「インターネット」の拡大
■1.1995~2000年頃
■2.2001~2004年頃
■3.2005~2010年頃
■4.PCと携帯電話の差異
■5.2011年頃~
インターネットの歴史、に関してはまぁいくらでも転がっているものであるし、細かく触れるつもりもない。
必要ならば令和元年情報通信白書「デジタル経済史としての平成時代を振り返る」あたりを読み、そこから広げていくのが一番だろう。
総務省では毎年「通信利用動向調査」を実施しており、公的機関ゆえの信頼性、長期間の継続性という点で、これ以上に使えるという資料は限られる。
ただここで扱っている「インターネット」という存在がどんなものであるか、ということに関してはどうにも認識が食い違う部分があるようにも思う。
このグラフの推移からは、国内のインターネット利用は2003年頃まで急激な伸びを見せたことが窺えるのだが、
その利用内容で見てみると「電子メール」のように、携帯電話会社で特別にサポートされていた機能に偏っており、「web小説」を考えるということに関して有益な数値とは言い難かったりもする。
正直線引きが難しいものであり、確たる数字で表すことは不可能だろう。
だがその上で、インターネットという空間が拡張していく過程を量的に把握する一助にできればと思う。
■1.1995~2000年頃
総務省では「インターネット普及開始期」と位置付けている時期。
ただ正直このあたりに関しては数量化が純粋に無理。
1995年11月のwindows95日本語版リリースを起点とし、家庭向けのインターネット利用が始まったのではあるが、当時は制限も多かった。
大きくは2つ、「ダイヤルアップ接続」と「従量課金型」という点であり、人口的にも利用時間的にもひどく限定的だった時期と言える。
■2.2001~2004年頃
総務省では2010年までを「定額常時接続の普及期」と位置付けているのだが、ここではその前半に触れる。
以下のグラフはインターネット利用世帯のうち、その接続方法に関するものであり、
「ブロードバンド接続」によって、電話回線と食い合わない「常時接続」、及び「定額制」の普及が進んだ時期にあたる。
通信媒体であるPCに関しても概ね同様の経過を辿り、
2003年までの間、急激に世帯普及率を伸ばしていき、以降は横ばいへとシフトした。
2001年はブロードバンド元年と位置付けられており、2000年代前半期を通じて「PCによるネット利用」が急速な普及を遂げた。
■3.2005~2010年頃
こちらは「定額常時接続の普及期」の後半、というよりも携帯電話に関するものに触れる。
携帯電話でインターネットを利用する、というのは2000年代初頭でも行えはした。
ただそれは「電子メール」など、携帯電話会社でサポートされたものに留まり、webブラウザを利用しようものなら数万円、十数万円というような高額請求をされてもおかしくないという時期であった。
そうした状況が変化していくきっかけが、2003年から2004年にかけて各社で実施された「パケット定額制」の登場である。
ドコモはこのサービス提供では1年ほど後発に位置するが、当時のシェアとして約5割ほどと最も規模が大きく、国内での普及状況を概ね映した数字であるかと思う。
2000年代後半を通じてこのサービスへの加入者は増加していき、2010年度末には契約者数の5割超にまで至った。
■4.PCと携帯電話の差異
……その時期まで行ってやっと5割を超えた程度か、と思うかもしれない。
ただ「web小説」に関して触れる場合、もう少し踏み込むべき部分がある。
まずは通信利用動向調査からPCによるネット利用に関して。
webサイト利用に関係していそうな項目を抜き出してみると、全期間を通じて最多を占めるのは「30代」「40代」であり、「10代」は特に少ない集団に位置する。
そもそもとしてPCは高価な代物、かつネット環境導入というのは工事を伴うものでもあって、その中心は中高年層に偏る傾向にあったのだろう。
スラングで言えば「厨房」「〇〇厨」のように、「中学生」というただそれだけの語も、侮蔑的ニュアンス色濃く使われた時期であった。
次に携帯電話に関して。
こちらの割合は大幅に落ち込んだ数値であり、量的に言うとPCよりかなり低調だったろうことは間違いない。
ただ年齢層で見ると特に「10代」「20代」、2000年代末頃にかけてその利用がかなり増えたことが窺える。
■5.2011年頃~
総務省では2011年以降を「スマートフォンへの移行期」として位置付けている。
以下はスマートフォンの普及に関して。
2012年末では20代、2013年末には10代と30代でスマートフォン利用が優越、2010年代前半を通じて若年層の携帯電話端末は、ほぼほぼスマートフォンへと置き換わっていった。
スマートフォンはインターネット利用を前提としたものであり、この普及を通じて利用人口及び利用時間の拡張、さらには日常的な利用が定着していくこととなる。
たとえばGoogle検索量を例にとると、
2011年度から2019年度にかけて急激な増加を遂げていく。
この一部特に2010年代初頭に関しては、ガラケーでも検索されていたものが、独自検索エンジンからGoogleへと移り変わったことで急増したと思われるが、その後2010年代後半については中高年まで含めた、インターネット利用者の拡大を反映したものではないか。
何をもって「普及」とするのか、というのは難しい問題だ。
たとえば「日本では2008年にiphoneが発売された」というのは事実ではあるが、スマートフォンの普及率は2010年末時点で1割にも満たない。
意図する意図しないに関わらず、詐欺師の手口というのは事実を並べるだけでいくらでも成り立つからこそ、せめて自分の中には根拠を持っておきたい。
以下は大雑把な年代解釈。
①1995~2000:先史時代
②2001~2004:PCによるネット環境が普及
web小説では個人HP作成+リンク集的構造の最盛期
③2005~2010:ガラケーによるネット環境が漸増
2ch+wiki的構造の最盛期、ブログ等商業的サービスも
pixivやニコ動など文字媒体以外のサービスも登場
web小説では主に投稿掲示板を持つ有力サイトへの集中
④2011~2015:若年層でスマホが普及
SNSが台頭し前半期を通じて情報流通の基幹的存在に
web小説では小説家になろう・ハーメルンへの集約が完成
※2015~2016あたり:素人投稿活動の最盛期か
⑤2016~2019:中高年にもスマホが普及
web上のあらゆるコンテンツで商業的色合いが強まる
⑥2020~:ネット利用人口の純粋増は終了
世代論的なことを考えはしつつもどうにも纏まらない。
「通史」部分を4年周期で区切っているのは、その残骸のようなもの。
ただweb小説に関して言うならば、特に2010年以降での中心的存在ははっきり「学生」だろう。
可処分時間が多い時期に熱心に活動し、就職とともに活動量を激減させる、というのが最も基本的なモデルとなる。