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しあわせのたくしー  作者: 月美てる猫
16/26

第一節 乗務員デビュー前 新人乗務社員研修 その9

異なるコースと別々の車でテストに挑む二人。唯一二人のコースが交わる「その場所」に魔物が潜んでいるとは知らず、二人は淡々と課題をこなす。


*このお話しは連載中の「しあわせのたぬき」  

 https://ncode.syosetu.com/n8347hk/

 シリーズもの別編です。


第一節 乗務員デビュー前


新人乗務社員研修 その9 そこに潜む者



「では銀さん、私は無線センターで待機しています。あと10分したら銀さんも出発してください。ドアの鍵は開けたまま鍵は玄関のポストに入れておいてください」

 そう言って研修棟を出ようとする大林に、

「あの、トレーナー」

「えっ、何か?」

「地域防衛隊のことですが?」

「地域防衛隊?何ですか、それ?」

「あ、いえ、何でもありません。町内会の行事でそういうのなかったかと思って」

「知りませんね」

 けげんな顔をして大林が研修棟を出て本社社屋へと行く。


 中堅幹部で教育トレーナーである彼が魔物を退治する部隊が社内にあることを知らない。ごく限られたメンバーで秘密裏に組織されているのだろう。明日、社長との面談で日常業務とそのボランティア的な活動の就労バランスを聞かなくてはならない。可能であればそのボランティア活動の時も日常乗務においても、この3999号車を使わせてもらえないかと思う。


 外に停めてあった3999号車と向き合う。

「先ずは日常点検だ」

 車の外周を見て新たな凹みが無いか、タイヤに異物が刺さっていないか、などを見る。ボンネットを開けてクーラントやバッテリー液が足りているかを見る。

 ドアを開けて運転席に座り、エンジンを始動する。メーター指数と走行距離を日報用紙にメモする。メモリーカードを差し込み、乗務員コードを無線機に入力し、無線機のスイッチを入れる。無線機から無線センターが他の車両とやりとりしている声が聞こえる。


『7533その通り』


 時計を見ると川岸が出発してから10分以上経過している。川岸は順調に空き地から次の目的地へ移動して表札の名前を言い当てたのだろう。ニシンの子が川岸の声に反応している。昨日産まれたばかりのニシンの子の大方は川岸の中に吸い込まれたが、3999号車の車内が気に入った数匹はまだこの車内にとどまっている。


「さあ、3999号車、よろしくたのむよ。ナビさんもね」

 3999号車とナビは無言だ。


 後方、左、右、前方をミラーと目視で確認。方向指示器を右に出してもう一度後方をミラーで、右後方をミラーと目視で確認し、メーターを「賃走」にして発進する。駐車場を出る際は一時停止、左右を確認してゆっくりと左折をして車道に出る。車道に出てからすぐにミラーで後方を確認し、前方から迫ってくる「中道」から車や自転車が飛び出してこないよう注意しながら最初の「信号のある交差点」へさしかる。減速をし、交差点の30メートル手前の3秒前に方向指示器を左へ上げてミラーで後方を確認、目視で左手を確認しながら車を路側帯へ寄せ、巻き込み確認をしながら青信号の交差点を2速で左折、左折してすぐに右へ方向指示器を入れて後方を確認しながらセンターラインへ車を寄せて、次の信号のある交差点へ向かう。交差点へ近づきながら右に方向指示器を出して青信号の交差点へ侵入。前方からの車が途切れたところで、後方を目視確認、横断歩道の歩行者がいないことを確認しながら右折を完了し、ギアを4速に上げて直進し、コンビニを右手に見て次の交差点にさしかかると、減速をしギアを2速に落として左後方を目視で巻き込み確認をしながらゆっくりと左折をし、ギアを3速に上げて制限速度時速30キロの中道を進み、空き地が前方から迫ってきたところでギアを2速に下げ、方向指示器を左に上げてミラーと目視で後方と左を確認しながら空き地の脇へ車両を停車させる。ギアをニュートラルにし、サイドブレーキを上げ、メーターを「賃走」から「支払」、次いで「合計」、そして「空車」を押す。

 無線センターから次の目的地が機械音声で告げられ、液晶画面にもその内容が出てくる。


『西区末広北24条西18丁目1の12 到着後センターへ表札名を連絡のこと』

 ナビ画面に道順が示される。


「うーん、これは・・・」

「いや、ギンレイこれは遠回りだろう」

「はあっ!?」

 いつの間にか後部座席に、人、というか精霊が座っている。


「いよっ、元気そうだな」

「オジロウ!?」


 ルームミラーを見て、振り向いて実物を見て驚くギンレイ。故郷の道東ではナンバー2の霊力を持つカムイの重鎮だ。オジロワシの精霊だが人間の姿も持っている。

 カムイとはアイヌ達が呼ぶ神々が宿る万物を指すが、ギンレイの故郷周辺では力のある精霊を便宜上カムイと呼び、固有の名前も与えられる。オジロウもギンレイも力量を認められてカムイと呼ばれ、名前もつけられているのだが、オジロウのクラスになると霊力は神がかり的なのである。


「なかなかご機嫌な車じゃないか。お前、この車をもらったのか?」

「何を言ってるの、タクシー会社の持ち物だよ」

「でも、お前、この車を気に入っているんだろ?」

 3999号車を運転しながらオジロウが振り向いて、客席のギンレイに問う。

「まだ出会ったばかりだからね、こっちが気に入っていても車はどうかな。あ、オジロウ、そこで右に曲がった方がいいよ」

「おっと、そうだな」

 運転手と客とが入れ替わったのに全く気が付いていないギンレイである。まさにオジロウの技は神がかり的なのだ。運転席と客席どころのレベルではない。田舎の景色を油絵で描いている際にうまく描けないと強引に山々の配列を一時的に変えるなどし、誰にも気づかれないようさりげなく元にもどしたことがある。

 人間として活動する彼の見た目の姿は中年男性だが若くておしゃれ、絵画の他にダンス、音楽、アニメキャラクターのフィギュア収集、野菜づくりや牛の放牧など趣味が幅広い。気さくな性格で誰からも好かれる。時にオヤジ的なギャグを連発したり、冗談めいたことが好きだ。ギンレイに破天荒なところがあるのはオジロウの影響を受けたからかもしれない。

「めずらしいな、ニシンの精霊とは。しかも車の中で泳いでいる。水は必要としないのか」

「陸揚げされた魚だからかな、板前の精霊から派生した魚なんだ」

「板前とは・・・。八匹いるな、ニシンが8匹か」


 ギンレイはオジロウのことを兄のように慕っていた。精霊年齢はオジロウのほうがずっと上だ。少なくとも300歳以上は離れている。戊辰戦争の際には土方歳三と一緒にゴルフをした、などと聞いている。子供の頃はよく遊んでもらい、よくめんどうを見てもらった。あのとき、竹とんぼを壊したときも・・・。


「お前の運転は完璧だな。他の車に比べたら少しゆっくり気味だがそこまで安全確認が徹底しているドライバーは見ていて気持ちがいいぞ」

「そうかな、褒めてくれてうれしいよ、あ、ちょっと待って目的地だ」

 いつの間にか運転席と客席の二人は元にもどり、運転席から出たギンレイが目的地の表札を見て無線を入れる」


「3999からセンターどうぞ」

『センターから3999どうぞ』

「3999から目的地は山口様です」

『センターから3999その通り』


 ギンレイはメーターを「迎車」から「賃送」へ変える。無線が鳴って次の目的地が示される。


「うーん、また遠回りだなあ、まあいいか」

 またいつのまにか運転席に居るオジロウ。

「そのナビは一生懸命やってくれているんだよ」

「ああ、そうだな。いま距離と時間の計算中かな。あ、そこ、十の位から1借りてこないと、そうそう。うーんどちらかと言うと計算より『方向』が苦手なのかな。あ、ごめんごめん、もう次で降りるよ。邪魔してごめんね」


 運転席からナビを覗き込んでいたオジロウだが、

「なあギンレイ、お前この仕事好きになれそうか」

「うん、そうだね、人間のことをよく理解できそうな気がする」

 ルームミラーでギンレイを見つめ、

「そうか、だがあまり人間に近づきすぎると精霊に戻れなくなる、なんてこともあるかもな・・・」


「えっ?」


「はっはっは、冗談だよ冗談、さてと目的地だ」

 またいつの間にか運転手と乗客が入れ替わり、車を停車させたギンレイが表札を見に行く。


「3999よりセンターどうぞ」

『センターより3999どうぞ』

「目的地は、神殿・・・?」

『センターより3999その通り』


 乗客は降りて神殿の扉の中へ入っていく。

「それじゃあなギンレイ、テスト頑張れ。そうだ、お前、人間の運転手なんだから、ちゃんとたまにトイレで用を足せよ。二か所目のトイレには必ず立ち寄れ」

「う、うん、わかった」

「ああ、そうだ、それと」


 乗客が振り向き、少しうつむき加減になる。

「え、なに?」

 そして乗客は空を見上げて、

「虫の精霊を見たら知らせてくれないか。昆虫は6本足だ」

「え、虫の精霊?そんなのいるの?」

「ははは、冗談だよ冗談」

 そう笑いながら扉の中へ吸い込まれていくその乗客を見送り、ギンレイはメーターを「賃走」から「支払」「合計」と押して、「空車」にする。次の目的地が無線で案内され、「迎車」にして走り出す。


 オジロウと交代で車を運転したことも、オジロウと会話をしたことも、オジロウを車に乗せて降ろしたことも、ギンレイは夢うつつだ。ただ淡々と課題をこなしているような錯覚もしている。「さっきのは何だったのかな、幻だったのかな」そう思いながらテストのミッションを続ける。


 オジロウはギンレイが「敵」の術にかかって「疑心暗鬼」になっていることを気にかけていた。人間界に派生する「敵」の動向を探るべくギンレイをタクシードライバーにすると推挙したのはオジロウだった。ギンレイは若くしてカムイの称号を得て名前まで与えられた、力のある精霊である。もともとカムイ達の中では「人間はこの世の支配者であり精霊が人間達の営みに逆らうようなことはあってはならない」という決め事があった。父親のハクレイは当初はギンレイを人間界へ送り込むことに反対だった。人間になりきりそのまま人間界の闇へ吸い込まれるようなことは決してあってはならない、というのはハクレイとオジロウとの間での約束であった。


 「賃走」から目的地へ到着して「空車」、「迎車」に変えて目的地に着いて「賃走」、を繰り返し、ギンレイは順調に課題をクリアしていく。あと5ヶ所で全課題クリアというとき、

 

ピロピロピロピロ・・・


 無線機から聞きなれない音がする。続いて大林の声がした。

『センターから3999銀さん、申し訳ないが、そのあたり半径500メートルくらいのところをくまなく走って川岸さんを探してもらえないか』

 無線機にはピロピロと鳴る呼び出しの機能もあった。

「3999の銀から大林トレーナー了解」

『センターから3999銀さん、申し訳ないがお願いします。川岸さんの車両が行方不明なんです。3999がいまいる場所から次の目的地へ進む途中にトイレがあります。そのトイレは川岸さんが通るルートと共通する場所なんです。まずはそこへ寄ってみてください』


 胸騒ぎがする。そういえば「トイレに立ち寄れ」と誰かに言われた気がする。川岸さんの身に何かあったか、そう思い逸る気持ちを抑えながらナビシステムを見ているが、相変わらず全く見当違いの方角を示しているように見える。ナビの中でネズミの精霊が必至にルートを確認している様子が見える。


「半径500メートルか」


 その位の距離ならばギンレイの霊力をもつてすれば千里眼でくまなく見渡せる。トイレが見えた、そして、

「川岸さん、なんだこれは?」


 西区末広町は平和記念公園を中心に放射状に街が形成されている。公園にあるトイレ付近に何か禍々しい者がうごめいていて、その近くにいる川岸を攻撃しているように映った。アクセルを全開にしてそちらへ向かおうとするが、車が進まない。


「だめです。結界が張られました。私達を置いてそちらへ向かってください」


「えっ?」


 ナビの中からネズミが這い出してきた。

「このテストは罠です。さきほどこの車に乗った精霊さんは気が付いていたようです。それで一番安全なルートを探すよう私に指示していました。でも私は生まれつき方向音痴で・・・」


(さっき乗った乗客?結界?安全なルート?何のことだ)


 心を鎮めてじっと道路を見つめる。赤黒い線が公園への道をふさぐように横方向へ伸びている。そう、蜘蛛の巣のように。見渡すと霊力を伴ったタクシー車両が10数台、街の各所でひっかかっている。地域防衛隊員の車両だ。隊員数名が車を置いて公園へ向かって走っている。


 ネズミと違う声が車内に聞こえる。


「私たちが人間の造作物であるこの車にとりついているために、結界がこの私の侵入を拒んでいるのです。精霊であるあなたひとりでしたらこの結界を飛び越えていけます」

「3999号車が話しているのか?」

「その通り」


 3999号車は半精霊のようだ。モノも心を持つことがある。あるいは何らかの魂が乗り移った車両なのかもしれない。


「今はテスト中だ。それにタクシーの車両を放置もできない。一緒に飛んでくれるか?」


「はっ?飛ぶ?」


 ギンレイは葉っぱを頭に乗せて羽の生えたキツネの姿になると、運転席に座ったまま3999号車車両のボディから羽を出して、


ヒュン


 と、舞い上がった。

「うそーーーーっ!

「うわーーーーっ、助けて~」


 3999号車とネズミが悲鳴を上げている。3999号車を運ぶギンレイは道路も住宅地も飛び越えて公園へと突入する。蜘蛛の巣状に張り巡らされた邪念の中心に蜘蛛の形をした魔物がいる。昆虫でも、蜘蛛から派生した魔物でもない。「黒い影」が人間達の邪念、憎しみ、怒りなどを吸収して成長した魔物、人間から派生した禍々しき者だ。タクシーが公園内の何か所かに停まっていて、地域防衛隊の隊員が糸にからまってもがいている。ギンレイは公園上空を旋回してトイレ近く、蜘蛛の糸にからまりながら魔物へ猛攻をくわえる川岸をみつけ、


「よし着陸するぞ、つかまれ!」


 3999号車が悲鳴をあげる。

「え、何につかまれって!」


グオングオングオン


 空ぶかしの排気音を響かせながら、3999号車は芝生の上に 


「うわーーーーーっ!」


ドドドドオーン


 2回、3回とバウンドしながら川岸のそばに着地する。


ブシューっ、ガチァっ


 ボンネットから白く水蒸気があがる。何かパーツが車体の下部から落ちた音がした。


「何か落ちた~」


「大丈夫だ、錆がとれただけだ」

 そう3999号車に言いながらギンレイは川岸のそばへ駆け寄る。実際はマフラーが脱落している。

 


「銀さん気を付けて、1匹じゃない、他にもいる」


 川岸は白衣の板前姿で包丁を振りかざし、包丁から放たれる光線で蜘蛛型の魔物を攻撃しているが蜘蛛の糸が手足にからまり動きにキレがない。蜘蛛は赤い目から熱線を放ち川岸は光の盾を張って蜘蛛からの攻撃をかわしている。傍らでフカの精霊がヒレを振りフカヒレ光線を放って川岸を援護している。公園の向こう側で同じ蜘蛛型の魔物が地域防衛隊員と交戦している。公園の中央、「蜘蛛の巣」の中心には更に大きな蜘蛛がいる。

 

 ふいに住宅街の影から


ヒュンヒュンヒュン


 公園で糸を張っているモノより小さいサイズの蜘蛛が10数匹飛んできて、川岸やギンレイに襲い掛かる。


パンパンパンパンパン


 ハトが飛んできた。飛びながら「手」に構えた銃で豆鉄砲を放ち、次々と小物を撃退する。

「ここの公園のハトは私のペットだからね」

 一羽のハトが「女の姿の」倉見になって川岸の前に立つ。

「銀さんなかなか大胆だね、追いつくのが大変だったよ」

 どうやら朝の延長でギンレイの研修を見学していたらしい。倉見はハト達が「手」にしている豆鉄砲と同じ形で大きなものを背中に背負っていたが、両手で構え、


ドカン、ドカン、


 と、川岸と交戦していた蜘蛛を攻撃する。蜘蛛がのけぞり攻撃を中断したのを見てフカがヒレを振って川岸にからみついた糸を切る。


「よし、ここは任せた」

 そう言ってギンレイは公園の向こう側、苦戦している隊員の方へ走る。糸にからまり蜘蛛に噛まれそうになっている隊員を見つける。


「菊次郎!」

 ギンレイは催眠リングを放ってもがいている菊次郎を気絶させると菊次郎に憑りつき、閃光と共に巨大な白蛇へと変身し、


キーン、ズドオン、ズドオン


 口から波動弾を放って、隊員を襲っていた蜘蛛やトイレ付近で川岸を攻撃していた蜘蛛を一瞬にして煙にする。


 白蛇は公園の中央にいた巨大な蜘蛛と対峙する。蜘蛛は白蛇に向かって盛んに熱線を放つが、白蛇はものともしない。白蛇は街中に張られた赤黒い邪念の糸をむんずと掴むとグイッと引き寄せる。ビルや住宅をすり抜けて全ての糸が、糸にからまった精霊の隊員達もろとも引き寄せられる。


 糸にからまった隊員を蜘蛛がやさしく丁寧にほぐし、芝生の上に寝かせ、自ら放った糸を回収している。 


 いつの間にか、蜘蛛の位置に白蛇、白蛇の位置に蜘蛛がいる。ハッと我に返った蜘蛛が公園中央にいる白蛇へ向かって糸を吐き、白蛇は糸まみれになったかに見えたが、また元の場所に白蛇が立ち、蜘蛛が公園中央で糸まみれになっている。


 白蛇は蜘蛛に向かって一歩、二歩と近づきながら、


「公園は市民にとって憩いの場であるがそこに設置された公衆便所はタクシードライバーにとってもありがたい場所だ。ところでこの形がなにかわかるか?」


 白蛇の顔の前に白く光る球体が現れ、バチバチと火花を散らしている。


「きゅうけいだ!」


ズドン!


 白蛇が放ったエネルギー弾は蜘蛛に直撃して蜘蛛の魔物は粉々に砕けた。


 しかし、小さな粒状の蜘蛛数十匹が魔物の中から弾け飛び、川岸と倉見に襲い掛かる。そのとき。


バリバリバリバリバリ!


 3999号車のエンジンスパークの光線が車体から放射され蜘蛛の小物を撃墜して魔物を殲滅した。


 白蛇は空へ浮かび公園の上空を旋回しながら空高く登って青空に浮かぶ白い雲にまぎれて見えなくなった。


 気を失っていた菊次郎や地域防衛隊の隊員達はそれぞれ意識を取り戻し、車両に戻ってタクシー乗務を再開する。


 倉見は男性の姿に戻り、

「こっそり競争相手の様子をさぐっていたらこんなのに巻き込まれてしまって。もう会社へ出勤しなくてはなりませんから、私はこれで」

 と引き揚げていく。


「ありがとうございました」

 と、川岸とギンレイは手を振りながら倉見の背中へ御礼を言った。


ピロピロピロピロピロ


 公衆トイレのそばに停めてあった7533号車の無線機が鳴っている。川岸が無線機を取ると、

『センター大林から7533へ、川岸さん、どうしました』

「7533川岸から、すみませんトイレに寄っていました」

『7533、ずいぶん長いトイレでしたね、大丈夫ですか』


「7533、すっきりしました」


『・・・7533へ、3999銀さんもそこにいますか』

「7533から、3999銀さんもここにいます、助けてもらいました」

『・・・7533了解、・・・テスト継続願います。3999銀さんにも伝えてください』

「7533了解しました」


 川岸とフカは3999号車に「ありがとう」と言ってボディを撫でて見舞う。

「ねえ、銀さんこいつでテスト継続できますか?何なら僕のを使ってくれても」


ブオンブオンブオン


 誰も乗っていない3999号車から空ぶかしの排気音が鳴り公園に響く。


「大丈夫だと言っています。それにこの車は私のお気に入りなので」


 ギンレイは霊力を使って脱落したマフラーをボルトで固定し、テストへと復帰、予定の時間よりも少し遅れたが川岸もギンレイも無事にテストの行程を完走した。

 3999号車と方向音痴なネズミもギンレイのテストに最後まで無言で付き合ってくれた。


「このテストは罠です」そう言ったネズミの言葉が気になる。罠だったとして、一体だれがあの魔物をテストコースに待ち伏せさせたのだろうか。





テストの結果はどうだったのでしょうか。それにしても次々に起きる怪事件にますますギンレイは「疑心暗鬼」になるかもしれませんね。3999号車と方向音痴なネズミはギンレイをパートナーとして受け入れてくれるでしょうか。


*このお話しは連載中の「しあわせのたぬき」  

 https://ncode.syosetu.com/n8347hk/

 シリーズもの別編です。

 

*投稿後の訂正は主に禁則処理によるもので、

 内容に変化はありません。

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