想い
「ダイヤモンドスノウの花言葉は『愛』だ。それに花自体がとても貴重だから驚くほど値が張る。…くそ!誰だ!私より先にルルーシュにこの花を贈った野郎は!私だって年がら年中依頼をかけても手に入らないというのに…!許せん!」
「……」
兄が何やら騒いでいるが、私はそれどころではない。彼は一体どういうつもりで私にこの花をくれたのだろうか。
(たしかあの時……)
◇◇◇
「こんにちは」
「ロストさん!いらっしゃいませ。しばらく顔を見なかったので心配しましたよ」
護衛をしてもらった日から七日ぶりに店へと彼がやってきた。いつもは三日と間を空けずに店へと来ていたのに、今回は七日も来なかったので少し心配していたところだったが元気そうでなによりだ。
「っ、それはすまない。どうしても手に入れたいものがあって少し遠くまで行っていたんだ」
「そうだったんですね。私が勝手に心配してしまっただけなので、謝らないでください」
「…ルル殿に感謝を」
「ふふ。ロストさんは真面目な方ですね。それで欲しいものは手に入れられたのですか?」
彼ほどの人が手に入れたいものとは一体どんなものなのだろうか。気になって聞いてみたのだが、あまり口にしたくないのか口を開いたり閉じたりしている。
(あー、そうよね。自分の欲しいものを他人に言うのはなんとなく憚られるわね。つい気になって失礼なこと聞いちゃったな。ここはうまく別の話に…)
「あ、そういえば先日は」
「…これを」
「え?」
「これを受け取ってもらえないだろうか」
そう言って私の目の前に差し出されたのはキラキラと輝く美しい花だった。
「キレイ…」
この時の私はこの花がダイヤモンドスノウだということに気がついていない。ただ純粋にキレイな花に見惚れてしまっていた。
「はっ!ご、ごめんなさい。これは薬の材料ですよね?ではまた後日取りに来て…」
「いや、これは材料じゃないんだ」
「え?じゃあこれは…」
「…ルル殿に受け取ってほしい」
「私に?」
「ああ」
いつも通り薬の材料だと思っていたキラキラ輝く花は、私への贈り物だと言うのだ。彼の真剣な表情にドキッしてしまう。
「でも、これはすごく貴重な花なのでしょう?それなら薬にした方が…」
「頼み事」
「頼み事?…あ。もしかしてこの間の?」
「ああ。私の頼み事は、ルル殿にこの花を受け取ってほしい。それだけだ」
「その頼み事はロストさんには何の得にも…」
「どうしてもこの花をルル殿に贈りたかったんだ」
「っ」
「ただ花を受け取ってくれるだけで構わない」
「…わかりました」
頼み事を一つ聞くと約束してた手前、その約束を反故にするわけにはいかない。私は彼から花を受け取った。そして帰り際、彼は一言だけ言い残し店を後にしたのだ。
「…受け入れてくれなくて構わない。ただこれが俺のあなたへの想いだ」と。