表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2話

 夜、池から出た私はシャワーを浴びた。

 池は気持ち良いが、外にある為汚れているのだ。

 パジャマに着替えて、布団に入る。

 目を瞑っていると、「ポタポタ」と水滴の音と「ジャラジャラ」と鎖を引き摺る音が聞こえてくる。


「……」


 私が目を開けると、部屋の障子戸に黒い影が映っていた。黒い影が障子戸をすり抜けて、部屋の中へと入ってくる。

 人の形をした黒い影。まるでノイズが走っているようにその存在は朧げだ。体型からして女性だろう。

 首には首輪がある。首輪には鎖が繋がれていて、床を引き摺っていた。


「また、来たの」


 それが私のことをどうしたいのかは不明だ。

 ただ、毎夜枕元に現れては、そこに佇んでいた。

 目はついていないけど、それが私のことを見ていることが感覚で分かった。

 私はじっとそれを見つめる。

 普通の人だったら、悲鳴を上げて逃げ出すのだろう。けど、見慣れた私にとっては、逃げ出す必要は無かった。


***


 真里と出会ってから半年が経った。


「小鳥。今日も行って良い?」

「……良いよ」

「やった! お酒もってくね!」


 真里とは仲良くなり、初めて友達というものができた。

 仕事が終わり、一緒に私の家に向かう。


「途中、コンビニ寄ろう!」

「うん……」


 私は自転車通勤で真里は電車だった。けど、私の家に行く時は、真里は歩いて向かう。私も自転車を押して、歩いていた。


「お酒、お酒、お酒」


 楽しそうに口ずさみながら、お酒をかごに入れていく。


「真里、買いすぎじゃ……」

「えー、だって今日は金曜日だよ! 明日は休み! これが飲まずにはいられるか!」

「……う、うん……そうだね」

「当然、小鳥も朝まで付き合ってね」

「えー……」


 お酒とつまみを買う。

 お酒が美味しいと思うようになったのも、真里のおかげだ。

 コンビニを出て、買ったものを自転車のカゴに入れた。


「よっと……」


 真里は自転車の後ろに跨った。


「さあ、レッツゴー」

「……二人乗りはダメだよ」

「むー、小鳥は固いなぁ」


 そう言って、真里は自転車を降りた。

 正直、二人乗りも楽しそうなので、真里がもう少しただをこねたらやるつもりだった。

 家に辿り着くと、真里は速攻でお酒を開けた。


「かぁ……生き返る……!」

「おっさんみたい」

「何を? 永遠の女子高生に向かって失礼な!」

「……女子高生はお酒飲めないよ?」

「あ、確かに……あはは」


 お酒を飲む真里は楽しそうだ。


「今日も泊まって行く?」

「もちろん! 酔い潰れるまで飲むつもりだし!」

「そっか……」


 真里が泊まって行く。

 そう思うだけで、心がポカポカと温かくなる。


「この焼き鳥美味しい……! ほら、小鳥も食べてみ!」

「うん……」


 真里と過ごす日々は楽しい。私は真里と出会うために、今まで生きてきたと確信するほどだった。

 翌朝、起きると、雑魚寝していた真里の姿はなかった。


「真里……?」


 いつもなら、お腹丸出しで、涎を垂らしている。

 テーブルの上に、伝言があることに気付いた。


『友達と遊ぶ約束あるから帰ります』


「友達……」


 伝言が書いてあった紙を握り潰し、床に叩きつけた。


「真里の友達は私なのに……」


 黒い感情が沸々と湧き上がってくる。

 でも、真里は優しいから、他にも友達いるのは普通だ。


「……」


 ダメだ。

 こんな黒い感情が真里にバレたら、真里は私のことを嫌いになる。


「隠さないと……」


 私は真里の友達。そう、普通の友達なのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ