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035_上野ダンジョン攻略配信_②


:パンダが祈ってる

:祈りと云うか命乞いじゃね

:文字通り手も足も出なかったもんな

:手も足も出ないというか、立たせてもらえなかったし

:昔の記録映像のパンダみたいだった

:あれか、じゃれて飼育員にコロコロされてるやつ

:そうそれ!



『これ、いわゆるテイム待ちっていうやつですねぇ。イオちゃんも云っていましたけど、魔物と違って魔獣の場合、心をへし折ってやると《ご主人、子分にしてくだせぇ!》ってな感じになることがあるそうなんですよ。いまのRDパンダがそうですね』



:RDパンダwww

:略し方www

:ハクちゃん質問! 魔物と魔獣の違いってなに?



『さっきコメントで見かけましたので。RDパンダは私が云いだした訳ではありませんよ。

 えっと魔物と魔獣の違いですか。そういえば、こっちでは魔物で統一されているんでしたね。

 魔物は大別して実体型と非実体型に分けられています。簡単にいうと生物型と幽霊型ですね。ひとまず非実体型は脇に置いときます。

 で、実体型ですが、これもまた大別して実体型と疑似実体型と分けられます。


 実体型は生物と変わらない魔物。殺せば死体が残る物のことです。これを魔獣型とあちらでは呼んでいます。あ、無機物型、ゴーレムなどでも倒した後に残骸が残るものは魔獣型です。


 そしてそれ以外。血も流さず、殺せば魔石とドロップ品を残して胡散霧消するものを魔物型と呼んでいます。こっちはほぼゲームに出てくるようなモンスターそのものですね。


 先に脇に置いた幽霊型も同様に分類できるのですが、そもそも実体がないので分類する意味がない感じですね。


 ちなみに。魔物型はダンジョンから外に出ることができません。ダンジョン外に出るのは魔獣型のみです。そしてダンジョン外にでた魔獣は、そのまま生物として活動を開始しますので非常に厄介です』



:なるほど。

:あ、イオちゃん、テイムしないみたいだ

:いや、しちゃったらあの国がうるさいだろ

:それもそうか

:ハクちゃん、あっちってどこ?



『あっちですか? それに関しては下手に喋るわけにはいかないんですよ。もしかしたらそのうちWDEAから公式発表があるかもしれませんが……どうなるでしょうね。

 シャティを見たことがある人は多分、察せるんじゃないですかね』



:……え、マジ

:いや、でもそうだよな

:行く方法とかあるの!?



『方法はありますが行くも帰るも実行不能に近いです。端的に云いますと、まず死にます。イオちゃんは狂気じみた試行を10年以上重ねた結果の帰還です。どのくらいイカレテるかは、イオちゃんが“ドラゴンを片手間にさっくり殺せるくらい強くなる程度”となるまで試行を繰り返し続けたと考えて頂ければと。普通ドラゴンなんて単騎で相手にするモノじゃないんですよ。あいつら、生物のフリをした何かですからね。クマンバチが飛べるメカニズムは最近解明されたらしいですが、ドラゴンが飛べる原理は科学では証明不可能ですからね』



:聞かない方がいい系の話かな?

:だろうなぁ

:下手に知れると試す阿呆がでるだろうし

:それに対し責任なんて持てないしな



『事故でそうなった人はいるかもしれませんが。というか、イオちゃんがそうですからね。これに関しては既にJDEAに報告済みですから、これ以上は私共はもう何もいいませんので、悪しからず』


 映像の方では、階段を下りて1階層へ。そしてそのまますぐに2階層へと入って行く。わき目を振らず、完全に効率重視だ。


『うんうん。2階層に入っても映像の方は問題ありませんね。これで今後は、ダンジョン攻略配信なんてものを探索者さんもできるというものです。

 でも最前線のパーティの方は、やらないことをお薦めしますが』



:やらないことをお薦めって

:なんで?

:前線の人ほど配信して欲しいんだけれど



『いえ、事故った場合……端的に云えば死亡者がでるような事態も配信されかねませんから。それなりに安全性を確保できる場でレベル上げとか、素材回収をするのであれば問題ありませんが、危険なことをやらかすとなると……ねぇ』



:あー……

:死亡事例は確かに

:普通にBANされるね



『配信しているからと、無茶をしたりしないで欲しいところです。開発者としては。命は大事にすれば一生使えますからね。どこぞの武器商人のおじいさんのありがたいお言葉ですよ』


 イオちゃんたちはダンジョン内をさくさくと移動していく。まぁ、ゴブリンなど倒すのは簡単だ。なによりしっかりとした作りの迷宮型のダンジョンだ。その上、灯りもしっかりとしたものであるのだ。手古摺る要素がひとつもない。


『お? 見慣れないモンスターが現われましたね。あれは魔獣と魔物、どっちでしょうね』



:埴輪だ!

:馬の埴輪に乗った埴輪だ!

:あんなモンスターしらない!

:ゴーレム……なのかなぁ

:あ、爆発した

:サラちゃんwwww

:埴輪終了

:せっかく強者感を出してたのに



『まぁ、こうなりますよねぇ。浅層ですから、サラもう片手間で済ます気満々じゃないですか。……なんだかイオちゃんに指摘されて頭を抱えてますけど。イ〇ナズンとか云って遊んでるからですよ。埴輪の情報が取れませんでしたからねぇ』



:ドロップも埴輪だ

:えぇ……

:なんの役にってええええ

:は? 携帯できる馬!?



『なんだかユニークなのがでましたねぇ。でもいらないんじゃないかな? あ、売却ですね。JDEAに売却すると思いますけど、売却後はどうなるんでしょ?』



:ちょっと欲しい

:埴輪に乗りたいのかwww

:馬って車両扱いだから、免許があれば公道でも乗れる

:!! 燃料代がタダってことか!!

:しかも餌も駐車場不要だ!



『な、なんだか予想外に盛り上がってますね。問い合わせはJDEAの方にお願いしますね。少なくとも明日以降で。明後日の方が確実ですかね。そういえば松戸の飢者髑髏の査定結果がいまだにでてないんですよね。まぁ、あんなデカイ骨格標本の価値なんてどうつけるべきか悩むところなんでしょうが。需要がまったくなさそうですしね。最悪、粉にして肥料ですかねぇ』



:本当、サクサク進むなぁ

:3層まではマップが完成しているんだっけ?

:確かまだ途中。

:広すぎて物資不足で撤退が殆どかな

:ゲームみたいに連戦とか無茶だからなぁ

:4層に入った

:イオちゃんなにやってんだろ?



『索敵魔法を使ってますね。あの指輪がそういう魔法の指輪です。正確には、索敵と云うか、モンスターを対象にしたレーダーですね』



:なんか、通路に向けて銃を乱射してるけど

;様子がおかしくない?

:サラちゃんが変な悲鳴を出したぞ

:はかどる!!



『あ、これヤバい奴だ』



:え、ハクちゃん?

:魔物溢れ!?

:え、嘘だろ



『そういえば上野ダンジョンは25年間魔物溢れ無しだったんですよね。うわぁ。この馬鹿げた規模だから……大変なことになりそう。

 あ、二手に分かれて魔物殲滅をするみたいですね。そうだ! せっかくですし、ふたりがそれぞれどれだけ討伐するか皆さん予想してみる? なんだったら一番近い数値の人に賞品も出しますよ』


 たまにはこんな悪ノリもいいだろう。と、みんな乗り気だねぇ。それじゃ、応募のほうはZの方でやろう。締め切りはふたりが別れるまで。


 と、そうだ。ふたりにも云っておかないと。


《なにかって、なにをやるんだよ》


 イオちゃんが賞品に関して言及してきた。


 特に考えてはいないんだよね。ノリと勢いで決めたから。


 そうこうして、賞品は【竜の歯のペンダント】で決定。素のままの歯を一本ペンダントにしたものだから、さして価値のあるものではないだろう。


 ……オークションの結果次第では、それなりのお値段となるかもしれないが、実用性としては装飾品でしかないしね。多分、問題ない。


 二手に別れることが決まったことで、サラからも映像が届く。こいつもPCに繋いでと。

 私、という中継を挟んだ形での配信だから、ちょっとばかり面倒だ。とはいえ、私を挟んでいるからこそ、ふたりそれぞれの映像をまとめて配信できるともいえる。


 メインをイオちゃん。サブをサラという形で画面を配置しよう。ワイプで少々小さいが適宜入れ替えればいいだろう。


 丁字路で二手に分かれ、サラはテクテクとのんびり進んでいく。一方、左へと向かったイオちゃんは、サーバントを錬成後、正面に見える扉へと突撃した。


 ほぼ直前で扉を念動で開け、大部屋へと突入する。恐らくは先の索敵で、ここが大部屋であることは推測していたのだろう。


 やたらとスタイリッシュに部屋中央にまで突撃しながら銃を乱射し、たちまちの内に室内のモンスターを討伐してしまった。



:うわぁ

:なんか昔の映画で見たことある光景

:指輪を換えてる



『あの指輪は呪いのアイテム扱いされるものですねぇ。【魔寄せの指輪】です。罠でいうところのアラームと同じ効果で、使用するとモンスターが群がってきます』


:ちょっ!?

:え、まさか

:嘘だろ



『多分イオちゃん、探しに行くのが面倒だから呼び寄せようって感じなんじゃないですかね』


 いや、本当、なにやってるの!?


 あ、でも……。


 私は思い出した。イオちゃんが云っていたことを。


 深層に向かう冒険者は基本的にイカレテいると。そしてなにより――



『“頂点”なんてモノに名を連ねる連中は基本的に狂ってる。イカレテるなんて通り越してまさに狂人の集まりだ。でなきゃレベル5桁なんてことになりゃしないよ』



 えぇ、えぇ、いままさに理解しましたよ。イオちゃん、どう考えてもひとりで相手をするべきではないレベルでのタワーディフェンスを始めていますし。


 しかもなにかしらの縛りプレイをするみたいですし。


 普通なら物量に押しつぶされて終わる状況だというのに楽しんでいる様子。


 ここに来て、トーカ姉様の気持が理解できましたよ。ライラがやらかす度に肩を落としていましたからね。


 なぜ予想の明後日先へと突っ走るんですか【黒】様!


 いえ、これが彼の平常運転なんでしょうけれど。


 ちょっとサキエルにフォローを頼んでおきましょう。いまは観光しているだけでしょうから、すぐにでも動いてくれるでしょう。


 とはいえ、よっぽどでない限りは手を出さない方向で指示をしておかなくては。


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