ロミオとトイレット【コメディー作品】
急にトイレに行きたくなった私は、コンビニを三店舗ほど探した。
だが、すでにトイレは使用中であった。
私は、こんなに心を開いているのに、何故か、トイレは心の扉を開いてくれない。
今すぐトイレに飛び込みたいこの気持ち。
私が、強く求めるほど、トイレは心を閉ざそうとしている。
私は、何か悪いことをしたのか。時間がたてばたつほど、狂おしいほど、トイレの扉を開きたくなるのに、一向に心を閉ざしたままだ。
「ジュリエットじゃない。君はトイレット 僕のどこがイヤなんだい? 教えてくれトイレット」と叫びそうになる、ロミオの気持ちがわかる気がした。
そのまま叫ぼうとするも、近くにあるのは交番。このまま叫んだら間違いなく不審者扱いになって逮捕されてしまうに違いない。
あきらめて、四店舗目のトイレを探すも、なんと使用中。
なんで、私はこんなに「トイレ」にフラれるのか‥‥。帰って涙で枕を濡らしそうになる。こんなに失恋が続いて私は悲しい。
このまま涙で枕を濡らすのではなくスボンを濡らすことになるのか。
フラれてもフラれても脇目を触れず探し続けるんだ。
フラれればフラれるほど、その閉ざしたトイレという名の心の扉をこじ開けたくなる。
私のトイレに対する純情な思いは、三分の一も伝わらないのか。世の中の不条理を私は嘆いた。
だがしかし、ここで奇跡が起きたのだ。
しばらくすると、男女共用トイレの扉が開いたのである。
意志あるところに道あり。諦めなければ道は開くのである。
トイレに行きたいという強い気持ちが、トイレに行けるという現実を引き寄せたのである。これこそ
が引き寄せの法則。
そのままトイレから美人の女性が出てくる。普段なら思わず声を掛けそうになるシチュエーションであったが、
トイレに振り回され続け、狂おしいほどトイレを求めていた私は、恋は盲目、女性に対して脇目も触れずそのままトイレに飛び込んだのであった。