表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第二話 2年前の夜

灯りは一つだけだった。

行灯の火が、紙の内側で静かに揺れる。


私は畳の上に正座し、向かいに母が座る。少し後ろに父が控えていた。


「ミコ」


母は声を荒げず、柔らかくも逃げ道のない呼び方で呼ぶ。


「あなたは、巫女になる準備を始めます」


分かっていた。だから私は、ただ小さく頷いた。


「三女だから、ですか」


思ったより落ち着いた自分の声に、少しだけ驚いた。

母は首を横に振る。


「期待されているからよ」


向いているかどうか、やりたいかどうか、そういう選択肢は最初から存在しなかった。


「役目は、誰かが背負わなければならないものです」

母の視線は私ではなく、もっと遠く、国や神の方を見ていた。


父が小さく息を吐く。

何か言いたそうでも、何も言わなかった。


「……分かりました」


それが一番、早く終わる答えだと知っていた。

母は微笑む。褒めるでもなく、安心でもない、静かな笑顔だった。


「いい子ですね」


その瞬間、胸の奥が少し冷えた。

泣けばよかったのかもしれない。

でも、泣くことも甘えることも、もう私は知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ