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「丁度都合のいい事にね、いま村はずれの広場に奴隷商の一団が陣取っているんだ。ほら、どっかの誰かさんたちが闇のザカーを仕留めそこなって、少し先の川向うが大惨事になっているだろう? それであぶれた見目の良い子供あたりを適当にかっさらってひと財産にしてやろうって悪徳商人の一団が仮拠点として居座っているんだ。

彼らにちょいと金を握らせれば喜んで奴隷紋を刻んでくれるから、アニス、君は僕の奴隷になってくれ。」


「ちょっと待って、アル! あたしおつむの出来が悪いからあなたの話が半分も理解できないわ! 子供? 人さらい? 奴隷? え? え?」

「ああ、最初の方の話はどうでもいいんだ。ザカーを仕留め損ねた誰かさんたちが悪いんだ。とにかく都合のいいことに奴隷商がすぐそこにいるから、君が奴隷になってくれればそれでいいんだ。簡単だろう?」

「あたしが奴隷になるの?」

「うん、そう。それだけしてくれれば、僕は喜んで君たちのパーティに戻ろうと思っている。前と同じ荷物持ちでかまわないよ。どう?」


「その……。」そういったアニスが自分の身体を抱きしめるようにして、真っ赤な顔でふるふると首を振った。「いやらしい奴隷なの? その、エッチなことする……」


「え……?」僕は一瞬、彼女が何を言っているのかさっぱり分からなかったよ。


「いや、僕は君のその身体にこれっぽっちも興味がないけど。」


本当の事言うと、そのすらりとした健康的な身体や可愛らしいぱちくりとしたお目目は、今でもちょっとドキリとしてしまうけど、中身がポンコツのアニスだと分かっているとどうにも萎えてしまうんだよね。

顔を隠しても『鑑定』さんが絶えず「アニス」と鑑定してしまうからね。おまけに勇者様との昨晩の回数とか体位とか、知りたくもない情報がずっと駄々洩れだったからね。鑑定さんはすこし自重したほうがいいよね。


「本当に……?」アニスが疑いの目でじろじろ見てくる。

「本当だよ。まあ、それよりももっとひどい犯罪奴隷になってもらうんだけどね。」


「犯罪奴隷!」アニスがぴょこんと飛び跳ねた。


この世で最も重い奴隷、犯罪奴隷。

雇い主の命令は絶対で、死ねと言われれば死ぬしかなく、殺せと言えば殺すしかなく、雇い主には絶対逆らえず、自ら命を絶つことも出来ず。


おバカなアニスでもそれくらいは知っている。


子供のころ、僕もアニスも村の大人たちにさんざん脅された。「悪いことをしたら犯罪奴隷になるぞーっ!」てね。

それから男爵様のお屋敷の前で行われた野盗達の処刑祭り。特別悪い奴らはみんな首をはねられたけど、下っ端連中は数珠つなぎにひもで縛られて、そのまま奴隷商に連れていかれた。みんな汚くて臭かった。あいつらはそのまま犯罪奴隷になっていったんだ。


アニスだってそれをわかっている。分かっているから、今すごい形相でうんうん唸っている。


「……分かったわ、アル。あたし、あなたの犯罪奴隷になるわ。それであなたが戻ってきてくれるなら、あたしいくらでも犯罪奴隷になってやるわ。」

犯罪奴隷はいくらでもなるものでもないけれど、まあこれでアニスの決意は固まった。

後は決心が揺らがないうちにとっとと奴隷に落とすだけだね。


「でもアル? 犯罪奴隷なんてそんな簡単になれるものなの? あたし何にも犯罪していないけど。」


「もちろん裏口を使うさ。丁度アニス、君は耳に素敵なイヤリングをしているじゃないか。」

翡翠色の大粒のイヤリングが左右にひとつづつ。ロイド様はこういった贈り物がとっても上手で、恋したアニスはすっかり全てをゆだねてしまったんだろうね。

「これをどうするの?」

「丁度、奴隷商の親方が翡翠に目がないのさ。何でも通い詰めている娼館の女がせびるのだとか。そのあたりをついて交渉すれば、非合法裏口の犯罪奴隷剣聖アニス様の出来上がりだ。まあものの1時間とかからずにやり遂げる自信があるよ。僕の『鑑定』は、全ての隠し事を表に返した状態で交渉が出来るからね。

早速今から親方のところに行こうじゃないか。」


「えっ? えっ?」急な展開にびっくりするアニス。

チラチラとロイド様たちのいる宿屋の方を何度も振り返るのが象徴的だったな。


でももう事は動き出してしまって、彼女の美しくも健康的な胸の上に、僕専用の犯罪奴隷としての焼き印が押されたのはそれから40分を過ぎたところかな?


奴隷商の親方はにやにやと終始いやらしい笑みを浮かべていて、「旦那は本当にひどい人だ」なんて嬉しそうに話しかけてきて、アニスは涙を堪えながらも、きゅっと唇をかみしめて僕を見つめてきて。


でもね? アニス。本当にひどいのはここからなんだよ。

アニスちゃん書いてて可愛いんですけど。

でもきちっとざまあ地獄に落としてやりますけど。

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