②日本の少子化対策/給与の上がらない国日本
令和4年度予算再度掲載 (単位は億円)
全体1075964 社会保障362735 文部53901(科学13788) 公共60575 (子育て支援制度20018) 国債償還費243393
3、実は少子化対策は可もなく不可もないという感じである。
質問者:今回は“子育て支援”というのが約2兆円出てきましたけど、これは何で鍵括弧で表示されているんですか?
筆者:これはどちらかというと“保育制度へのインフラ”という面が大きい金額だからですね。具体的に言いますと保育所開設・維持のための支援。そして保育士への給与上昇のための予算です。ただ、これは国民に直接影響があるかといわれると ? な気がします。
確かに無くてはならないモノですけど、最低限必要なモノを整備しているに過ぎないのでね。今ある制度が無くなるのは困りますけど、不足を補っているのは国民に直接影響は無いと言えます。道路を整備しているのと変わらない感覚ですね。
質問者:確かに……。あ、あとは児童手当がありましたよね? あれはどういうものでしたっけ?
筆者:国民への還元ではそちらの方でしょうね。補助金関係だと思うんで総額としては分かりませんでした。内容としては2012年からの児童手当は中学生以下には1万円(3歳未満は1万5千円)というものです。後は出産一時金が42万円出るようです。
質問者:この金額が少ないから合計特殊出生率は低いのでしょうか……。
筆者:いえ、各国のこういった福祉対策に当てている金額を見ているとそうでもないと思うんですよ。
まぁ、EUの一番高い国と比べてしまうと中程度なんですけど、最低水準でも無いですし、可もなく不可もなく標準スペックだと思いますね。まぁ、上げられるなら最高水準のドイツの児童手当月3~4万円まで上げたほうが良いとは思いますけど。
特に1.8台を近年記録し続けているアメリカは1人当たりの児童手当みたいなのはなくて子供1人当たり2000ドル(約24万円)減税という制度があるのみのようです。
4,将来への不安が大きい日本
質問者:あれ? 合計特殊出生率の高いアメリカは意外と手厚くないんですね……。そうすると日本の少子化対策が不足しているわけでは無いのなら、どうしてこんなに低いんでしょう……。
筆者:僕が思うに“将来への不安“というのが最も大きいんと思うんです。日本人の平均給料はここ20年ほとんど横ばい430万円ぐらいですからね。先日、正社員の給与平均が韓国にも抜かれたともありました。韓国はちなみに合計特殊出生率が0.8台なので子供の数に比例したものでも無いです。つまり国策に問題があるということなんです。
質問者:更に社会保障費の増額により保険料を支払う方は上がっていますからね。確かに、世界から見て相対的に給与が下がって行っていれば将来設計が難しくなります。
筆者:そうですね、税金に関しても平成元年当時は消費税もありませんでした。当時と全く同じ給与を受け取っていたとしても確実に手取りや自由に使えるお金そのものは減っていますね。
日本では毎年給与微増していったのがリーマンショックで吹き飛ぶどころかマイナスに。そしてその後は、緩やかに上がって20年前の水準に戻ったというのが正確なところみたいですけどね。
まぁ、リーマンショックの本場アメリカではここ20年で1.5万ドル増えて年収7万ドル(840万円)以上のようですからね。リーマンのせいにするのも違うのかなと思います。
今年は大企業はボーナス含めると年10万前後給料増額が見込まれますけど、中小に回るか怪しいです。
あとは、日本は比較的に格差が少ない社会とはいえ上限を突破する収入を得る方法が株式投資やネットでの収益を得る方法が増えたこと。更に派遣労働者が解禁されていっていますから当時より確実に格差は広がっています。中央値は430万円より100万円少ないようです。
こういった先行きが見えない不安から、現役世代の若者が将来に希望を感じないのではないでしょうか? G7の中では年間2万人の自殺者数というのも断トツですからね。更に行方不明者数は年間8万人ほどですから、そのうち半分ぐらいは〇体も見つからない方かなと勝手に思っています。(ちなみにロシアは日本の2倍以上の自殺者数ではあるが、果たしてそれが“自殺”なのかは分からない)。
また、若者の死因1位が自殺だというのも先進国だけでは日本だけのようです。これは大いに問題ですよね。
5,現行の賃上げの補助金制度はほとんど意味が無い
筆者:ちなみにですけど、従業員の血と汗と涙の結晶である会社の利益が給料にあまり還元されず、内部留保や配当に回っている感じですからね。日本の大手企業の合計の内部留保額は2020年度だと484兆円と過去最高額となっています。
質問者:そ、そんなに多いんですか……。内部留保額を給与に転換することは難しいんでしょうか……。
筆者:これは国が強制的に行わないと難しいでしょうね。“内部留保額”というとなんだが現預金がいっぱい残っているような印象を受けるんですけど、実際には違うんです。
固定資産などの新規部門への投資などすぐには現金化することが難しい状態になっていることがほとんどだと思うんです。これは資本主義経済を取っている以上、次の投資へ向かうことはごく自然の流れですからね。
質問者:賃上げ推進する制度とか無いんですか?
筆者:『賃上げ推進税制』というものは確かに存在します。令和4年度予算で改正があり、基本1.5%~2.5%+教育訓練費10%給与が増えることが条件です。ただし、これは税額控除の制度です(大企業で給与増加額から15%~30%、中小で15~40%)。
また、税額控除には「当期の法人税の2割が上限」という制約があります。
また法人税は利益が出ないと均等割りのみになるので、補助金もその2割が上限なので少ないです。大幅な利益の見込みが立たないと補助金のために賃上げをしようという話にはならないでしょう。
質問者:なるほど……つまりは前提として利益が出ていないとほとんど意味が無い制度なんですね。
筆者:そもそも、利益が多く出ている企業は自然と賃上げするでしょう。利益がたくさん出ているのに上げないと流石に怒られますからね。
何というか全体を促進する効果って言うのは無いと思いますね。中小企業で労働組合も無く、利益の割にサッパリ給与を上げてくれない会社とかにしか効果は無いでしょう。
質問者:思うんですけど、今の日本ってあまり給与が上がらない風土な気がします。
筆者:それは鋭い指摘ですね。まず給与が上がるためには利益を増やす。つまり費用を減らすか売り上げを増やしていかなければいけません。しかし、費用に関してはこれ以上ほとんど減らせないレベルまで来ていると思うんで、売り上げを上げていくしかないです。
そうなると価格を上げるしかないです。
質問者:ですが消費者にとって値段が上がることにはかなり抵抗感がありますよね?
私の聞く話では、値段据え置きで中身が減った場合でも消費者は“実質的値上げ“だと気づいてしまいその後買わなくなるということがあるようです。
筆者:これは日本の良いところでもあり悪いところでもあると思うんです。“クビになるよりかは皆で貧困になる”そういう国民性があります。
よく“公務員の給与が高すぎるから下げろ”とか言うんですけど公務員の給与は民間企業との均衡を確保することが人事院規則で決まっているんです。
つまり公務員の給与を下がるということは巡り巡ると自分達の給与を一斉に下げろと間接的に言っているのと一緒なんです。
質問者:よく言えば『皆で仲良く』という感じですが、悪く言えば『上にいる人を引きずり下ろす』という感じですね。
筆者:そうなんです。『公務員の給与を下げろ』というより『公務員水準まで俺たちを上げてくれ』と主張するのが本来あるべき姿だと思います。
しかし、国民性を変えることはできませんし、悪いところの真後ろに良いところ(皆で国難を耐えきれる)があると思っているんで僕は変える必要は無いと思っています。
これは国の政治的な政策や補助金によって変えていくしかないように思えます。
質問者:しかしこれ以上予算が無いように思えます。補助金を出したくても予算として限界なのでは無いですか?
筆者:ここで次の話に入っていこうと思います。MMTという現代貨幣理論からもっと『予算は多くできる』ということを説明していこうと思います。
質問者:えっ……予算ってこれ以上増やせるんですか? いい加減限界のような気がするんですけど……。楽しみに待っています。




