③日本が国債をまだ発行できる理由/消費税を廃止する必要性
6,日本は財政破綻しにくい構造である
筆者:さて、まず質問ですが国の財政についてどういう風に考えていますか?
質問者:国の借金が国民1人当たりの額が膨大になっていますから(約1人当たり1000万円)、直ちに解消していかなければいけないと思います。このままでは2011年のギリシャのように財政破綻してしまいますよ……。
筆者:なるほど。それは一般的な意見に限りなく近いです。確かにGDP比率で債務残高を見た場合において破綻した当時のギリシャ政府は180%、日本は200%ちょっとといつ破綻してもおかしくないように思えます。しかし、ギリシャの状況は日本には当てはまりません。
質問者:えっ……どういうことでしょうか?
筆者:一つ一つ誤解を紐解いていきましょう。まず、日本には通貨発行権が存在します。それに対してギリシャはユーロというヨーロッパ共通の通貨を使用しており自国のみでの通貨はありません。確かに共通通貨があればEU圏内では両替手数料の費用が掛からず貿易がしやすいなどのメリットはあります。しかし、デメリットとして欧州中央銀行が通貨発行権を握っています。
質問者:なるほど。日本はそれに対して日銀が通貨発行権を持っているから安心なんですね?
筆者:ええそうです。更に言うのならば日本銀行が国債の4割以上を負担していますから、自ら国債の借り換えを行っています。
質問者:え、そうなんですか……。それでは無限に国債を発行できるんですか?
筆者:いえ、勘違いして欲しくないのは、通貨発行権を持っているからといって無尽蔵に国債を発行していいわけでは無いのです。金利が例えば10%や20%といった金利になっている場合においては非常に円安になっている状態であり国際的に見て危険な状況です。
ですが、今の日本では金利は0金利ですし、ハイパーインフレや極端な円安にもなっていないので、まだまだ発行することは可能なのです。
逆を言うと5割以上は日本銀行以外が国債を負担していますが、低金利での発行を容認しているので問題は無いのです。
こういった積極財政を出来る限り容認する考えをMMT(現代貨幣理論)といいます。先進国では通貨発行権を持っている国が存外少ないことから『財政赤字は危ない』という固定観念が日本に多く広まっているということなのです。
質問者:なるほど、ギリシャと比べるのは早計ですね……。
筆者:そのEUにおいても流行りの病のために財政出動をすることを惜しんでおらず、各国ともに『経済安定条項』というのを無くしています。国民の困窮のための財政出動をするために各国過去最大の予算を組んでいます。
これを機能的財政論といいます。「経済に与える効果がどのようになるかを考えて、政府の財政を決めるべきである」という考え方のものです。
質問者:確かに飲食店については手厚い補助金ですが、それ以外の方々も困っていますからね……。
筆者:そうなんですよ。確かに飲食店は一番営業が規制されていますが、他の大規模集客を行うスポーツ、演劇などの業種に対しても観客数制限などがありましたから(今は解除されているが)同程度の補助金を交付するべきだったと思います。
また1930年代ドイツは、第一次世界大戦の賠償を行うために緊縮財政で国家が窮状に陥りナチスの台頭を許しました。このように政情不安にも繋がりかねない状態になります。日本はまだまだ利率や貨幣の国際価値を見てもまだまだ国債を発行する余力があるように思えます。
7,適切なインフレは問題ない
質問者:なるほど……。ところで、政府目標などで『物価が2%上がることが目標』とよく言われますけどアレはどういうことなんでしょうか? 物価が上がるのは問題のような気がしますけど……。
筆者:いい質問ですね。物価が2%程度上昇し続けていれば、適度な消費が生まれ経済が安定すると経済学では言われています。
例えば、今買おうとしている商品が、来年も少しだけ上昇するのであれば、今買っておいても損はないかなと思えます。この適切な水準が『2.0%』と言われているんです。
質問者:へぇ、そうなんですね。確かに、安定して値上がりするのならば買ってしまおうと思います。
筆者:ただし、給与もそれに伴って上がっていかなければ国民の生活が苦しくなっていくだけなので問題です。②で先述しました通り日本は中々給与が上がらない風土の国ですから安定的な給与アップのために補助金などを積極的に投入することが必要なのです。
8、税金とは何か?
質問者:素朴に疑問に思ったのですが、通貨発行権がある日本が税金を徴収する意味ってあるんでしょうか? 出来る限り国債で賄ったほうが良いのではないでしょうか?
筆者:それも良い質問です。基本的に税金は無い方が国民としては有り難いです。ですが、“社会参加をしている”という連帯感などを持つためには必要です。所得に比例する住民税などは所得の再分配の観点からも必要になってくると思います。
質問者:あ、日本に所属しているという意識は大事ですよね? 公共事業などの恩恵を受けていることは忘れてはいけないです。
筆者:そういうことです。日本にいる恩恵を受けている以上最低限の費用負担はする必要があります。また、通貨発行権がいくらあるとはいえ、全く徴収しなければハイパーインフレになってしまう可能性は上がっていきますからね。
現状の日本の様々な国難の都合上、財政出動を万遍なく行う必要があるというだけですからね。
また、過度に外国資本の参入や特定の会社における市場の寡占などを防ぐために税金でもって防御・対策しているという面があります。これは関税自主権などもあたります。
質問者:なるほど、国民生活を守るという側面もあったんですね。
筆者:ですから、逆を言うと“国民生活を守らない税金“というのは極力無くしたり、減らしていくべきだと思うんですよ。
特に消費税は最も悪しき税金だと思います。何と言ってもほとんど全ての品目に対して一律に課税されるために収入が少ない人ほど税金負担大きい”逆進課税制度“にあたるからです。
税金の徴収目的の一つが所得の再分配であるとするのなら、消費税はかなり矛盾した存在といえますね。
名目上は『公的年金などに充てるため』ですが、年金を10%下げても消費税を廃止してもらったほうが良いと思うお年寄りも多いはずです。
質問者:なるほど、消費税が高い地域は確かにEU諸国が多いですから自国で通貨発行権を持っていない国ばかりですからね。
筆者:そうです。ですから通貨発行権を持っている日本としてはその分日銀が国債を買えばいいだけというのが僕の持論ですね。
消費税を廃止すれば一時的にはデフレになるでしょうが、消費税の分国民の懐は温まりますので“良いデフレ”と言えますね。
逆に今の日本は2%のインフレは達成しそうですが、給料はあまり上がりませんので“悪いインフレ”状態に入ろうとしています。これは一般的にはスタグフレーションとも言いますかね。
※消費税は高所得者の方が払う額も大きいので逆進性は無いという考えもあります。しかし、そもそも低所得者は所得に対する消費額の割合が高い(貯金となる割合・金額が少ない)ので結果的に所得に対する消費税の割合が高いです。そのために筆者は消費税は逆進課税だと考えています。




