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非核三原則マイナスワン

作者: 稀Jr.
掲載日:2025/11/21

日本にはかつて素晴らしい原則がある「非核三原則」であった、「持たず、作らず、持ち込ませず」である。まるで、見ざる、言わざる、聞かざるの三猿のように、核兵器に関しては一切関与しないという立場を示していた。


「あれれ、そこに核兵器があるって、いやいや、もっていませんよ。ジャンプしましょうか?」とか、

「ええ? 原発は作っていますよ。濃縮できるけど、いや、ちょっとね、濃縮の度合いがまちがってしまっているやつもあるのですけど、いや、作っていませんよ」とか、

「それ、核兵器ですか、いや、ああ、弾道弾ミサイルの頭の部分だけですね、オーケーオーケー、大丈夫、持ち込んでいませんよ」とか、


言って済ませていた。まあ、実際のところ、核兵器を作ることと原発の核燃料を作るのとは随分差があるのと、爆縮させる仕組みが原発とは全然違うので核兵器を作るのはそれなりに難しいんですけどね、という専門家の意見はさておき。


昭和 100 年の記念行事として、この非核三原則からひとつ減らそうという案がでているのである。「非核三原則マイナスワン」である。つまり、非核二原則...なのだが、ちょっとカッコ悪いので「非核三原則マイナスワン」と呼ぶことにした。


「さて、今回の閣僚秘密会議の主題ではありますが、非核三原則のうちひとつを減らすことにしたいと思っています。これは、首相ではなくて、個人的な意見なのですが、国会に提出することも可能なので、皆さんで議論したいと思います」

「あ、あの、午前三時なんですが」

「いえ、それは関係ありません。わたくしはすべての文書を自分で作りますので、午前三時とか甘ったれたことはいいません。首も毎日きれいに洗っていますよ」

「いえ、まあ、首はまあいいのですが、非核三原則を減らすというのは、ちょっと大変なことではないでしょうか?」

「そうですね、大事には違いありません。しかしですね、これからの「責任ある積極財政」を進めていくためには、ええ、ここが重要なところです。「積極財政」ではなくて「責任ある積極財政」ですのでお間違いなくお願いします」

「あの、「責任ある」とないのとはどういう違いがあるのでしょうか?」

「ああ、そうですね、この機会ですから説明いたしましょう。いままでの積極財政については、何かと国債の発行や収支を考えない財政出動が提案されてきました。国債の発行にせよ、複数年度の予算提出にせよ、それがいかなる影響を及ぼすのか、どのような効果を得られるのかを求めることはしませんでした。なにしろ、予算ありきのものですから、国民から吸い上げた税金をばらまくために「積極財政」つまりは本邦の財政出動を行ってしまったわけです。これらの反省は、もともと大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶに端を発しております。ノーパンしゃぶしゃぶはご存じですか?」

「いや、ええと、行ったことはありません」

「ええ、そうですね、行ったことはないと思います。行ったことがあれば、由々しきことになりますが、ここでは問わないことにしましょう。なにせ、調査と称してガールズバーに行く方もおられたわけで、何かと理由付けさえあれば予算が出ていたという時代があります」

「はああ」

「その反省のもとにですね。単なる積極財政では駄目なのです。いわゆる、プライマリーバランスつまりは、PB を考えないといけないというのが財務省の主張ではあるわけです。しかしですね、ここに問題があります。PB を考えるにしても、じゃあ、引き締めてしまえば、つまり支出さえ削ってしまえばよいのか、という問題があるわけです」

「つまり歳出を絞るということでしょうか?」

「そうですね。歳出を絞れば PB は改善します...といいますか、政府の借金が少なくなるわけです。政府の借金はですね、実は国民の資産とも言えるのですが、そのあたりは視点の違いです。国家を主にするのか、国民を主にするのかが問題になります」

「あの、ええと、首相は国家と国民のどちらを主に考えておられるのでしょうか?」

「いえ、当然です、国家ですね。国家こそ主、国民こそ従ですので、常に「国家国民」という云い方にしております。いえ、それはどうでもいいのですが、つまりは、国家を支える政府としてはね、歳出を減らすことは良しということなのですが、その分機密費が減ってしまうのが問題です。毎年毎年、年度末になると空になってしまう機密費なのですが、お母さん、あの機密費、どこにいってしまったんでしょうねぇ。という訳にはいけないのです。ええと、どこまで話しましたっけ?」

「あ、ええと、PB が改善しますのところです」

「あ、そうそう、PB が改善というのもありますが。その PB の改善がですね、ドーバー理論によれば、国債の比率とインフレ率つまりは GDP の成長率の比較を忘れてしまっているのが問題だったのです。PB を改善するにしても、経済成長率を 0 % と見込んでしかたがありません。世の中は成長していくものです。そうです、わたくしも、太郎大臣に現在育てて貰っている途中なのです。ありがたいことです」

「え? その歳...」

ぎろり、と T 首相はつぶやきを睨み、話を続けた。

「ですから、国債を発行するにしても、その増加量を加味することができるわけで、その発行度合いをきっちりと考慮したうえで、財政出動をすることができるというわけです」

「あの、つまり、それが責任ある積極財政ということなのでしょうか?」

「ええ、その通りです。ちょっと言い方が違いますが、「責任ある?(にっこり)積極財政」ですね」

「えええ? その、ニッコリ、は必要なのですか?」

「ええ、必要です。責任ある?(にっこり)積極財政、ですので、にっこりは必須です。にっこりしないと、見逃しが発生しませんからね。ここでこそジャパニーズスマイルの出番です」


午前三時の閣僚会議は T 首相のニッコリ...じゃなくて、長話が続くのであった。自習は家でやってくれと思う官僚も多かったのだが、それは言わなのハマグリであった。


「話を元に戻しましょう。「責任ある(にっこり)積極財政」にしても(以下、「責任ある?積極財政」と略す)、非核三原則の3つの原則は結構負担が大きいのです。誰もがもっているのに、持たないなってありえないでしょう? ほら、となりの国のみよちゃんがもっているのに、私だけが持っていないなんて、クラスのみんながもっているのに、私だけが持っていないのよ。誰?クラスのみんなって、しゅうちゃんとあめちゃんと、ぷーちゃんと、あと、ええと・・・それはいいのよ、みなが持っているのに私だけ持っていないなって悔しいじゃない。ちょっと肩身がせまいのよ、という訳です」

「ええ、その、そのとき、お母さまはなんと?」

「よそはよそ、うちはうち、と却下されました」

「なんと、賢いお母さまですね。尊敬致します」

「ええ、賢いのはいいのですが、ちょっと私の気持ちはおさまりません。ですから、次はですね、持たせてくれないならば作ってしまおうという具合です。いわゆる DIY の精神ですね。泣ければ作る、必要は発明の母なりというわけです。色々ですね、ネットをあさって 3D プリンタや CNC フライス盤で作る方法を調べました。このために電気工事士二種の資格も取りました。ええ、これで家の電源のコンセントの修理もできるわです。で、やっとこれでできそうというとこがですね、ストップがかかったのです」

「まあ、そうですね、ストップがかかりますよね」

「そうですね、家で作るにはちょっと大変なのです。あのお釜のような金属の蓋をですね、一瞬上げて一瞬で締めることをやらなくてはいけません。何度も練習はしたものの、それが難しくてですね、ちょっと私の手には負えなかったのです」

「負えなくて、よかったですね・・・」

「そこで、私は考えたわけです。作るのは禁止されてしまった、DIY するつまりは持つのもなかなか難しい、そうなるとですね。やっぱり、輸入が一番、海外からの個人輸入に頼るという手があるわけです。最近はですね eBay やら Aliexpress やらいろいろな海外のサイトがあります。日本で売っていないいろいろな製品が海外から直接輸入できるわけです。ちょうど、amazon で通販を買うように手軽になんでも買えるわけです。ここでですね、核兵器も買えるんじゃないかと思ったわけです。ねえ、いい考えでしょう?」

「いや、さすがに、兵器はまずいんじゃないですか?」

「いやいや、核兵器にしたってバラバラにしてしまえば大丈夫。部品の状態ならば輸入が可能じゃないですかね。組み立ててしまえば穴があって鉄砲にも流用できるから、中国のおもちゃも鉄砲になるとすれば、ちくわだって鉄砲になってしまうわけです。そういう意味では、ちくわを輸入したら武器の輸入になるか、って話です。だから、今の世の中は、ちくわは武器に値しないのですから、核兵器でも大丈夫なはずです。そう、してしまえばいいですよね」

「え、でも、そうなると、餅とか危ないじゃないですか」

「そうそう、餅も殺人鬼になりますよね。餅なんて正月に限らず、ご老人の喉を詰める凶器です。これが一般に販売されていること自体があやういところです。蒟蒻ゼリーもそうですよね、うずらの卵だって凶器になります。ですから、餅も核兵器も同じようなものです。ですから、餅を輸入できるということはですね、核兵器の持ち込みも自由ということになるのではないでしょうか。そう私は考えたのです」


午前三時の閣僚会議は続くのであった。夜中の会議...じゃなくて受験勉強は、なんとなく「おれ、天才じゃないの?」と思わせる効果が多く、朝になるとがっくりと来るのである。

T 首相は知ってから知らずか話を続けるのである。


「それでですね、非核三原則の見直しをするわけです。作らず、持たず、持ち込ませず、とところをですね。作らず、持たず、餅のみ込ませずにするんです。そうすれば、兵器である餅を輸入してもですね、兵器になりません。きちんとご老人には噛んでも頂くのです。餅こそが日本の米ですからね。日本の心、故郷の味なのです。山あればサンガリヤ、国家の目指すところです。餅を網でこんがりやいて、ほどよく焦げ目がついたものを、ちょっと膨らませてあつあつのものを食べるのです。野比のび太はそれぞれですが、それをですね、高齢者の方々にも味わっていただくために「餅のみ込ませず」と非核三原則に追加するのです。ええ、そうなんです。持ち込ませず、を餅のみ込ませずに変えます。大切なのでで二度言います。餅のみ込ませずですよ。重要です。これぞ非核三原則のマイナスワン、そしてプラスワンです。ねぇ、ねぇ、いい考えでしょう。これぞ、責任ある?積極財政の一環です。餅には醤油がいいですよね。海苔を巻くのもいいです。そうそう黄な粉なんかおいしいですよね。ああ、話をしていたらお腹がすいてきましたよ。ねぇ、みなさんもお腹がすいてきたでしょう? そうでしょう? ですから、餅のみ込ませず、にしましょうよ。ねぇ、ねぇ、いい考えでしょう? 夜食はでないんですか?」


あの、T 首相。いいかげん寝てください。

隣にいた官房長官は、皆に申し訳ナスそうだった。


【了】


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