表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

エピローグ 思い、続く限り

万聖節前夜(ハロウィン)

この世とあの世…「幽世(かくりょ)」の門が開き、死者の魂や怪物達がこの世に溢れ出るとされる幻の夜。

それは「本来あり得ない邂逅」が起こるとされる幻想の時間でもある。

しかし、それはひとときの奇跡でしかない。

いずれ、終わりは訪れる。


ロウ「こうして顔を合わせるのは、いつぞやのクリスマス以来か。元気だったか、公務員」


(めぐる)「ええ、おかげさまで。ロウさんもお元気そうですね」


ロウ「まーな。腹が減っている以外はいたって健康だぜ」


頼都(らいと)「本当に相変わらずだよな、極貧ガンマンはよ」


ロウ「おたくらの世界みたいに、こっちは食い扶持が溢れてる世界じゃねぇからな。その日暮らしの宿無し風来坊にとっちゃ、これが当り前よ」


巡「ご苦労されてるんですね…」


ロウ「お前に言われたら、ある意味おしまいだな」


頼都「そこは同感だ」


巡「え?僕ってそんなに苦労人ですか?」


頼都「本人の自覚が無いってのが一番の悲劇だな」


ロウ「だな。俺が悪かった」


巡「お二人共、どうしてかわいそうなものを見る目で僕を見るんです!?」


ロウ「まあ、それはさておき…今夜ももうすぐお開きか。あっという間だったな」


頼都「毎年思うんだが、これっていつまで続くんだ?」


巡「何だか、うんざりしてる感じですね?」


頼都「感じじゃなくて、心底うんざりしてるんだよ」


ロウ「お前の厭世家ぶりも相変わらずか」


頼都「長生きしてるとな、色々とだるくなるもんなのさ」


巡「僕はずっと続いて欲しいって思いますけどね」


頼都「ハイハイ。お前ならそう言うと思ってたぜ」


ロウ「どうしてだ、公務員?」


巡「僕達、本当はつながりはあっても、基本的には別々の世界にいる存在じゃないですか。でも、この夜だけは、こうやって出会うことが出来るんです。それって、とってもすごくて素敵なことだと思いませんか?」


ロウ「『The 主人公』ってな回答だな」


頼都「まさに模範的な回答だな。倫理的にも」


ロウ「カボチャの旦那は別意見のクチか?」


頼都「まぁな。今のこの瞬間は、呑気に顔を突き合わせている連中だがよ、事と立場によっちゃ敵対する奴らだっているんだ。どうにも落ち着かねぇんだよ」


ロウ「へぇ…案外ビビリなんだな」


頼都「別に。ただ面倒くさいだけだ」


巡「そう言いながら、頼都さんはちゃんと毎年顔を見せてくれるんですよね」


頼都「仕方ないだろ。嫌でも連れ出されるんだからよ」


ロウ「俺は別に気にしねぇけどな。実害があるわけじゃないし」


頼都「例の『お便りコーナー』では散々な扱いなくせにか?」


ロウ「あー、アレな!少しひどくないかアレ!ってか、毎年だぞ毎年!一体どういう教育してんだよ、カボチャの旦那!?」


頼都「知るか。俺はノータッチだし、そもそもあいつ(ミュカレ)に関しては何を言っても無駄だ」


ロウ「お前の部下なのにか!?」


頼都「ああ、俺の部下なのにだ」


ロウ「…ぐうの音も出ねぇな(汗)」


巡「まあまあ。いいじゃないですか、毎回のお約束みたいになりつつありますし」


ロウ「お約束で毎度毎度出した手紙を消滅させられてもなあ(汗)」


頼都「…で、お前さんはこの後も付き合うのかよ?このお祭り騒ぎに」


ロウ「そうだな…まあ、乗りかかった船だし」


陽想華(ひそか)「うむ!退屈しないしな!」


巡・頼都・ロウ「「「うわっ!ビックリした!!」」」


陽想華「何だ、大の男が三人もそろって情けない」


頼都「仕方ねぇだろ!何の脈絡も無く出てきやがって!」


ロウ「いたのか、お前!?」


陽想華「勿論だ。私も一応主役級だからな…!」


巡「あれ?主人公はどっちかと言えば書記の打本(うちもと)さんなんじゃ…?」


陽想華「細かいことはいいじゃないか!細工品タイトルに『生徒会長』とある以上、主役は私しかいない!」


頼都「ポジティブだな」


ロウ「質の悪いお前みたいだな」


巡「どういう意味ですか!?」


陽想華「何はともあれ、こうして主人公たちが一堂に会したんだ。何か盛り上がることをしようじゃないか」


頼都「んじゃ、手っ取り早く派手にバトルか?」


ロウ「お、悪かないな」


巡「何でそうなるんです!?」


陽想華「そうだぞ。それでは私と十乃氏は分が悪すぎる」


頼都「んじゃ、どうすんだよ?」


陽想華「ここは一つ、お互いの親交を深め合うために、懇親会などどうだろう?」


ロウ「いいねぇ!文なしだが!」


巡「いいですけど、詩騙(うたかた)さんはお酒はダメですよ?未成年だし」


陽想華「むぅ…一応、私は特別住民(ようかい)だから、問題ないと思うのだが、仕方あるまい」


頼都「やれやれ…お祭り騒ぎの後にまたお祭りか」


巡「お嫌ですか?」


頼都「あん?」


巡「お祭り」


頼都「…ハッ、ヒマつぶしには悪くねぇ」


ロウ「素直じゃねぇなぁ」


陽想華「それが十逢氏の持ち味だ。甘いカボチャのスイーツとはわけが違いということだよ」


頼都「何だそりゃ」


ロウ「…」


頼都「何だよ?俺をジッと見て」


ロウ「いや、お前って…美味いのかなって」


頼都「…ふざけてると、燃えカスにするぞ?」


ロウ「じょ、冗談だよ冗談!」


巡「さ、行きましょう、皆さん。早くしないとお店がしまっちゃいますよ」


頼都「へいへい」


ロウ「俺は肉が食いてぇな、肉!」


陽想華「うむ!同意しよう!」


喧騒が遠退いていく。

本来はあり得ない邂逅の余韻のみが後に残る。

それは誰かが…あるいは物語たちの紡ぎ手が抱いた、ささやかな夢なのかも知れない。

しかし。

この夜がある限り、幻想は真実となり続けるだろう。


くり返し、幻の夜が来る限り…


【END】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 毎年毎年、お疲れ様です。 来年も楽しみにしております(^_^ゞ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ