15.メイリンという少女
区切りの良いところまで書き溜めが完成していたのに、肝心の投稿するという作業を完全に失念しておりました……つきましては冨〇義勇並びに鱗滝左〇次が腹を切ってお詫び申し上げます。
「――ふぎゅっ!」
「……アビーか」
不意を突かれ、まるで一から迷路を作り直したかの様な大規模な分断をされてしまった事に焦っていると、頭上に空いた穴からアビゲイルが落ちてくる。
恐らくだが、この少女と男を追っていたアリサに追い付けなくて頑張っていたところでこの空間改造に巻き込まれた、といったところか。
だが、アビーには悪いが俺も彼女を気にかける余裕がない……何故しなかったのかは分からないが、この様な大規模な空間改造を行えるという事は、その気になれば俺たちを生き埋めにしたり圧死させる能力があの少女にはあるという事だからだ。
「よくやったぞメイリン!」
「うん」
その気になれば地上までの大穴を開けて脱出する事はできるが、リオン殿下がどの方角に居るのか分からない状況で高火力をぶっ放す訳にはいかない。
まぁ、最悪アビーなら鉄のシェルターを造る事で凌げるだろうという信頼もある……今この場で能力的に最も不利な状況にあるのは俺だ。
登場の仕方からして、あの職員は完全に御しきれているとは思えないが、さりとて楽観する訳にもいかないか。
「いいぞ! 素晴らしい! 王子と忌々しい隻腕を引き離せたどころか、隻腕を殺す為に産み出した225番メイリンとの対面! 風はコチラに吹いている!」
「うん」
腰を深く落とし、意識を目の前の二人に集中しながらも散眼で周囲の様子も確認していく……が、当然の事ながら道は塞がれている。
これはもう、目の前の障害を排してから地道に掘削作業をするしかないか?
「さぁ、メイリンよ! 男を殺せ!」
……来るか。
「――うん、わかった」
そんな、友人同士と気安く行われるやり取りの様な返事と共に、少女は担いでいた職員の首を捻じ折り、そのままこの場に残った男である俺に向かって駆け出し――
「――っ、あ"ぁ"あ"?!」
一瞬の虚を突かれ掴まれた右手首から全身へと駆け巡る強烈な不快感と貫くような痛み……まるで俺自身が衝撃によって亀裂の走ったガラスになったかの様なそれに思わず呻き声が漏れる。
なんだ、何をされた? 今まで体験した事のないこの感覚はなんだ?
「……あれ、取れない」
「チッ! 離せ!」
右腕に紫電を走らせ、少女の胸を蹴り飛ばそうする、が――
「わかった」
「……? ……なぜ離した?」
それを行うまでもなく、俺の言葉を素直に聞いた少女が離れていく。
未だジクジクと痛む右腕を抑えながら少女の出方を窺うが、彼女は俺を殺そうという意識こそ感じられるものの、何故か近付いて来ようとはしない。
「素直、な……子……です、ね……?」
「……それで片付けて良いものか――いや、試してみるか」
アビーの呑気とも取れる感想に呆れつつも、それによって思い付いた仮説を『当たっていたら儲けもの』程度の意識で試してみる事にする。
「……そこから動くな」
「わかった」
「三歩歩いて二歩下がれ」
「わかった」
「……違う。それから二歩下がれ」
「わかった」
「……違う。埋まるな」
「わかった」
それから何度も繰り返し少女の行動原則を調べたところ、まず誰からのものであっても言い付けられた事を素直に聞こうとする事が挙げられる。
恐らくこれは単純に敵味方の区別が付いていないのだろうと思われるが、コチラとして好都合だ。
しなしながら単純明快な命令なら問題はないが、長文で複雑だったりする場合は理解が及ばずその場で固まり、複数の意味に受け取れる場合はその内のどちらかをランダムで遂行するらしい。
下がれ、と言われて地面に埋まったのも、男を殺せと命令されて命令した本人を殺したのもこれが原因だろう。
「手を上げろ」
「わかった」
「……うーむ」
なんだ、この珍妙な生物は……思わず唸り、首を傾げながらもこの少女の処遇をどうするべきかと頭を悩ませる。
さっさと王子達の下へと急ぎたいが、かといってここに放置するのも後々の不安材料になりかねん。
「あ、あの……わ、わたし……に任せ、て……くだ、さい……」
「……大丈夫か?」
「と、閉じ込、め……るくら……い、は……できま、す……」
アビーと少女を交互に見やり、数秒だけ逡巡してから仕方なく口を開く。
「……そうか、なら任せた」
「は、い……!」
見たところ少女の加護は自らの手を起点として能力を発動している……アビーなら、彼女の手が地面や壁に触れてまた空間をめちゃくちゃ変えられる前に鉄で囲う事が可能だろう。
そして少女の加護は適用範囲が広いようだが、その分専門的な加護と競り合った時に押し負けるのは道理。
こと鉄の扱いにおいて、少女がアビーを上回る可能性は低いだろう。
「すまない、俺は大事な人の下へと急ぐ……アリサによろしく伝えておいてくれ」
「わか、り……ま……した……!」
両手を握り、むんっと気合いを入れているアビーに苦笑しつつ右手を地面へと付け、電磁波を流し込みながら王子達の居る方角を探っていく。
少女を警戒し、猛攻を凌がなければならない時ではゆっくりと使えなかったが――
「――見付けた」
広い空間と、そこに存在する元パーティーメンバー全員の生体反応を感知する。
「――待ってろリオン、すぐに行く」
マジでやらかした……
2ヶ月くらい投稿を忘れていた事に気付かないとかある?
私的やらかしオブザイヤー2021なんだけど……
みんなは私生活が忙しいからって睡眠を疎かにしてはダメだぞ!()




