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004_APPENDIX:魔法の話をしよう


■APPENDIX:魔法の話をしよう


 魔法。地球人にとっては、夢みたいなものだ。完全にフィクションな代物だな。


 だがいまやダンジョンができて、魔法は解禁された……ということらしい。


 さて、その魔法だが、実はまったく使えない。使えるモノではない。


 いや、魔法が役に立たないのではなく、基本、どうやっても人間には扱いこなせるものではない代物であるのだ。


 魔法を使うとしたら、それこそとんでもなく集中力のあるヤツが、1時間くらいウンウンと魔法論理を頭ん中でこねくり回して、やっとこさどうにかちっちゃな火の玉を ポッ! と一瞬出現させることができる程度だ。


 例外となるのが属性に付随している能力(タレント)からくる魔法程度だ。


 属性を詳細まで確認できる【解析】具で見ると、たまにスキルとして魔法が入っているんだよ。


 例としてはこんな感じだ。



 【火】(属性)――【火炎】(能力)――【火矢】/【火壁】(魔法)



 というような感じだ。



 普通の魔法にも【火矢】や【火壁】はあるが、タレントのモノとは論理が違うようだ。まぁ、そこは気にすることはないだろう。属性で魔法が使える者は『ラッキー!』とでも思っておけばいい。


 では、属性持ちでなければどうするか?


 『魔法触媒』が必要となる。


 ほら、魔法使いが魔法を使うには“魔法使いの杖”が必要、とかあるだろ? それだ。


 では『魔法触媒』とはなんぞというと、『魔法発動体』と『魔法辞書』を組み合わせたものだ。


 『魔法発動体』は魔力を魔法の形へと変化させて発動させるためのモノ。


 『魔法辞書』はいわゆるグリモワール。各魔法の論理を刻んだモノ。


 このふたつをなにかしらの装備に組み込み、触媒とすればいい。とはいえ、扱いやすさを考えると、手持ちの装備か、指輪、腕輪の類じゃなかろうか。


 とはいえ、指輪や腕輪はお薦めしない。サブか、もしくは奥の手程度に持っているのなら別だが。


 というのも、『魔法発動体』と『魔法辞書』は魔石を加工して作られるのだが、『魔法辞書』に刻める魔法の数は、魔石のサイズにほぼ比例する。故に、魔法使いとして十全に応用の効くだけの数の魔法を刻むとなると、そのサイズも必然的に大きくなる。


 魔法をひとつだけ刻んだ魔法辞書を大量に使う方法もあるが、これだと制御が凄まじく面倒臭くなるため、余程の酔狂でもなければ使わないな。その酔狂でも3日と経たずに杖をへし折ることうけあいだ。


 発動体や辞書はだいたい握りこぶし大が標準的だ。ほら、“魔法使いの杖”の天辺にあたりに水晶玉みたいなのがくっついていたりするだろ?


 魔法を使う時は、まず魔力を『魔法辞書』に流す。この際、どの魔法を使うか、その意思を魔力の載せておけば、自動的に『魔法辞書』に刻まれている該当する魔法の魔法回路が起動。魔法回路を通り変質した魔力を、魔法発動体が魔法の形に形成して撃ちだすわけだ。


 実物で説明しようか。こいつが魔法使い用の杖だ。いかにもな形をしてるだろ。


 形に規定なんてないんだ。こんな捩じれてるくせに真っすぐ伸びてる枝なんてないからな。大抵は大木を削って、捩子くれているように魅せるなんてアホなことをして造っているんだよ。


 ステッキの天辺に綺麗な球形に磨いた魔石をくっつけて、それを『魔法辞書』にすればいいものを、なんて、魔法使いじゃない俺は思ったりするけどな。


 いや、権威の為に“らしさ”が必要なのは分かるけどさ。


 それはさておいて、この天辺の捩子くれた部分の真ん中に据えてある大きい魔石が『魔法辞書』。そしてその下にくっついている小さな魔石が『魔法発動体』だ。


 握りとなる部分から天辺に向けて魔力の導線を刻み『魔法辞書』に、杖を握った手から無駄なく魔力を流せるように加工してある。当然、『魔力辞書』から『魔力発動体』へも導線を通してある。


 杖を削って、魔石の粉、もしくはミスリルを導線として埋め込んである。他にも導線の素材となるものがあるらしいが、普及しているのはこのふたつだ。


 じゃあ、試しに使ってみようか。


 さて、こう杖を……くっ、俺のたっぱだと滑稽なことになるな。杖がでかすぎる。さっきも云ったが、魔力の導線ために、握る部分はグリップ部分になる。導線の端がそこだからな。それ以外でも魔力を通すことはできるが、著しく効率が落ちると思ってくれ。


 踏み台に乗って魔法を使うとか、なんだこれ? 締まらねぇなぁ。


 それじゃ、使うのは【火矢】だ。


 魔力をしっかりと流して、発射。


 ま、こんな感じだ。普通のゴブリン程度なら、ヘッドショットできれば一撃じゃないかな。


 そうだな……スキル持ちの【火矢】と違うところは、威力が安定しているところだ。一定の魔力で一定の威力を絶えずだせる。いい方を変えれば、威力がほぼ固定化されているといっていいな。

 だから、ここぞという時に威力を高めた【火矢】の魔法を撃つ、なんてことはできない。


 スキル魔法の場合だと、使い手の状態、精神、肉体の状況に応じて威力の増減が激しくなるが、こいつはそういうことが一切できないんだ。


 【火矢】以上の威力を求めたいなら、『魔法辞書』により高威力の【火槍】なり【爆炎】なり刻んで使えばいい。


 魔法についてはこんなとこかな。


 十分な量の魔力持ちなら、きちんとした魔法の杖とかを持てば誰でも魔法使いになれるぞ。ま、魔法使いとして一端になれるかは、努力次第だがな。


 魔法を撃てるというのと、魔法を使い熟せるというのは、また別の話ってことだ。



★ ☆ ★



「……ってところでいいか?」

「はい、バッチリです、姉さん」

「こんな動画を撮ってどうするんだ?」

「地球だと職業魔法使いが現状いませんからね。魔法に関してはスキルしかない、即ち魔法を使えるのは魔術師だけと思い込んでいます。ですので、魔法発動体たる杖だの指輪だのを販売しようかと。正確にはこれらの特許と商標を出願して、適当な企業を巻き込んで普及させようかと思っています」

「あー……。ダンジョン攻略が進まずに酷いみたいだしな。銃器でゴリ押してるらしいが、最近は生産の問題で弾薬不足になってるらしいな。

 確か、魔法書はそれなりに見つかってて、各魔法の論理……魔法陣は公開されてるんだっけ?」

「はい。現状は使い方が不明とされている状態です。ですので、それを扱えるようにできる魔法触媒は、売れます!」

「……商売人か? 目指せ近江商人とか?」

「違いますよ。世のダンジョンを片っ端から攻略なんてしていられないでしょう。国によっては面倒な柵もあるわけですし。入場不可な場所もありますから」

「そういや、そういった所はどうするんだ? 俺たちは行けないだろ」

「ラミ姉さんとレミ姉さん、あとサマ姉さんとゼル姉さんが暇を見て適当に回るそうです」

「あぁ、本当に喫緊の問題ってわけじゃないんだな」

「ライラ姉さんが忙しいだけですから」

「ところでだ、サラ」

「なんでしょう?」

「肝心の魔法発動体と魔法辞書を造れる地球人の錬金術師はいるのか?」

「……あ」


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