三年後
「ママー!」
「どうしたの?」
「うーんとね、えへへ!おはようのぎゅー!」
「あら!じゃあ私も、ぎゅー!」
「きゃはは!」
あれから三年が経ち、早いものでセドルは四歳になった。大きな怪我や病気もなく元気に育っている。
「そろそろ朝ごはんにしましょうか」
「うん!」
「今日はベーコンエッグよ」
「わーい!ぼくベーコンエッグだいすき!」
「ふふっ。じゃあ手を洗って食べましょうね」
「はーい!」
◇◇◇
三年前、帝国へと戻ってきた私たちを、家族は快く迎え入れてくれた。
「ルルーシュ!よくぞ戻った。辛かっただろう。気づいてやれなくてすまなかった」
名前:ベルオース・ド・ファンダル
年齢:47
職業:ファンダル帝国皇帝
感情:娘を苦しめた奴は絶対に許さん
「…お父様」
「ああ、ルルーシュ!無事でよかったわ!」
名前:ミルレーヌ・ド・ファンダル
年齢:45
職業:ファンダル帝国皇后
感情:娘を傷つけた男なぞ滅びてしまえ
「…お母様」
ルルーシュの記憶はあるものの、転生してから顔を合わせるのは初めてだったので一応魔法を使ってみた。父も母も物騒な感情を抱いているようだが、それだけ娘のことを大切に想っているのだろう。
「私のわがままを聞きいれてくれたにも関わらず、こうして出戻ってきてしまい申し訳ございません」
「謝る必要はない。……あの男にはどんな苦痛を与えてやろうか」
「そうよ。あなたが謝ることじゃないわ。……あの愚か者はどうしてやろうかしら」
「お父様、お母様。聞こえてますよ」
「おっと」
「あら、いやだわ」
「私なりに考えたことですので、これ以上は何もしないでくださると嬉しいです」
「…仕方ないな」
「…わかったわ」
「ありがとうございます」
帝国の皇帝と皇后が手を出せばアクレシア公爵家などあっという間に潰されてしまうだろう。たしかに公爵には蔑ろにされたり暴言を吐かれたりしたが、直接危害を加えられた訳ではないので過激な報復は望んでいない。公爵への報復はあれで十分だ。
それより私には他に望みがある。
「これからはのんびり過ごせばいい」
「また一緒に暮らせるなんて嬉しいわ」
両親はここで暮らせばいいと言ってくれているが、私は一度嫁いだ身。離婚したからとまた皇室に戻り城で生活するのは、前世社会人であった私の感覚からすると税金の無駄遣いだ。国民が汗水垂らして納めた税金を出戻りの皇女に使うなど申し訳ない気持ちになる。それにせっかくの二度目の人生、自由気ままなスローライフを送ってみたい。
「お父様、お母様。私―――」