。
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